上 下
64 / 91

64

しおりを挟む
シャ-……シャー……と嫌な音を出しながら、蛇髑が近づいて来た。

「ラルス、朝日が昇るまで踏ん張れ」

「はぁ!?また貴方はそんな無茶振りを……」

無茶は承知の上だ。
魔法も使えない、剣は溶かされてしまう。
お手上げ状態だな。

「泣き言は聞かん!!やれる所まででいい!!その時はその時考える!!」

「まったく、こんな上司を持つと部下は大変ですね……」

そう言いながらも剣を構える。

それを見た蛇髑が、毒を撒き散らす。

「ブラウ!!爺さん!!この毒に当たるなよ!!溶けるぞ!!」

「えっ!?うわっ!!」

「ほっほっほっ、珍妙な蛇ですなぁ」

爺さん、笑い事じゃないぞ。

「──くそっ!!コルネリア、屋敷の中は動きにくい!!外におびき出しましょう!!」

ラルスの言う事は最もだ。

隙を見て、全員外へと出た。
すると、蛇髑も外へと這い出て来た。

シャーーー!!!!

障害物が無くなったのか、撒き散らす毒の量が増した。

果たして、外に出たのが吉と出るか、凶と出るか……

「うわっ!!剣が!!」

ブラウの剣が毒に触れたらしい。
触れた部分からどんどん溶けだしていた。

「ほお、これは人間が当たるとまずいですな」

「だからさっきからそう言ってるだろ!!」

爺さんがのんびりとブラウの剣を見ているが、爺さん死ぬなよ?

「コルネリア!!話してる暇はありませんよ!!」

そうだった。

ラルスは蛇髑相手に何とか近づこうとしているが、それを蛇髑が許さない。
毒を吐き続けていて近づくことも出来ない。

ブラウが岩を投げつげるが、蛇髑は尾で叩き落とす。

爺さんが蛇髑の後ろに回り込み剣を突き刺したが、そんなもの蛇髑には全く効いていない。

爺さんは振り落とされ、腰を強く打ったらしく動けない。

「ブラウ!!爺さんを屋敷の中へ!!」

「はいっ!!」

すぐにブラウが爺さんを連れて屋敷の中へと入っていった。

「……コルネリア、勝算は?」

「無いな……」

しかし、殺らねば殺られるんでな。
日の出までまだまだある。

──日の出までもつかな……

「とりあえず、私が囮になる!!ラルス!!目を刺せ!!視界を奪うんだ!!」

「はい!!」

すぐさまラルスは蛇髑の後ろへと回り込み、隙を見計らう。

私は相変わらず蛇髑が吐く毒を避けながら、無駄だと思いつつも短剣を投げ付ける。

「……もう、短剣もないぞ……」

手持ちの短剣は全て投げ、その度溶かされた。

──参ったね……

蛇髑も短剣が無くなったのに気づいたのだろう。
私の元へと向かってきた。

「コルネリア!!──くそっ!!」

「ばかっ!!ラルス!!」

焦ったラルスが蛇髑の目を狙い飛び掛ったが、蛇髑の方が早かった。
尾でラルスの体は吹っ飛ばされた。

「──っぐ!!」

「ラルス!!逃げろ!!」

すぐに蛇髑がラルスの元に這って行き、あっという間にラルスがの体に巻き付いた。

──まずいまずいまずい!!!!

「ラルスを離せ!!!」

──あいつ、ラルスを食うつもりか!?

殺すならば、わざわざ巻付きはしない。
あれは、餌を捕える時の蛇髑だ。

「……こる……ねり……あ……」

考えてる暇はない!!
早くラルスを助け出さなければ窒息してしまう!!

しかし、思うように近づけない。

──くそっ!!どうすればいい!!

その時、白い大きな物体が蛇髑を吹っ飛ばした……
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完】君を呼ぶ声

BL / 完結 24h.ポイント:669pt お気に入り:88

兄のマネージャー(9歳年上)と恋愛する話

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:120pt お気に入り:5

中学生の弟が好きすぎて襲ったつもりが鳴かされる俳優兄

BL / 連載中 24h.ポイント:355pt お気に入り:152

だから違うと言ったじゃない

恋愛 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:63

木崎くんはイケメンです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:2

真面目だと思っていた幼馴染は変態かもしれない

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:560pt お気に入り:373

こころ・ぽかぽか 〜お金以外の僕の価値〜

BL / 連載中 24h.ポイント:1,114pt お気に入り:783

9歳の彼を9年後に私の夫にするために私がするべきこと

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,445pt お気に入り:105

処理中です...