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イフリートの鎧編
ギロチンと覚悟
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「へぇ.... カーニバルか。変な二つ名をつけられたもんだよ」
「.... 」
笑う黒ローブの男もとい食人の魔女カーニバルと突如現れた鉄仮面の様に冷たい顔をした女性。
二人の間に流れるピリッとした空気を肌に感じた大輔は巻き込まれまいとその場から離れようするが
「ツッ!」
体に重くじんわりとした痛みがはしり体を動かせないでいた。
「君のその格好。見たところだとあの肉と同じローゼン王国に遣える騎士かな? なるほど仲間の敵討ちってわけか」
「.... 」
「あれ.... 図星で言葉も出ない?」
「.... 貴方と話す事は何もないので」
その言葉を皮切りに女性は大地を蹴り、食人の魔女カーニバルに細身の刀を振る。
カーニバルは血に塗れたナイフを逆手に持ち応戦。ぶつかる刃物は火花を散らせ弾き合う。
女性は直ぐ様構え直し突くように追撃する。がら空きの胴体に果たして刀は届かなかった。
突如魔女カーニバルを守るように現れた結界に刀が弾かれたのだ。
「防御魔法ですか.... 」
ならばと打ち付けるが如く刀を何度も振るう。その度に後ろで結わえている黒髪が振り子の様に揺れた。
剣は結界に弾かれ赤い火花が舞うだけで魔女カーニバルに傷一つつかない。
魔女カーニバルを包み込む球体の結界に女性は舌打ちをし距離を取る。
「アハハ! 俺ら魔女と違って精霊に頼って祈りしか使えない君らは無様だよね!」
魔女カーニバルは狂人の如く笑いののしり嘲け、倒れている大木へと近づき手を置くと
「いいかい。精霊っていうのは守るべきものじゃないんだ。
精霊っていうのは屠って利用して喰らうものなんだよ.... こう言う風にね!」
途端に森がざわめく。それはまるで悲鳴をあげ泣いているようだ。
魔女カーニバルが触れている大木はみるみると痩せ細り、空気が抜けるように萎んでいく。
豊かにつけた緑の葉も枯れ葉へと朽ちていった。
「死に絶えた死霊の魂よ。精霊を喰らい我ら魔女に忠誠を示せ。
禁忌の魔エアードギル!」
魔女カーニバルが天に手を翳すと、晴れ渡る空に雷鳴にもにたそれが轟き、命を狩り取る無数のギロチンが出現する。
「さぁ避けられるものなら避けてみなよ!」
カーニバルは手を振り下ろし、それが合図になりギロチンが一枚一枚空を切り落ちてきた。
こんなの無茶苦茶だ。かわせるわけがない!
大輔は拳を痛いほど握りしめ、ギロチンを必死に避ける彼女を見守り、見ているだけしか出来ない己を恥じ悔いた。
ギロチンは一枚をかわすと、二枚目が落ちてくる。そして三枚四枚と落ちてくるのだが、どれも微妙に落ちてくるタイミングにズレがあるのだ。
一枚が落ちた後、三秒後に二枚が、そして次に三枚目四枚目が同時に落ち、五六枚がまた二秒後に落ちてくるといった具合だ。
これでは何時どのタイミングで落ちていくるのか予め予期することが出来ない。
このままでは彼女の首が....二つの死体がフラッシュバックし大輔は青ざめた。
駄目だ駄目だ駄目だ! あの娘はどう見ても俺より遥かに若い。
年齢はおおよそ十五くらいだろう。
そんな若い娘を見捨てていいのか? 大の大人が震えてるだけでいいのか!?
