「何でも欲しがる妹に、嫌いな婚約者を押し付けてやりましたわ。ざまぁみなさい」という姉の会話を耳にした婚約者と妹の選択

当麻月菜

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妹リリーナの独白

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 さも嬉しそうに語る姉の本音を聞いて、壊れたように笑う姉の声を聞いてーー妹のリリーナはその場から一歩も動けなかった。

 アンジェラが自分を疎ましく感じているのは薄々気付いていた。

 だけれどもリリーナは、アンジェラが選んだものを褒めたことはあっても、それを取り上げたいと思ったことは無かった。

 無論、今、隣にいるセルードを褒めたのは事実であるが、自分のモノにしたいだなんてこれっぽっちも望んでいなかった。

 ただアンジェラを大切にしてくれると思ったから、素敵な人だと伝えただけ。

 でもきっぱりと「要らない」と言えなかったのも事実だ。そして誤解を生む言動をしていたことは認める。姉が自分を誤解しているのを知っていて、そのまま放置していたことも。

 リリーナはいつも凛と背筋を伸ばして前を見る姉アンジェラのことを慕っている。幸せになって欲しいと心から願っている。

 だから今日、セルードの屋敷を訪問して彼に会って説得したのだ。

 姉にこれまで隠してきた自分の気持ちを話すから、ちゃんと誤解を解くから。だから、どうか婚約破棄を考え直して欲しいと。

 なのに……まさかあと数歩でアンジェラの部屋というところで、こんな真実を聞いてしまうなんて。

 リリーナは、どうしていいのかわからなくなってしまった。





「……へえ」

 混乱を極めるリリーナの隣に立つ姉アンジェラの婚約者だった男セルードがしばらくの後、そう呟いた。恐ろしいほど冷淡な声で。

「ごめんなさい」

 リリーナはセルードを見上げて、そしてすぐに頭を下げた。

 こうなってしまったのは、全部自分のせいだから。もっと早く誤解を解いておくべきだったのだ。

 そう伝えてみても、彼は世界中の人間を小馬鹿にしたかのような笑い声を上げて口を開く。

「君が謝ることじゃないんじゃないかい?」
「いえ……私のせいです。こうなったのは全部……全部」
「そうかい?僕にはそんなふうには聞こえなかったけれど」

 軽い口調であるが、セルードが醸し出すオーラは怒りを極限にまで抑えているそれ。
 
 彼が怒りを覚えるのは当然だ。

 モノのように扱われ、蔑ろにされ、姉の醜い本音を聞いてしまったのだから。

「服装がダサい、言葉選びが下手くそ、父上から失格の烙印を押された出来損ない。はっ……言ってくれるじゃないか。しかも他の男とデキているわ、子供を宿しているわ……と、随分と舐められたもんだな」

 ぐしゃぐしゃと髪を掻きながらセルードは言った。

 普段、言葉数が極端に少ない彼とは別人のように饒舌で、眼鏡の奥の眼光は震えあがるほど冴え冴えとしていた。
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