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白い物体に吹っ飛ばされた蛇髑は、木々をなぎ倒しながらも起き上がる。

「ラルス!!無事か!?」

吹っ飛ばされた衝撃でラルスも解放された。
すぐにラルスの元に駆け寄り、ラルスの体を支える。

「……ゴホッゴホッ……はい……何とか……」

ホッとして、突如やって来た白い物体の正体を確認すると……

「ルー母さん!!!」

私より早くブラウの叫ぶ声が聞こえた。

そう、白い物体の正体はルー母さんだった。
まさか、私達を助けに来てくれたのか?
……いや、ルー母さんの目も焦点が合っていない。
これは赤の月の影響で、自我が飛んでいる証拠だ。

──自我がなくとも私達を助けてくれたか……

「コルネリアさん!!ルー母さんが……!!」

ブラウは新しい剣を手に此方へと走ってきた。

「ああ、今ルー母さんは自我が無い。近づくのは危険だ」

「だけど、それだとルー母さんが!!」

言いたい事は分かる。
ルー母さんを生贄にはしないよ。
そんな事したら、ルーに顔向け出来なくなる。

シャーーー!!!!

ギューーーーー!!!

蛇髑とルー母さんの威嚇の鳴き声が響き渡る。

この鳴き声を合図に、二匹は飛び掛った。

ルー母さんは素早く毒を避け、蛇髑の胴体に噛み付き、その肉を引きちぎる。
蛇髑も負けずに、噛み付いたルー母さんを尾で払い退ける。

二匹の一騎討ちは私達を驚かせ、思わず見入ってしまった。

「……ルー母さん、あんなに強かったのか……」

私も正直、角兎がここまで戦闘能力があるのには驚かされた。
赤の月の影響が多少なりあるとしても、これは凄い。

シャーーー!!!!

しばらくその場で見入っていたが、蛇髑の毒がルー母さんの左手にかかった。

ギューーーーー!!!!

みるみるルー母さんの手は毒に侵され、溶かされていく。

「コルネリアさん!!ルー母さんの手が!!!」

「分かってる!!くそっ!!こんな時、魔法が使えれば!!!」

そんな事を言っている間にも、毒はルー母さんを侵している。

「仕方ない!!ブラウ!!剣を貸せ!!」

「っ!?何するんですか!?」

「──ルー母さんの腕を切り落とす」

「はっ!?」

もうそれしか方法がない。

「そんな!!ルー母さんは俺達を助けてくれたんですよ!?」

「分かってる!!分かってるが、それしか方法がないんだ!!早くしろ!!ルー母さんを死なせたいのか!?」

私だって出来ることならルー母さんを傷付けたくない。
だが、もうそんな事言っている暇がないんだ。

私の気迫が伝わったのか、ブラウも渋々承知し剣を私に渡してきた。

「……本当に大丈夫なんですよね?」

「ああ、私を信じろ」

剣を受け取ると、すぐさま痛みで苦しむルー母さんの元へ駆け寄った。

当然、その間も蛇髑の攻撃は続いているが、ラルスが何とか相手をしている。

「……ルー母さん、すまんな……」

聞こえていないと思うが、一言謝りルー母さんの腕目掛けて剣を振り落とした。

ギューーーーー!!!!!

片腕を切り落とし、すぐさま服を破き止血をした。
痛みのあまり、ルー母さんは気を失ったようだ。

──痛かったな……すまなかったな……

優しくルー母さんの体を撫でてやった。

「おい、何事だ?」

突如頭上から声がかかった。
上を見上げると、ラコードがいた。

「──ラコード!!お前、何処に行っていた!?」

「赤の月は気分が悪くなるんでな、気晴らしに散歩に出ていた」

ドラゴンであるラコードは赤の月の影響は気分が悪くなる程度らしい。

「──で、この惨事は何事だ?」
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