.... けど俺に何が出来る。彼女みたいに剣があるわけでも魔女みたいに魔法が使えるわけでもない俺に何が.... 。
大輔はポケットに手を入れ、黒い箱を握りしめる。
なぁ蓮奈.... 俺はどうしたらいい。俺みたいなおっさんはどうすれば。
痛む体。ガチガチと震える口。それでも確かに沸いてくる熱い感情。大輔は決心した。
ギロチンが降ってきても彼女はあくまでも冷静だった。表情一つ崩さず、身をこなし確実にかわしていく。そして時間差で落ちてくるギロチンには
「.... なめられたものですね」
細身の刀を振り、切り落とす。
「ッッ! 化け物かこの女!!」
ギロチンを避けていき、少しずつだが彼女は魔女カーニバルへと距離を詰めていく。
笑う事も焦る事も怒る事もなく、彼女は無のまま近づいてくる。
それが不気味で魔女カーニバルはひきつった笑みを浮かべ
「大地に眠る屍よ! せ、精霊を喰らい我ら魔女に忠誠を示せ。 ドールズギル!」
飛んでくるギロチン。彼女はまず最初に降ってくるギロチンを踵で大地を蹴り避ける。そして正面から飛んでくるギロチンは
「.... 」
時間差で目の前に落ちてきたギロチンを盾にかわした。
「クソ! ドールズギルドールズギルドールズギルドールズギルドールズギル!!」
壊れた機械のように魔女カーニバルは魔法を唱え、ギロチンを次々と繰り出していく。
しかし、空から降ってくるギロチンとは反対に規則的に飛んでくる。
かわすのは容易だ。彼女は全てのギロチンを叩き切り、空から落ちてくるギロチンもかわしていく。
一つ一つ確実に冷静に。
だがここで思わぬ誤算が生じた。ぬかるんだ土に足をとられたのだ。
「.... !」
あくまで冷静に避けていたのだが、知らずのうちに疲労が蓄積されていたのだろう。予定が狂ったかのように彼女の体が地面へと落ちていく。
崩れ落ちる体。空から降ってくるギロチン。魔女カーニバルは勝利を確信しほくそ笑んだ。
.... だから彼は気付かなかった。
情けなく汚ならしい一人のおっさんが命を省みず突っ込んで来ていたことに。
「.... 」
笑う黒ローブの男もとい食人の魔女カーニバルと突如現れた鉄仮面の様に冷たい顔をした女性。
二人の間に流れるピリッとした空気を肌に感じた大輔は巻き込まれまいとその場から離れようするが
「ツッ!」
体に重くじんわりとした痛みがはしり体を動かせないでいた。
「君のその格好。見たところだとあの肉と同じローゼン王国に遣える騎士かな? なるほど仲間の敵討ちってわけか」
「.... 」
「あれ.... 図星で言葉も出ない?」
「.... 貴方と話す事は何もないので」
その言葉を皮切りに女性は大地を蹴り、食人の魔女カーニバルに細身の刀を振る。
カーニバルは血に塗れたナイフを逆手に持ち応戦。ぶつかる刃物は火花を散らせ弾き合う。
女性は直ぐ様構え直し突くように追撃する。がら空きの胴体に果たして刀は届かなかった。
突如魔女カーニバルを守るように現れた結界に刀が弾かれたのだ。
「防御魔法ですか.... 」
ならばと打ち付けるが如く刀を何度も振るう。その度に後ろで結わえている黒髪が振り子の様に揺れた。
剣は結界に弾かれ赤い火花が舞うだけで魔女カーニバルに傷一つつかない。
魔女カーニバルを包み込む球体の結界に女性は舌打ちをし距離を取る。
「アハハ! 俺ら魔女と違って精霊に頼って祈りしか使えない君らは無様だよね!」
魔女カーニバルは狂人の如く笑いののしり嘲け、倒れている大木へと近づき手を置くと
「いいかい。精霊っていうのは守るべきものじゃないんだ。
精霊っていうのは屠って利用して喰らうものなんだよ.... こう言う風にね!」
途端に森がざわめく。それはまるで悲鳴をあげ泣いているようだ。
魔女カーニバルが触れている大木はみるみると痩せ細り、空気が抜けるように萎んでいく。
豊かにつけた緑の葉も枯れ葉へと朽ちていった。
「死に絶えた死霊の魂よ。精霊を喰らい我ら魔女に忠誠を示せ。
禁忌の魔エアードギル!」
魔女カーニバルが天に手を翳すと、晴れ渡る空に雷鳴にもにたそれが轟き、命を狩り取る無数のギロチンが出現する。
「さぁ避けられるものなら避けてみなよ!」
カーニバルは手を振り下ろし、それが合図になりギロチンが一枚一枚空を切り落ちてきた。
こんなの無茶苦茶だ。かわせるわけがない!
