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旅路と再会の章
対岸の火事でいたいから、いっそ人工的に崖なんぞ作るのはいかがでしょうか?②
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「えっと……と、途中でしたが……その……わかりにくかったでしょうか?」
魔法スイッチを強制的にオフにされたファルファラだが、別段、腹を立てることはしない。
そんなことより、自分の説明が下手だったのかと不安になっている。
「いえ、とてもわかりやすい説明でした。こちらこそ途中で遮ってしまい申し訳ありません」
グロッソはオドオドするファルファナに向け、柔らかい笑みを向ける。
彼も先ほど馬車を急停車した件で、そろそろ<慧眼の魔術師>が少々コミュ障だということに気付きはじめている。
だから精一杯目の前にいる彼女を怖がらせないよう言葉を選び、安心できる表情を作る。
そうすればファルファラは、へにゃりと笑った。
次いでモジモジとスカートの裾をいじりながら、グロッソを上目遣いで見る。
「で、では……グロッソさん。あの……わ、私の持ってる知識に……穴埋めをしてもらえますか?」
ペコっと頭を下げたファルファラに、グロッソは一つ頷いて口を開いた。
「思っていた以上に博識で、補足する部分は」
「待て。思っていた以上にって何だ?あんた、お嬢のこと」
「ごめん、ラバン。少しだけ黙ってて。ごめん」
不本意な命令を”ごめん”でサンドウィッチされたラバンは、大人しく口を閉じる。
そうすればグロッソは咳ばらいをしてから、続きを語りだした。
「ファルファラ嬢に知っていただきたいことは、一つだけ。最近のルゲン帝国の内情です」
「はい」
これから向かう北方の魔物調査で必要になる知識だ。ファルファラは、厳しい表情に変えたグロッソに真剣な表情で頷く。
「これはかなり極秘情報ですが、ルゲン帝国の現皇帝は現在不治の病におかされてます。寿命は半年持つか、どうか」
「あ、あの……それも呪いのせいなんでしょうか?」
つい思ったまま質問を口にすれば、グロッソは顎に手を当て考える。
「……どうでしょう。皇帝が不治の病というのは信頼できる筋からの情報ですが、残念ながら病名まではわかりません」
「そ、そうですか。あ、話が逸れてごめんなさい。えっと……続けてください」
「はい。ところでファルファラ嬢は、ルゲン帝国の次期皇帝候補をご存じで?」
「あ、知らないです……ごめんなさい」
即答したファルファラに、グロッソは無知だと罵ることはしない。
センティッドなら間違いなく嘲笑うというのに、彼は丁寧に教えてくれた。
「ルゲン帝国の次期皇帝候補は二名。直系のバルヌと庶子のエガ。血筋として選ぶのならバルヌが最有力候補ですが平凡な男で皇帝の器ではないそうです。逆に血筋は劣りますが、実力としては圧倒的にエガの方が有利です。支援者の数も圧倒的に」
「なるほど……です。つ、つまり……その……現在のナラルータ国に似ている状態ってことなですね」
「まぁ時期国王が誰か決まっていないところだけは同じですね。ですが我が国の陛下は元気です。縁起でもないことを仰らないように」
「あ、そうですね……ごめんなさい。ところでルゲン帝国は好戦的だと聞きましたけど、あの……な、内政のほうは厭戦的なんでしょうか?」
ふいに思った疑問を口にしただけなのに、グロッソはここで渋面になった。
「内政は更に酷いです。皇帝は病におかされながらも独裁政権を貫き、官僚たちも血気盛んな者が多いです。従って、次の皇帝を決めるまで、多数の死者が出ると予測されます」
「……うわ」
血だまりができた会議室を想像して、ファルファラは思わず手を口に当てた。
魔物は平気で粉砕できるが、人間の血に対しては恐ろしいほど臆病者になってしまう。
そんなファルファラを見て、グロッソは慌てて口を開く。
「申し訳ありませんっ。もう少し言葉を選べば良かったです。考慮が足りませんでした」
「あ、いえいえ……そんな」
そんなことで頭を下げてもらう必要はないので、ファルファラは両手を胸の前で振って大丈夫だとアピールする。
