婚姻適齢限界(過ぎたら無理矢理って…嫌に決まってる)

アキノナツ

文字の大きさ
16 / 26

16 》震える

しおりを挟む
 
 嬉しいですけど、とっても嬉しいのですが、なんなのですか?!

 父の咳払いで、なんとか戻ってきましたが、まだ、混乱してます。

「いつまでも呆けてないで、しっかり聞きなさい」

「はい…」
 叱られちゃった…。

 目の前に広げられたのは戸籍の資料だった。
 あっ、せいさんのところって曾祖父さまの代で籍を分離したんだ。

 あれ?
 あの人、復籍がどうのって言ってなかった?
 復籍も何も籍抜いてるじゃないか…。あの家門は自分のところの戸籍も管理してないのか?
 戸籍は改正されてんだぞ…。

「おい、お前の事だぞ。婚姻で除籍にして静司せいじくんの籍に妻として入籍させる」

 コクコクと大きく頷いてるが聞いてませんでした。なんかすごい単語を聞いたような……妻……妻?!

「妻?!」
 声にも出てた。

「入籍だから当たり前だよ?」
 爽やかにちい兄さまがニッコリ。

「その際ちょっと書き間違えが起きるが、そう言う事だ」

 父が静かに言ってるが、危ない事をしようとしてる気がする。

「静司くん、役所で彼から声が掛かる手筈だ。彼以外とは手続きしないように。清春きよはるも」

「はい」
 小兄さまが涼しい顔で返事してる。
 一緒に行くんだ。

 私は、婚姻で除籍されるんだ…死亡じゃなくて…。
 静さんはこの事を知ってるから、私と結婚してくれる気に?

 男性Ωが世の中にいないのは戸籍がないから…。生きていても存在しない。それが私の調べた結論。多分皆はそこへ行き着く。

「戸籍上は三男が三女に変わる」

 これは今までΩを道具としてきた人たちの手法と変わらないかもだけど、私が生きれる道だと思う。

「今、世の中は変わろうとしてるわ。女性も意見が言えるようになる。Ωだって自由に結婚できるわ。その時、ここを訂正しましょうね」

 書類の字の上を母の指が愛おしそうに撫でている。
 母が自分の目と耳で見聞きしてきての実感だろう。
 きっと変わって行く。ラジオや新聞はそんな事を伝えていたじゃないか。
 未来は明るい。

「では…」
「行ってきます」

 またぼんやりしてしまってた。座ったまま二人を見送る。手元の赤いガーベラの花の小さな花束が私を見ている。

五鈴いすず、幸せにね」
 母に抱きしめられる。花束が潰れないようにそっと机に移動させる。

「私は、今までと変わりなくでいいのでしょうか…」

 私の言葉に母が離れてくれた。

「ん?」
 残った家族に変な顔をされた。

「女装とかしなくていいのですか?」
 だって『女』で『妻』でしょ?

「はぁぁ、『戸籍上は』と言ったぞ」

 今日は父に一生分のため息をさせてる気がする。眉間の皺が深いです。肩を落としてため息を吐かせてる姿は老け込んだように見える。ありがとうございます。

「今度『歌劇団』の公演を観に行きましょう。観劇されるお嬢さん方も素晴らしいのよ」

 キラキラとした目で話す母の圧がちょっと強い。確か母がレコードを嬉しそうにかけていたが、アレは歌劇団のですか?

「は、はい、お供させていただきます」
 でも、歌劇団と私は何の関係があるのでしょう…。

 男装のお嬢さま方や歌劇団の歌やお芝居を観たり、私がサインを求められたりするのは先の話。。。

「静司さんはこれで良かったのですか?」

 全ての手続きを終えて帰ってきた静さんと並んで私の庭を一緒に見てる。
 雀がパン屑を啄んでる。

「五鈴さんは嫌なんですか?」

 質問が質問で返ってきてしまった。

「私は嬉しいです。今も信じられません。好きな人と一緒に居れるなんて…幸せです。たぶん、来年の年明け早々、もしかしたらもっと早くに何処かに連れて行かれて、顔も名前も知らない人に無理矢理一緒にされるんだと思ってました。だから、それまではいっぱい楽しくあろうと思って…静司さんを巻き込んでしまいました」

