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踏み出した先にあるもの
第30話 家族の絆と招かざる客①
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いつものSARA
遠野が娘の日奈ちゃんを店に連れて来たので、今夜の香織はいつにも増して張り切っていた。
少し早めに来てもらったのでまだ他のお客はいない。
「うわぁー、素敵なお店ですね、香織お姉さんのママ姿が見れて嬉しいです♪」
「ありがとう日奈ちゃん」
「あっ、その節は本当にお世話になりました。
あの後、お爺様に変な見合いをさせて悪かったと謝られちゃいました」
そう言って二十歳とは思えないほどの屈託のない笑顔を見せる。
「そうだったのね、でも日奈ちゃんの立場だとこれからも色々大変ね」
「私は・・・あんまり気にしていません。だって、ふふ。聡パパの娘ですもの」
遠野は嬉しそうに目を細めていた。
「日奈を手元で育ててやれなくて本当に申し訳なく思っている。すまなかったな」
頭を垂れる遠野に
「中学の時に、4歳で藤堂に養女になったと知ってもそれほどショックも受けなかった。小さい頃から聡パパは本当のお父さんだと言われて育ってきたんだもの。私には父親がパパとお父様の二人いて凄いじゃないって。藤堂のお爺様は本当のお爺様だし、両親だってお母様は私と血の継がっている伯母様でしょう。他人に養女に出された訳ではないもの。産みの母親に放棄された日奈のことを娘として愛して育ててくれた両親に感謝してるし、育ての親ではなく本当の親だととも思ってるの。
パパのところいたらもっと違う生活があったかなとは時々思うけど、こうして会う事も出来ていてパパの愛情もじゅうぶん分かっているつもりよ!日奈もパパの事を愛してるから頭なんて下げないで欲しい」
「日奈・・・」
「内緒だけど一番好きなのはパパだから」
二人で鼻を啜り手を握り合っている姿を見て香織もじーんと込み上げてきた。
涙を拭いた日奈が香織の方を向いた。
「貴史お兄さんはお見えにならないんですか?」
「うん、彼は今はめっちゃ仕事が忙しいの。日奈ちゃんに会えなくて残念がっていたわ、よろしく伝えてって」
「ほーんと、残念です」
日奈はしょんぼりと肩を落としたと思ったら、突然
「それで、お兄さんと香織お姉さんはどうなったんですか?」
香織は不意を付かれてしどろもどろになっていると「上手くいっていますよ」と遠野が蔓延の笑みで言う。
「やっぱりそうでしょう♪日奈の目に狂いは無かったのね。あの雰囲気は絶対に無関係では出せないと確信してました!」
可愛いドヤ顔で言い切った。
「いやー、それにしても貴ちゃんの独占欲には驚かされましたね」
「何、パパ?教えて!」
「やめて下さい、遠野ちゃん」
香織が慌てて制止するも遠野は構わずバーベキューでの出来事を日奈に話し始めた。
「すごーい、香織お姉さんめちゃくちゃ愛されてるんですね!」
香織は赤面している。
「貴史お兄さんてやっぱり素敵、憧れちゃうな~」
「うん、お似合いの二人ですよ」
『もう思い出しただけでも恥ずかしくて堪らないじゃないの、貴史さんのばか』
香織はその場を逃げ出したいほどでした。
【カラン~】とドアが開いて松ちゃんが入って来た。
「おっ、今日は早いんだな。駐車場に立派な車が止まっているけど、運転手も乗ってたぞ。借金取りのヤクザでも来たか?」
その手の冗談をかましてくるあたり松ちゃんらしいです。
「松ちゃん、娘の日奈です」
松ちゃんの冗談を軽くスルーするのも遠野ちゃんらしいです。
「初めまして、藤堂日奈です。聡パパがいつもお世話になっています」
「おう、話は聞いていたが、本当に遠野ちゃんの娘か?こんな別嬪さん信じられねぇな」
「何ですかそれは!失敬な。」
ガハハハッと松ちゃんが笑い香織もつられると日奈まで笑い出した。