ただ、頭の中はきな臭いルゲン帝国の内情でいっぱいだ。
なにせ彼の国は呪い大国。隣接しているナラルータ国に少なからず悪影響を及ぼしているかもしれないから。
魔法スイッチを強制的にオフにされたファルファラだが、別段、腹を立てることはしない。
そんなことより、自分の説明が下手だったのかと不安になっている。
「いえ、とてもわかりやすい説明でした。こちらこそ途中で遮ってしまい申し訳ありません」
グロッソはオドオドするファルファナに向け、柔らかい笑みを向ける。
彼も先ほど馬車を急停車した件で、そろそろ<慧眼の魔術師>が少々コミュ障だということに気付きはじめている。
だから精一杯目の前にいる彼女を怖がらせないよう言葉を選び、安心できる表情を作る。
そうすればファルファラは、へにゃりと笑った。
次いでモジモジとスカートの裾をいじりながら、グロッソを上目遣いで見る。
「で、では……グロッソさん。あの……わ、私の持ってる知識に……穴埋めをしてもらえますか?」
ペコっと頭を下げたファルファラに、グロッソは一つ頷いて口を開いた。
「思っていた以上に博識で、補足する部分は」
「待て。思っていた以上にって何だ?あんた、お嬢のこと」
「ごめん、ラバン。少しだけ黙ってて。ごめん」
不本意な命令を”ごめん”でサンドウィッチされたラバンは、大人しく口を閉じる。
そうすればグロッソは咳ばらいをしてから、続きを語りだした。
「ファルファラ嬢に知っていただきたいことは、一つだけ。最近のルゲン帝国の内情です」
「はい」
これから向かう北方の魔物調査で必要になる知識だ。ファルファラは、厳しい表情に変えたグロッソに真剣な表情で頷く。
「これはかなり極秘情報ですが、ルゲン帝国の現皇帝は現在不治の病におかされてます。寿命は半年持つか、どうか」
「あ、あの……それも呪いのせいなんでしょうか?」
つい思ったまま質問を口にすれば、グロッソは顎に手を当て考える。
「……どうでしょう。皇帝が不治の病というのは信頼できる筋からの情報ですが、残念ながら病名まではわかりません」
「そ、そうですか。あ、話が逸れてごめんなさい。えっと……続けてください」
「はい。ところでファルファラ嬢は、ルゲン帝国の次期皇帝候補をご存じで?」
「あ、知らないです……ごめんなさい」
即答したファルファラに、グロッソは無知だと罵ることはしない。
センティッドなら間違いなく嘲笑うというのに、彼は丁寧に教えてくれた。
「ルゲン帝国の次期皇帝候補は二名。直系のバルヌと庶子のエガ。血筋として選ぶのならバルヌが最有力候補ですが平凡な男で皇帝の器ではないそうです。逆に血筋は劣りますが、実力としては圧倒的にエガの方が有利です。支援者の数も圧倒的に」
「なるほど……です。つ、つまり……その……現在のナラルータ国に似ている状態ってことなですね」
「まぁ時期国王が誰か決まっていないところだけは同じですね。ですが我が国の陛下は元気です。縁起でもないことを仰らないように」
「あ、そうですね……ごめんなさい。ところでルゲン帝国は好戦的だと聞きましたけど、あの……な、内政のほうは厭戦的なんでしょうか?」
ふいに思った疑問を口にしただけなのに、グロッソはここで渋面になった。
「内政は更に酷いです。皇帝は病におかされながらも独裁政権を貫き、官僚たちも血気盛んな者が多いです。従って、次の皇帝を決めるまで、多数の死者が出ると予測されます」
「……うわ」
血だまりができた会議室を想像して、ファルファラは思わず手を口に当てた。
魔物は平気で粉砕できるが、人間の血に対しては恐ろしいほど臆病者になってしまう。
そんなファルファラを見て、グロッソは慌てて口を開く。
「申し訳ありませんっ。もう少し言葉を選べば良かったです。考慮が足りませんでした」
「あ、いえいえ……そんな」
そんなことで頭を下げてもらう必要はないので、ファルファラは両手を胸の前で振って大丈夫だとアピールする。
ただ、頭の中はきな臭いルゲン帝国の内情でいっぱいだ。
なにせ彼の国は呪い大国。隣接しているナラルータ国に少なからず悪影響を及ぼしているかもしれないから。
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