 啄む愛らしい姿を見つめたまま呟く。パン屑を投げてやるとそっちにチョンチョンと移動して行く。

「それの方が良かったですか?」

 静さんはこっちを見て話してるのは分かる。低音の声が心地いい。

「……嫌に決まってるじゃないですか…」

 また投げてやる。チョンチョン…

「五鈴さん…」

 ふわっと香りが強くなった。声が切なく聞こえる。でも…彼を見れずに居た。
 太ももが触れ合う距離で座ってるのに、それ以上近づけずに居た。

 肩を抱かれて、やっと彼に頭を預けれた。彼の鼓動が聞こえる。私も同じだ。きっと私の香りもむせ返るようになってるだろう。甘ったるいのかなぁ…。

「五鈴さん…」
 なんだろう…胸が締め付けられる…切なく感じてしまう。
 固くなったパン屑を指先で捏ねながら、雀を見てる。

 丸い黒い目がこっちを見てる。クルッとこっちを向いて、きゅるんと小首を傾げてる。次のエサのおねだりだろうか…。
 愛らしい姿に自然と緩く口角が上がってしまう。

「こっちを…向いて下さい」
 顎に大きな手が添えられて…向かされてしまいました。
 間近で静さんが見つめてくれてます。キリッとした黒い目に引き込まれそう…。背中をゾクゾクとしたさざなみが駆け上がってくる。

「嫌ですか?」
 顔が近づいてきて、唇に柔らかいものが触れ、離れ、触れたソレから低い声が紡がれた…。

 ……気を失うかと思った…ッ!

 息が出来ない…。顔が熱いッ。唇が触れた。彼のッ。

「五鈴さん、接吻は嫌でしたか?」

『大切にし過ぎ…』兄の声がこだまする。

 頬を大きな手で優しく撫でられる。
 彼の目に捕まって目が離せない。
 指先がちくりとします。パン屑を指先で潰していた。
 息をはけた。止まってた…。
 息は出来るようにはなったんですけど。耳の中がうるさい。心臓が飛び出そうに跳ねてます!

 接吻…ッ。これって『口づけ』って本の中にあったアレ?
 私が応えずに固まってると、再び何も言えずに微かに動く唇に静さんの唇が重なった。

 ぷにゅっと押し付けられる感触に唇が細かく震えしまう。私が、接吻してるという状況に頭が茹る…。頭の中がぐるぐると回ってる。苦しくて…手が彼の胸に触れていた。パン屑は何処かに行った。

 震える唇が彼の唇にふにっと挟まれ離れた。ぷるっと引っ張られて戻る。はわわぁぁああああ…
 思わず熱くなってる口を手で抑えて俯いてしまう。

「嫌?」

 頭の上で声がする。緩く抱え込まれるように大きな腕が背中に巻かれ抱かれていた。

 ふるふると頭を振った。唇が熱く感じて、全身が熱くて…。嫌じゃないですけどぉぉぉ……。

 厚い胸板に額を押し付ける。恥ずかしい。でも、応えなきゃ。なんとか呼吸を落ち着けて、ゆっくり言葉を紡ぐ。

「嫌じゃありません。…静司さんこそ…無理をしてませんか?」
 喋れた…。

「あなたは無理をしてるんですか?」

 また質問で返ってきた。優しい人だから、私にお伺いばかりです。

「私が可哀想だから、静司さんは優しいから、……戸籍を汚してごめんなさい…」

 さっきまでつっかえてたもやもやを言葉にできた。

 私は世の中から切り離された場所で息をひそめて生きていくと思っていた。西洋人形のようにじっとして遊ばれられるだけだと思ってたのに…。道具になろうと思ってたのに…。

「俺は…優しくないです。一度はあなたを拒否したのに、今は独占できる歓喜に震えてる。今、あなたを俺だけのにできた。独占できる喜びで…あなたに…酷い事をしそうです」





==============


ゆっくりで申し訳ないです( ̄◇ ̄;)
これからのあれこれを心置きなくですね…あはは…
やっと ※ を使えそうです( ̄▽ ̄;)えへへ

続きが気になる方、お付き合いして頂ける方、お気に入りに登録やしおりは如何でしょう?

感想やいいねを頂けたら、さらに嬉しいです。

↓下の方にスタンプや匿名でメッセージ送れるの設置してあるので、使ってみて下さい。

ちなみにURLはコレ↓
https://wavebox.me/wave/8cppcyzowrohwqmz/

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

余命半年の俺を、手酷く振ったはずの元カレ二人が手を組んで逃がしてくれません

ユッキー
BL
半年以内に俺は一人寂しく死ぬ。そんな未来を視た。きっと誰も悲しむ人は居ないだろう。そう思っていたから何も怖くなかった。なのにそんな俺の元に過去手酷く振り、今では世界的スターとなった元カレ二人がやってきた。彼らは全てを知っていた。俺がどうして彼らを振ったのか、そして俺の余命も。 全てを諦めた主人公と、主人公を諦めきれないイケメンサッカー選手とシンガーソングライターの再会が導く未来は?