その後日奈はパーティーでの貴史と香織の様子などを松ちゃんに熱く語り、そのたびに香織は赤面することなった。
日奈は2時間近くSARAで過ごし、見送りに遠野と香織は外に出た。
「お姉さん、また遊びに来て良いですか?」
「もちろん、日奈ちゃんはもうお酒も飲める年だから夜でも良いけど、今度は昼過ぎに来てみては?」
「昼もやってるんですか?」
「ええ、週2回だけど女子高生たちが集まって賑やかよ」
「うわぁー、女子高生なんて可愛い♪」
「うふ、でも年下の女子高生にカルチャーショックを受けちゃうかも」
香織はJK達の顔と会話を思い浮かべ、お嬢さまで育った日奈には刺激が強いかもと思っていた。
「何か楽しみです。是非会わせて下さい」
「了解。お待ちしていますね」
「はい」
そういうと日奈は遠野に振り返り
「じゃあ、パパまたね」とハグをする。
「ああ、藤堂の皆さんによろしく」
そして日奈が車に乗り込み去っていくのを遠野はじっと眺めていた。
「遠野ちゃん、中に入ろ」
「香織ちゃん」
「はい?」
「日奈は本当にいい娘に育ちました」
「はい。そうですね、素直で素敵なお嬢さんです」
「私の選択は間違っていなかった。そう思って良いのでしょうか」
「日奈ちゃんのさっきの言葉は本心だと思います。あの笑顔は作り物ではありませんよ。幸せそのものの笑顔だと私は思います」
「そうかな。。。ありがとう。。。」
そう言うと遠野は一筋の涙を零した。
店に入ろうとした時、後ろから声を掛けられる。
「こんばんわー。ママと遠野さん」
振り返ると『高々コンビ』が立っていた。
「お帰りなさい」
ぞろぞろと店内に入っていく。
「なんだ~雁首揃えて」
「お邪魔しまーす」
「ちょうどねっ、高村さんたちと遭遇したの」
「えっ、遭遇って僕たちumaなんですか?」
高梨後輩君が言うと松ちゃんが、?とばかりの顔をして
「うーまってなんだ?」と聞き返す。
「未確認生物ですよ」と遠野が笑う。
「なーんだ。自分で言ってりゃ世話ないな」
松ちゃんはあきれ顔でお猪口の酒を飲み干した。
今夜も平和なSARAでした。
遠野が娘の日奈ちゃんを店に連れて来たので、今夜の香織はいつにも増して張り切っていた。
少し早めに来てもらったのでまだ他のお客はいない。
「うわぁー、素敵なお店ですね、香織お姉さんのママ姿が見れて嬉しいです♪」
「ありがとう日奈ちゃん」
「あっ、その節は本当にお世話になりました。
あの後、お爺様に変な見合いをさせて悪かったと謝られちゃいました」
そう言って二十歳とは思えないほどの屈託のない笑顔を見せる。
「そうだったのね、でも日奈ちゃんの立場だとこれからも色々大変ね」
「私は・・・あんまり気にしていません。だって、ふふ。聡パパの娘ですもの」
遠野は嬉しそうに目を細めていた。
「日奈を手元で育ててやれなくて本当に申し訳なく思っている。すまなかったな」
頭を垂れる遠野に
「中学の時に、4歳で藤堂に養女になったと知ってもそれほどショックも受けなかった。小さい頃から聡パパは本当のお父さんだと言われて育ってきたんだもの。私には父親がパパとお父様の二人いて凄いじゃないって。藤堂のお爺様は本当のお爺様だし、両親だってお母様は私と血の継がっている伯母様でしょう。他人に養女に出された訳ではないもの。産みの母親に放棄された日奈のことを娘として愛して育ててくれた両親に感謝してるし、育ての親ではなく本当の親だととも思ってるの。
パパのところいたらもっと違う生活があったかなとは時々思うけど、こうして会う事も出来ていてパパの愛情もじゅうぶん分かっているつもりよ!日奈もパパの事を愛してるから頭なんて下げないで欲しい」
「日奈・・・」
「内緒だけど一番好きなのはパパだから」
二人で鼻を啜り手を握り合っている姿を見て香織もじーんと込み上げてきた。
涙を拭いた日奈が香織の方を向いた。
「貴史お兄さんはお見えにならないんですか?」
