「何でも欲しがる妹に、嫌いな婚約者を押し付けてやりましたわ。ざまぁみなさい」という姉の会話を耳にした婚約者と妹の選択

当麻月菜

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妹リリーナの独白

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 自ら誤解を解こうとしなければ、それは真実となる。

 強く否定して自分の気持ちを伝えなかったリリーナは、姉の物を欲しがる毒妹と両親から認識されるようになってしまった。

 本来、人の物を欲しがることは道徳に反すること。

 親ならばそれを叱り、考えを正さなければならない。

 しかしネリム家は裕福な名門貴族であり、加えてリリーナは、さほど高価なものではない姉の私物に興味を示すだけ。つまり家族内で処理できることだった。

 リリーナの両親は娘二人を愛していた。

 しかしその愛し方は、姉妹によって微妙に違った。

 姉アンジェラは長女であり、いずれ女当主になる存在。そのため厳しさの中に優しさや愛情を込める分かりにくいものだった。

 対してリリーナはいずれ嫁ぐ身ということもあり、限りある日々を大切に過ごしたいという思いから盲目的な愛され方をしていた。

 またアンジェラの髪と瞳は父親デュエフと同じ色で、リリーナの容姿は愛妻でるエルアの生き写し。

 そのため父親は、アンジェラのことを己の分身のように考え、リリーナに向けては若い頃の母親の面影を重ねて悪癖すら愛らしいワガママと受け止めてしまっていた。

 一応夫婦の間で話し合いをしたが、「姉妹の間で済むことなら、それで良いではないか」という結論に至り、リリーナは”姉の物を欲しがる毒妹”であっても、両親から叱られることも窘められることもないまま日々が過ぎていった。

 ……ただ、目に見えぬとも変化はあった。

 アンジェラは、リリーナの悪癖を利用するようになったのだ。

「ねえ、リリーナ。これ、素敵だと思わない?」

 穏やかな笑みを浮かべてリリーナに見せる物は、確かに趣味の良い物だった。

 でもその品々には必ず欠点があった。

 小さな宝石が付いていたはずの、壊れてしまった髪留め。
 絹の刺繍に取れない染みがついてしまった、美しかったリボン。
 手が折れてしまった、異国の人形。
 レース部分が無残に引き裂かれてしまった、姉が特注で仕立てたドレス。

 それらはアンジェラにとって不要なもので、新しい品を購入するために遠回しに押し付けられていることはリリーナにもわかった。

 でもリリーナは、それらの全てをアンジェラから受け取った。

 あの時、姉が自分の気持ちを知ろうとしてくれたのに、そこから逃げた自分の罪だと思って。

「ありがとうございます、お姉様。大切にしますわ」

 そう言って一度は受け取った後こっそり修理して使える物は私物とし、どうしても使えないものは処分した。

 無論、リリーナは、この行動が正しいだなんて思っていなかった。

 一度味を占めたアンジェラは、日に日に暴走していく。

 それを止められるのは自分しかいなかったはずなのに……。

 でも気付いた時には、もう手遅れだった。

 話し合いをしようとしても、アンジェラはこれまで奪われた品々がどれだけ大切だったかを語り、リリーナの言葉に耳を傾けようとはしない。

 そして、元々の原因は自分にあることを自覚しているリリーナは強く出ることができず、結局は姉の望む通りに毒妹を演じることを選んでしまった。


 その結果、アンジェラは「要らないものは何でも妹に押し付ければいい」という思考から離れることができなくなり、とうとうセルードをリリーナに押し付けてしまった。
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