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旅路と再会の章
至急胃薬を支給してください※駄洒落②
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「ーールゲン帝国には三種の神器があります。一つ目は鎮撫の剣。二つ目は箕帚の鏡。三つめは反呪の勾玉です。ローズベリーは反呪勾玉と言ってましたが、それでも問題ありません。ちなみに鎮撫の剣は初代皇帝が愛用していた剣で、現在は皇帝の証として受け継がれてます。次に箕帚の鏡は、辺り一帯の呪いを浄化できると。最後に反呪の勾玉は受けた呪いをそっくりそのまま相手に返すと言われてますーーここまでで質問は?」
流れるような説明を一旦止めたヘリクサムは、笑顔でグロッソに問うた。
「無い。続けろ」
「そうですか。さすが<竜の守り人>さま。優秀ですね。ところでファーラ、君は質問あるかな?」
グロッソに向けた笑みとは違う種類のそれを向けられたファルファラは、無言で首を横に振った。自分でもどうよと思うほどぎこちなく。
本当は幾つか聞きたいことがある。
たとえば、何事も無かったかのように昔の愛称を変わらず口にできるのとか。
なぜあれだけの事をしたのに、今でも堂々と”ヘリクサム・ネラ”と名乗ることができるのとか。
どうしてこんなにもぎこちなく接している自分に対して、平然としていられるのか。
でも、それはルゲン帝国の講義の内容から外れている。部外者であるグロッソも居る今、ここで尋ねるのは場違いだ。
それに今はとにかく胃が痛い。だからファルファラは質問は無いが、即効性の胃薬が欲しくて欲しくてたまらない。
ファルファラの胃痛の根源であるヘリクサムは、なぜかギルドメンバーのお抱え魔術師になっていた。
そして彼はは、北方の領地の手前にあるカロドニという村で春祭りの余興で行う魔物退治の助っ人に加わることになっている。
到着予定は、あと10日。天候も穏やかで、街道も大きな事故は無いと聞く。だから遅れることは無いだろう。
しかしファルファラの精神状態は既に限界を越えている。今、こうして意識を保って馬車に乗っているのがぶっちゃけ奇跡である。
「ん?……ルラ嬢、馬車に酔われましたか?少し休憩を取りましょう」
ラバンに寄りかかって何とか座る体勢を維持していたファルファラに、グロッソが心配そうに声をかけた。
彼がいつの間にか自分への呼び名を変えたことに、ファルファラは気付いている。
しかしなんで急に変えたのか、それはまだ聞けていない。というか別にそこまで知りたいとは思わない。正直、彼になら好きなように呼んでもらって構わない。
それより彼に聞いてみたいが、聞けないことがある。それは、
「ファーラは昔っから乗り物が苦手だったよね。あと怖がりで馬に乗るとさ」
「ルラ嬢、休憩場所にご指定はありますか?」
こんなふうにヘリクサムが過去の自分との出来事を語ろうすると、必ず遮ることである。
ちなみにファルファラは、ヘリクサムがグロッソに向けて「自分はファルファラの元婚約者で、その関係は終わっていない」と告げたことを知らない。
ただローズベリーから交換条件で引き受けたギルドメンバーで、偶然、ファルファラとも面識がある人と思い込んでいる。
だからこそ、ファルファラはどうしてここまでグロッソが不機嫌なのかわからず戸惑っている。
(私とヘリクサムが知り合いだって、グロッソさんには関係無いはずなのに……それに北方の地までヘリクサムが付いてくるわけでもないし……うーん……ただ単にそりが合わないだけ??)