大輔は拳を痛いほど握りしめ、ギロチンを必死に避ける彼女を見守り、見ているだけしか出来ない己を恥じ悔いた。
ギロチンは一枚をかわすと、二枚目が落ちてくる。そして三枚四枚と落ちてくるのだが、どれも微妙に落ちてくるタイミングにズレがあるのだ。
一枚が落ちた後、三秒後に二枚が、そして次に三枚目四枚目が同時に落ち、五六枚がまた二秒後に落ちてくるといった具合だ。
これでは何時どのタイミングで落ちていくるのか予め予期することが出来ない。
このままでは彼女の首が....二つの死体がフラッシュバックし大輔は青ざめた。
駄目だ駄目だ駄目だ! あの娘はどう見ても俺より遥かに若い。
年齢はおおよそ十五くらいだろう。
そんな若い娘を見捨てていいのか? 大の大人が震えてるだけでいいのか!?
.... けど俺に何が出来る。彼女みたいに剣があるわけでも魔女みたいに魔法が使えるわけでもない俺に何が.... 。
大輔はポケットに手を入れ、黒い箱を握りしめる。
なぁ蓮奈.... 俺はどうしたらいい。俺みたいなおっさんはどうすれば。
痛む体。ガチガチと震える口。それでも確かに沸いてくる熱い感情。大輔は決心した。
ギロチンが降ってきても彼女はあくまでも冷静だった。表情一つ崩さず、身をこなし確実にかわしていく。そして時間差で落ちてくるギロチンには
「.... なめられたものですね」
細身の刀を振り、切り落とす。
「ッッ! 化け物かこの女!!」
ギロチンを避けていき、少しずつだが彼女は魔女カーニバルへと距離を詰めていく。
笑う事も焦る事も怒る事もなく、彼女は無のまま近づいてくる。
それが不気味で魔女カーニバルはひきつった笑みを浮かべ
「大地に眠る屍よ! せ、精霊を喰らい我ら魔女に忠誠を示せ。 ドールズギル!」
飛んでくるギロチン。彼女はまず最初に降ってくるギロチンを踵で大地を蹴り避ける。そして正面から飛んでくるギロチンは
「.... 」
時間差で目の前に落ちてきたギロチンを盾にかわした。
「クソ! ドールズギルドールズギルドールズギルドールズギルドールズギル!!」
壊れた機械のように魔女カーニバルは魔法を唱え、ギロチンを次々と繰り出していく。
しかし、空から降ってくるギロチンとは反対に規則的に飛んでくる。
かわすのは容易だ。彼女は全てのギロチンを叩き切り、空から落ちてくるギロチンもかわしていく。
一つ一つ確実に冷静に。
だがここで思わぬ誤算が生じた。ぬかるんだ土に足をとられたのだ。
「.... !」
あくまで冷静に避けていたのだが、知らずのうちに疲労が蓄積されていたのだろう。予定が狂ったかのように彼女の体が地面へと落ちていく。
崩れ落ちる体。空から降ってくるギロチン。魔女カーニバルは勝利を確信しほくそ笑んだ。
.... だから彼は気付かなかった。
情けなく汚ならしい一人のおっさんが命を省みず突っ込んで来ていたことに。
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