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02:ひとりぼっち二人、夏
2.別世界のいきもの
しおりを挟む「終、わったぁぁあああ!!」
七月最後のチャイムが鳴って、生徒たちはしばらく学業から解放されることになった。
クラス一のお調子者がホームルームが終わった瞬間に立ち上がって雄叫びを上げる。それを担任が苦笑いしながら軽く嗜めて、クラス中は途端に和やかな空気になった。
チャイムが鳴った瞬間に走って教室を出ていく者が数名。あとは教室に残ってしばらくの別れを惜しむか、盛夏の予定をすり合わせるかで忙しそうだ。
何せ学生の夏休みは長い。遊びたい盛りの彼らにとって、この与えられた長期休暇はまたとないチャンスだろう。
そんな浮ついた空気の中、明呉は今日も今日とて元気にバイトである。この男に終業式とか半日授業とかは全く関係ない。時間があるなら稼ぐ、それがこの男の座右の銘だ。
シフトの時間まではまだあるが、店長が今日のランチを割引してくれるらしいのでもう少ししたら学校を出る予定だ。今日の日替わりランチはおろしポン酢ハンバーグセット。サラダもドリンクもスープもついてワンコイン以下。なんて素敵な響きだろう。
だが今は目を血眼にして帰ろうとする生徒たちで昇降口がごった返しているに違いない。しばらくは涼しい教室でクーラーに当たっておこうと、配られたばかりの夏休みの課題を少しだけのぞく。
進学校らしく難易度が高く量もある課題にげんなりする。八月に渡來と勉強会ができるとはいえ、それまでに細々したものは少しずつ進めておいた方がよさそうだ。
「な、このあとカラオケ行こうぜ!」
「渡來も今日くらい付き合えよ~」
「そうだよ、期末試験のの打ち上げしよーよ」
明呉の隣の席、つまり渡來の席には、いつも通り人の輪が出来上がっている。中心に埋もれた渡來の表情は見えない。いつも授業が終わると同時に早々に下校してしまう窓際の君を引き止めるのにみんな必死だ。
「うん、まあいいよ」
「えマジ?! やば!」
「絵美たち呼ぼ、渡來くんと遊びたいって言ってたし!」
「どこいくかー。絶対どこも混んでるよな」
「アタシ穴場知ってる」
天上人が気まぐれにやってくると知り盛り上がる一同。その言葉を聞いて、漠然とああ今日は来ないのかと思った。だがすぐにその思考を振り切る。
だって今日は午前授業だ、いつもの放課後の数時間とは訳が違う。午後イチから二十時まで、何をするでもなくカフェにいるなんてつまらなすぎるだろう。
そもそも二人は明確な約束を交わしていない。あの店において客と店員でしかなくて、来店を強要したわけではない。いつ終わったとしても特に何もいえない曖昧な間柄なのだ。
今二人が同じ空間で過ごせているのは、全ては渡來の気まぐれのおかげなだけ。渡來が店に来ないことを、明呉に付き纏わないことを選択すればそれで終わりの関係。
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