魔法に関することならスポンジのように何でも吸収できるファルファラだが、人間関係についてはからっきし。
何よりヘリクサムのことを考えるということは、すなわち未だに癒えていない傷口を素手で開く行為となる。
その痛みは想像を絶するもので、ファルファラは苦痛のあまりろくに眠ることができない。加えて絶え間なく続く胃の痛みは日に日に増していき、吐血するのも時間の問題だ。
そんな瀕死の状態は、無論、使い魔にはばっちり伝わっているようで。
「お嬢、吐きますか?もしそうならいつでもここに」
そう言って迷いなく手を差し伸べてくれる使い魔にファルファラは「ぅう……ラバン、ありがとう」と呟き、彼の腕に縋りついた。
流れるような説明を一旦止めたヘリクサムは、笑顔でグロッソに問うた。
「無い。続けろ」
「そうですか。さすが<竜の守り人>さま。優秀ですね。ところでファーラ、君は質問あるかな?」
グロッソに向けた笑みとは違う種類のそれを向けられたファルファラは、無言で首を横に振った。自分でもどうよと思うほどぎこちなく。
本当は幾つか聞きたいことがある。
たとえば、何事も無かったかのように昔の愛称を変わらず口にできるのとか。
なぜあれだけの事をしたのに、今でも堂々と”ヘリクサム・ネラ”と名乗ることができるのとか。
どうしてこんなにもぎこちなく接している自分に対して、平然としていられるのか。
でも、それはルゲン帝国の講義の内容から外れている。部外者であるグロッソも居る今、ここで尋ねるのは場違いだ。
それに今はとにかく胃が痛い。だからファルファラは質問は無いが、即効性の胃薬が欲しくて欲しくてたまらない。
ファルファラの胃痛の根源であるヘリクサムは、なぜかギルドメンバーのお抱え魔術師になっていた。
そして彼はは、北方の領地の手前にあるカロドニという村で春祭りの余興で行う魔物退治の助っ人に加わることになっている。
到着予定は、あと10日。天候も穏やかで、街道も大きな事故は無いと聞く。だから遅れることは無いだろう。
しかしファルファラの精神状態は既に限界を越えている。今、こうして意識を保って馬車に乗っているのがぶっちゃけ奇跡である。
「ん?……ルラ嬢、馬車に酔われましたか?少し休憩を取りましょう」
ラバンに寄りかかって何とか座る体勢を維持していたファルファラに、グロッソが心配そうに声をかけた。
彼がいつの間にか自分への呼び名を変えたことに、ファルファラは気付いている。
しかしなんで急に変えたのか、それはまだ聞けていない。というか別にそこまで知りたいとは思わない。正直、彼になら好きなように呼んでもらって構わない。
それより彼に聞いてみたいが、聞けないことがある。それは、
「ファーラは昔っから乗り物が苦手だったよね。あと怖がりで馬に乗るとさ」
「ルラ嬢、休憩場所にご指定はありますか?」
こんなふうにヘリクサムが過去の自分との出来事を語ろうすると、必ず遮ることである。
ちなみにファルファラは、ヘリクサムがグロッソに向けて「自分はファルファラの元婚約者で、その関係は終わっていない」と告げたことを知らない。
ただローズベリーから交換条件で引き受けたギルドメンバーで、偶然、ファルファラとも面識がある人と思い込んでいる。
だからこそ、ファルファラはどうしてここまでグロッソが不機嫌なのかわからず戸惑っている。
(私とヘリクサムが知り合いだって、グロッソさんには関係無いはずなのに……それに北方の地までヘリクサムが付いてくるわけでもないし……うーん……ただ単にそりが合わないだけ??)
魔法に関することならスポンジのように何でも吸収できるファルファラだが、人間関係についてはからっきし。
何よりヘリクサムのことを考えるということは、すなわち未だに癒えていない傷口を素手で開く行為となる。
その痛みは想像を絶するもので、ファルファラは苦痛のあまりろくに眠ることができない。加えて絶え間なく続く胃の痛みは日に日に増していき、吐血するのも時間の問題だ。
そんな瀕死の状態は、無論、使い魔にはばっちり伝わっているようで。
「お嬢、吐きますか?もしそうならいつでもここに」
そう言って迷いなく手を差し伸べてくれる使い魔にファルファラは「ぅう……ラバン、ありがとう」と呟き、彼の腕に縋りついた。
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