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酔ってた?

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ふらふらと廊下を歩いてると大きな窓があったので、なんだか面倒くなって、そこから出た。
1階だったから良かったと後で振り返ったけど、その時は至極当たり前な気分だった。俺……おかしかったのかな。うん…たぶん…そう! 気が大きくなってたねッ。兎に角、気分が良く、大きくなってたよ。

庭か?
綺麗に整えられた緑がいっぱい。
立派な庭ですなぁ…。

振り返ると緑の中の青い屋根の白い屋敷だった。夢の国のような清楚で儚げ……綺麗だと思った。
ここに住んでるのが外見はピッタリなのに……中身がなぁ。
残念な気分で前を向く。

何処まで続くんだ?と思った頃、話し声が聞こえてきた。
語らいというより言い争いのような声。
「いい加減にしろッ!」
思わず物陰に隠れてしまった。

『兄上が』『唯一は』などと言ってるのは、王子だろう。だとすると相手は、そういう事ですなぁ~。

はぁ…面倒臭いな。うん、なんだか面倒臭い。
隠れてるのも面倒臭くなってきた。
だって出口分かんないし、追ってこられても更に面倒なので、スッキリおさらばしたい。

「王子ッ」
トンと出て呼び掛けてる。振り返る二人。嗚呼、二人とも王子か…。あれ? 名前……?

「フミ! 何故?!」
あたふたしてやがる。そして、俺の名前を知ってる。そっちは名乗ってないのに、知ってやがる。ムカつくね。ホント、ムカつくッ!

「あー、なんだっけ? ま、いいか。王子さんたちよぉ~、喧嘩は良くないぜ?」
まあ、まぁと手をひらひらさせながら柄にもなく仲裁に入ってみる。

魔法使いさんのお二人なので、距離は取ってますがね。

なんだか見合って、固まってます。
場が凍る?
居た堪れないので、余興を思いついた。

弓を空に向かって引き絞る。イメージはね、小説だったか漫画だったかの矢を複数番えてパスンって撃つやつ。
一度やってみたかったんだよなぁ~。
エアーアーチェリーだから、やりたい放題!
最高ーーーッ!!!

パス、パス、パス、ーーーーーパッスン!

連続で3本ずつ。最後に魔素を特大溜めて打ち上げた。

上空で華々しく弾けて、最後のが特大のしだれ柳。俺、しだれ柳大好きッ。花火だッ!

「タマヤー! カギヤー!」
両手を添えて、大声で叫べば気分最高ーーーッ。

さてと。
二人を見れば、上空と俺を往復してやがる。
なんでぃ、感想はねぇのか~?
腰に手を当てて、笑ってやった。

ツカツカとお兄さんがやってきて、俺の顎に手を添えると、クッと上にあげた。
身長差あるけどさ。これって顎クイ?

そばまで寄って、クンと嗅がれた。

「ミューラ。お前は、、、説教は後だ。訪来者殿、今から解毒魔法をかける。…眩暈が酷くなるが、私に掴まっていてくれ」
言い終わらないうちに、胸に当てられた手に熱が集まり、かけ始めたのか急激な眩暈に目の前の腕に掴まった。
気を抜くと吐きそうだ。

目を閉じていた。
眩暈が落ち着いて、ゆっくりと目を開ける。

綺麗なお顔がじっと見てる。
急激に恥ずかしくなった。

「あ、すみません」
なんで俺…気分が大きくなってたんだろう…。
なんかもの凄く恥ずかしい事してたような…。霞の向こう側の出来事な気もする。

「謝るのはこちらだ。すまないがこちらに」
手を取られると白い東屋に導かれ、座ってしまった。
なんて自然な流れ。さらっと乗ってしまったよ。

遅れて、王子、確かミューラって言われてたか?がふらふらとやってきて端っこに座った。

「単刀直入に訊く。あなたはコレと『唯一』か?」

本当にズバリ。時短になるからいいけど。
なんだか隅っこで小さくなってる王子が可哀想になってきたが、ウソはいけないし、俺は訊きたい事がある。

「違う。あー、そいつ怒んないで。何て言うか。ーーーー閉じ込めてないで話し合う事を提案するよ。あっ、余計なお世話ですね…」

メイドさんっていう人?
お茶とお茶請けがささっと用意して、消えた。
この人たちどこから現れてどこに消えたんだろうって程あっという間にセッティングして行ったんだよね。

それから暫くお話しをしましたよ。
相手は王太子殿下でした。
王子さんですね。

纏めると、俺の要求は通った。
「出口はどこですか?」は、何故か笑いが取れた。意味が分からんが、場は和んだ。
そして、訪来者は蓬莱者と言われるらしい。
異世界から知恵と幸せを授けてくれる存在らしい。
文字を書いて貰い、話で補足していくと、何となくだが理解した。

蓬莱山の話とやって来た者という来訪とがごっちゃになったのだろう。

俺の勝手な解釈だがたぶん合ってる。

『唯一』も俺の考えで大体合っていそうだ。
『唯一』はその時に互いに分かるらしい。
ただ、言い伝えしか情報がないので殿下も知ってる事しか伝えられないと申し訳なさそうだ。

十分である。

知恵か…。
置いて来てしまった教科書を思い出した。アレでどうにかなりそうだ。だって、俺、高校生だし。成人してるけど、高校生だしな!
過去の訪来者は大人だったんだと思う。だって技術とかなんとか殿下言ってるし。すんごい知識を伝えてくれる存在だから死なせたくなくて、保護の方法を模索した結果がこの状態って事らしい。
マジにごめん。俺自身にそんなに価値ありそうにないわ。

「俺って、元の世界に帰れますか?」
取り敢えず、異世界モノの定番セリフを言ってみた。

「分からない。文献には帰れなかったと記述があるので…」

殿下も分かってるのだろう。唯一に出会った訪来者は帰る努力をしなかったのではないだろうかと。俺もそう思う。この今足らない何かを手に入れたら、もう帰りたいとは思えないような気がする。

目を見て互いに頷いた。二人だけが分かり合っていた。

俺は立ち上がり、手を出した。
殿下は無言で手を握ってくれた。

「知識の提供は出来ると思います。過去の訪来者に比べたら微々たる物ですので、期待は大きくしないで下さいね」
牽制してしまった。俺って基本気が小さいのだ。

そして、今、城下の街に居ます。
この街にまだジュラさんは居るはず。何処かは知らないけどね。
俺……案外楽観的なのね?! ノープラン!



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お酒は二十歳になってから。

媚薬はアルコール成分でも入ってたんですかね。18で酔っ払い気分を味わってしまったのでした。二十歳のお祝いで、この感覚が酔っぱらってた事だと分かって、めちゃくちゃ笑う。笑上戸だったってのが、後日談の一部。

さて、このお話、後少しです(╹◡╹)
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