カワウソの僕、異世界を無双する

コプラ@貧乏令嬢〜コミカライズ12/26
BL
本編完結いたしました♡コツメたん!無双おめでとう㊗️引き続きの番外編も完結しました💕 いつも読んでいただきありがとうございます♡ ほのぼのとワクワク、そしてコツメたんの無双ぶりを楽しんで下さい! お気に入り1200越えました(new)❣️コツメたんの虜になった方がこんなにも!ʕ•ᴥ•ʔキュー♡ ★★★カワウソでもあり、人間でもある『僕』が飼い主を踏み台に、いえ、可愛がられながら、この異世界を無双していく物語。 カワウソは可愛いけどね、自分がそうなるとか思わないでしょ。気づいたらコツメカワウソとして水辺で生きていた僕が、ある日捕まってしまった。僕はチャームポイントの小さなお手てとぽっこりお腹を見せつけながら、この状況を乗り越える!僕は可愛い飼い主のお兄さん気分で、気ままな生活を満喫するつもりだよ?ドキドキワクワクの毎日の始まり! BLランキング最高位16位♡ なろうムーンで日間連載中BLランキング2位♡週間連載中BLランキング5位♡ イラスト*榮木キサ様

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

双子のスパダリ旦那が今日も甘い

ユーリ
BL
「いつになったらお前は学校を辞めるんだ?」「いつになったら俺らの仕事の邪魔をする仕事をするんだ?」ーー高校二年生の柚月は幼馴染の双子と一緒に暮らしているが、毎日のように甘やかされるも意味のわからないことを言ってきて…「仕事の邪魔をする仕事って何!?」ーー双子のスパダリ旦那は今日も甘いのです。

何故か男の僕が王子の閨係に選ばれました

まんまる
BL
貧乏男爵家の次男カナルは、ある日父親から呼ばれ、王太子の閨係に選ばれたと言われる。 どうして男の自分が?と戸惑いながらも、覚悟を決めて殿下の元へいく。 しかし、殿下は自分に触れることはなく、何か思いがあるようだった。 優しい二人の恋のお話です。 ※ショートショート集におまけ話を上げています。そちらも是非ご一読ください。 ※画像は男の子メーカーPicrewさんよりお借りしています。

不遇の第七王子は愛され不慣れで困惑気味です

新川はじめ
BL
 国王とシスターの間に生まれたフィル・ディーンテ。五歳で母を亡くし第七王子として王宮へ迎え入れられたのだが、そこは針の筵だった。唯一優しくしてくれたのは王太子である兄セガールとその友人オーティスで、二人の存在が幼いフィルにとって心の支えだった。  フィルが十八歳になった頃、王宮内で生霊事件が発生。セガールの寝所に夜な夜な現れる生霊を退治するため、彼と容姿のよく似たフィルが囮になることに。指揮を取るのは大魔法師になったオーティスで「生霊が現れたら直ちに捉えます」と言ってたはずなのに何やら様子がおかしい。  生霊はベッドに潜り込んでお触りを始めるし。想い人のオーティスはなぜか黙ってガン見してるし。どうしちゃったの、話が違うじゃん!頼むからしっかりしてくれよぉー!

【完結】一生に一度だけでいいから、好きなひとに抱かれてみたい。

村松砂音(抹茶砂糖)
BL
第13回BL大賞で奨励賞をいただきました! ありがとうございました!! いつも不機嫌そうな美形の騎士×特異体質の不憫な騎士見習い <あらすじ> 魔力欠乏体質者との性行為は、死ぬほど気持ちがいい。そんな噂が流れている「魔力欠乏体質」であるリュカは、父の命令で第二王子を誘惑するために見習い騎士として騎士団に入る。 見習い騎士には、側仕えとして先輩騎士と宿舎で同室となり、身の回りの世話をするという規則があり、リュカは隊長を務めるアレックスの側仕えとなった。 いつも不機嫌そうな態度とちぐはぐなアレックスのやさしさに触れていくにつれて、アレックスに惹かれていくリュカ。 ある日、リュカの前に第二王子のウィルフリッドが現れ、衝撃の事実を告げてきて……。 親のいいなりで生きてきた不憫な青年が、恋をして、しあわせをもらう物語。 ※性描写が多めの作品になっていますのでご注意ください。 └性描写が含まれる話のサブタイトルには※をつけています。 ※表紙は「かんたん表紙メーカー」さまで作成しました。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

処理中です...