どうしようもない姉に婚約者を寝取られそうになったので、彼よりもっとハイスペックな殿方を紹介することにしました。※但し、完璧なのは見た目だけ

当麻月菜

文字の大きさ
7 / 24
温室に掛かる虹の橋(出所は父の吹いたお茶)

7

しおりを挟む
 ざわつく使用人を横目に見ながら、ティスタはこの危機をどう乗り越えるか必死に頭を働かせていた。

(......もう式まで待たずに、結婚誓約書だけサインしちゃおうかな)

 人生で一度っきりの晴れ舞台。
 本当だったら、花の季節にヴァージンロードを歩きたかった。

 現在母と針仕事の得意なメイドと自分で、せっせこせっせこ作成しているお手製のウェディングドレスは、どう頑張ってもあとひと月はかかるだろう。

 なにせ一回しか着ないもの。仕立て屋に依頼すれば、とんでもない金額を請求されることを知っているティスタは、持ち前の刺繍の腕を活かして自力で作ろうと頑張っている。

 シンプルなベルラインのドレスだけれど総刺繍なら見栄えも良いし、敢えてのシンプルだと言い張れる。それに何より嫁ぐ前の最後の時間を母とゆっくり過ごすことができる。

 ということを呑気に思っていたけれど、事情が事情だけにそんな悠長なことは言ってられない。 

 ティスタはそっと、撃沈した母を見た。

 顔を覆っている母はティスタの視線に気づくと、指の隙間から唇を動かした。「ドレスは後回しで!」と読み取ることができた。どうやら母も自分と同じ考えのようだ。

 ティスタは「諦めなさい」と言われなかったことにホッと安堵の息を吐く。

(まぁ……結婚式は焦って挙げなくても、生活が落ち着いた後でもいっか)

 婚約期間中にうっかり子供を授かってしまうせっかちカップルが、出産を終えてから式を挙げるのはごくまれにあること。

 そしてその場合「夫側の父が急病になりまして、式を先延ばしにします」と伝えるのがシュハネード国では暗黙のルールである。

 ただティスタが式を先延ばしにするのは、そっちのせっかちではないので「妻側の父が急病になりまして……」とお知らせすべきだろう。

 長年姉の尻拭いの為に走り回ってきた父だ。正直、いつ心労から大きな病になってもおかしくはない。

 なのに、これまで元気に過ごしてきたのは、ひとえに我が家のシェフが貧乏ながらも栄養満点の食事を作り続けてくれたおかげだ。ありがとうございます。

 ティスタは、今も食材にお金を掛けられないからと、人知れず手間と時間をかけて夕食の下ごしらえをしてくれているシェフに感謝の念を送った。

 そうしてまた、お茶を一口飲もうとしてティーカップを持ち上げた。

「……あ」

 口に含む前に、ティスタは小さく声を上げる。

 本当に、本当に、今更なのだが、なぜヴァネッサが急にウェルドと結婚したいと言い出したのか疑問に思ったのだ。

 そこ一番大事!と思われるかもしれないが、これまでティスタはあらゆるものを姉から取り上げられてきた経緯がある。

 だから深く考えれば苛立つし、衝突が起きれば大規模な範囲で被害が及ぶことを身をもって知ってるため、思考を停止する癖がついてしまっていたのだ。
  
 けれど、ここはきちんと考えるべきところ。

 そして考えた結果、ヴァネッサがどうしてウェルドを欲したのか合点がいった。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

(本編完結)無表情の美形王子に婚約解消され、自由の身になりました! なのに、なんで、近づいてくるんですか?

水無月あん
恋愛
本編は完結してます。8/6より、番外編はじめました。よろしくお願いいたします。 私は、公爵令嬢のアリス。ピンク頭の女性を腕にぶら下げたルイス殿下に、婚約解消を告げられました。美形だけれど、無表情の婚約者が苦手だったので、婚約解消はありがたい! はれて自由の身になれて、うれしい! なのに、なぜ、近づいてくるんですか? 私に興味なかったですよね? 無表情すぎる、美形王子の本心は? こじらせ、ヤンデレ、執着っぽいものをつめた、ゆるゆるっとした設定です。お気軽に楽しんでいただければ、嬉しいです。

幼馴染の生徒会長にポンコツ扱いされてフラれたので生徒会活動を手伝うのをやめたら全てがうまくいかなくなり幼馴染も病んだ

猫カレーฅ^•ω•^ฅ
恋愛
ずっと付き合っていると思っていた、幼馴染にある日別れを告げられた。 そこで気づいた主人公の幼馴染への依存ぶり。 たった一つボタンを掛け違えてしまったために、 最終的に学校を巻き込む大事件に発展していく。 主人公は幼馴染を取り戻すことが出来るのか!?

(完結)私より妹を優先する夫

青空一夏
恋愛
私はキャロル・トゥー。トゥー伯爵との間に3歳の娘がいる。私達は愛し合っていたし、子煩悩の夫とはずっと幸せが続く、そう思っていた。 ところが、夫の妹が離婚して同じく3歳の息子を連れて出戻ってきてから夫は変わってしまった。 ショートショートですが、途中タグの追加や変更がある場合があります。

婚約者の幼馴染?それが何か?

仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた 「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」 目の前にいる私の事はガン無視である 「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」 リカルドにそう言われたマリサは 「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」 ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・ 「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」 「そんな!リカルド酷い!」 マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している  この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」 「まってくれタバサ!誤解なんだ」 リカルドを置いて、タバサは席を立った

初恋のひとに告白を言いふらされて学園中の笑い者にされましたが、大人のつまはじきの方が遥かに恐ろしいことを彼が教えてくれました

3333(トリささみ)
恋愛
「あなたのことが、あの時からずっと好きでした。よろしければわたくしと、お付き合いしていただけませんか?」 男爵令嬢だが何不自由なく平和に暮らしていたアリサの日常は、その告白により崩れ去った。 初恋の相手であるレオナルドは、彼女の告白を陰湿になじるだけでなく、通っていた貴族学園に言いふらした。 その結果、全校生徒の笑い者にされたアリサは悲嘆し、絶望の底に突き落とされた。 しかしそれからすぐ『本物のつまはじき』を知ることになる。 社会的な孤立をメインに書いているので読む人によっては抵抗があるかもしれません。 一人称視点と三人称視点が交じっていて読みにくいところがあります。

処理中です...