「うん、彼は今はめっちゃ仕事が忙しいの。日奈ちゃんに会えなくて残念がっていたわ、よろしく伝えてって」
「ほーんと、残念です」
日奈はしょんぼりと肩を落としたと思ったら、突然
「それで、お兄さんと香織お姉さんはどうなったんですか?」
香織は不意を付かれてしどろもどろになっていると「上手くいっていますよ」と遠野が蔓延の笑みで言う。
「やっぱりそうでしょう♪日奈の目に狂いは無かったのね。あの雰囲気は絶対に無関係では出せないと確信してました!」
可愛いドヤ顔で言い切った。
「いやー、それにしても貴ちゃんの独占欲には驚かされましたね」
「何、パパ?教えて!」
「やめて下さい、遠野ちゃん」
香織が慌てて制止するも遠野は構わずバーベキューでの出来事を日奈に話し始めた。
「すごーい、香織お姉さんめちゃくちゃ愛されてるんですね!」
香織は赤面している。
「貴史お兄さんてやっぱり素敵、憧れちゃうな~」
「うん、お似合いの二人ですよ」
『もう思い出しただけでも恥ずかしくて堪らないじゃないの、貴史さんのばか』
香織はその場を逃げ出したいほどでした。
【カラン~】とドアが開いて松ちゃんが入って来た。
「おっ、今日は早いんだな。駐車場に立派な車が止まっているけど、運転手も乗ってたぞ。借金取りのヤクザでも来たか?」
その手の冗談をかましてくるあたり松ちゃんらしいです。
「松ちゃん、娘の日奈です」
松ちゃんの冗談を軽くスルーするのも遠野ちゃんらしいです。
「初めまして、藤堂日奈です。聡パパがいつもお世話になっています」
「おう、話は聞いていたが、本当に遠野ちゃんの娘か?こんな別嬪さん信じられねぇな」
「何ですかそれは!失敬な。」
ガハハハッと松ちゃんが笑い香織もつられると日奈まで笑い出した。
その後日奈はパーティーでの貴史と香織の様子などを松ちゃんに熱く語り、そのたびに香織は赤面することなった。
日奈は2時間近くSARAで過ごし、見送りに遠野と香織は外に出た。
「お姉さん、また遊びに来て良いですか?」
「もちろん、日奈ちゃんはもうお酒も飲める年だから夜でも良いけど、今度は昼過ぎに来てみては?」
「昼もやってるんですか?」
「ええ、週2回だけど女子高生たちが集まって賑やかよ」
「うわぁー、女子高生なんて可愛い♪」
「うふ、でも年下の女子高生にカルチャーショックを受けちゃうかも」
香織はJK達の顔と会話を思い浮かべ、お嬢さまで育った日奈には刺激が強いかもと思っていた。
「何か楽しみです。是非会わせて下さい」
「了解。お待ちしていますね」
「はい」
そういうと日奈は遠野に振り返り
「じゃあ、パパまたね」とハグをする。
「ああ、藤堂の皆さんによろしく」
そして日奈が車に乗り込み去っていくのを遠野はじっと眺めていた。
「遠野ちゃん、中に入ろ」
「香織ちゃん」
「はい?」
「日奈は本当にいい娘に育ちました」
「はい。そうですね、素直で素敵なお嬢さんです」
「私の選択は間違っていなかった。そう思って良いのでしょうか」
「日奈ちゃんのさっきの言葉は本心だと思います。あの笑顔は作り物ではありませんよ。幸せそのものの笑顔だと私は思います」
「そうかな。。。ありがとう。。。」
そう言うと遠野は一筋の涙を零した。
店に入ろうとした時、後ろから声を掛けられる。
「こんばんわー。ママと遠野さん」
振り返ると『高々コンビ』が立っていた。
「お帰りなさい」
ぞろぞろと店内に入っていく。
「なんだ~雁首揃えて」
「お邪魔しまーす」
「ちょうどねっ、高村さんたちと遭遇したの」
「えっ、遭遇って僕たちumaなんですか?」
高梨後輩君が言うと松ちゃんが、?とばかりの顔をして
「うーまってなんだ?」と聞き返す。
「未確認生物ですよ」と遠野が笑う。
「なーんだ。自分で言ってりゃ世話ないな」
松ちゃんはあきれ顔でお猪口の酒を飲み干した。
今夜も平和なSARAでした。
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