「悪役令嬢は愛おしきモフモフ♡へ押しかけたい‼︎」(完結)

深月カナメ

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8 (ルイ)

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 服を抱えて慌てて走っていく、彼女の後ろ姿を見送った。

「ちょっと、強く言いすぎたかな?」

 その彼女の足音が奥で止まった。
 おチビは俺の部屋を見つけて、中に入ったみたいか。

(くっ、くく、おチビか)

 俺が元王子だとわかるとか、おチビが公爵令嬢だと知っていると、わかるのが嫌かとなではなく。
 見た目と可愛さから彼女をおチビと呼んだ。あの子は小さくないって、怒るかと思ったけど彼女からの反論はなかった。

 俺は虎くんか……いいな。

(それにしても俺のシャツを着たおチビは可愛かった。照れた顔にはグッときた……また首を噛んでしまいそうだった)

 それはこの後でだ。まずはここに来る俺の弟ーーマークレをどう帰らすかだな。いま洞窟の前に多くの足音が止まった。

 マークレのやつ、こんな所に騎士を大勢引き連れて来やがって。

(いま聞こえてきた話だと、こことは違う別でもおチビを探しているみたいだな……どんだけ必死なんだよ…)

 直ぐには来ず、洞窟の外で騎士と何やら話しているようだ。なになに「洞窟の中には僕が1人で行く、君たちはここで待機していてくれ」だと。

 偉そうに命令して。
 でも、ここに1人で来るか。

 マークレは洞窟の中をわざとらしくら靴音を出してやって来た。そして、近くにいる俺の姿を見つけると、偽物の笑顔を張り付かせてこちらに向けて走ってくる。

「兄上、お久しぶりです!」

「マークレか? 久しぶりだな、父上と母上は元気か?」

「はい、みんな元気です。父上と母上は毎日、兄上の事を心配しております」

(見えすいた嘘だな、昨日父上とは会ったが、俺のことが嫌いな母上に限ってそんな事は思わないだろう)

 マークレだって俺を兄上だと、思ってもいないくせに。

「遅くに、こんな所にまで来て私に何の用だ?」

「兄上、僕の婚約者がいなくなりました。今日の午後、この森の中で小さな女の子を見かけませんでしたか?」

「この森で、小さな女の子?」

「はい、兄上は獣人で耳がいいから、女の子の足音と声を聞いていませんか?」

 そう言って俺を見たマークレに驚く。
 やばい……おい、お前の目付きが相当やばいぞ。探しても見つからないストレスからか、瞳孔が開き、相当イライラしているようだ。

 お気に入りのおチビに婚約が嫌だと、逃げられたことがそんなにショックだったのか? ……そうだよな、嫌いな俺と、こんな虫だらけの森の奥まで探しに来たものな。

「しかし、ここは『人食いトラの住む森』誰も恐れて、この森に来るはずないだろう?」

「それはそうだけど……でもね。兄上と僕は13と12の時に彼女と会ってるんだ」

「俺もか?」

「そうだよ」

 そう言われてもなぁ

「俺はさ、昔の記憶は病気の時に全て飛んでしまい、ほとんど覚えてい」

 マークレの口元がニヤリと歪んだ。
 そんなに俺が病気になったことが嬉しいのか……

(嫌な奴だ)

「そうでしたね。でも、僕は忘れていない。兄貴がリボンを気に入ったからと、彼女にリボンを貰っていたことを……僕も欲しかった」

「リボン?」

 あのリボンはおチビのだったのか。
 じゃー1度会っているのなら、俺だと、気が付いついてもおかしくないのでは?

 いや、気付かないな。

 俺は大病を患い15で死んだと国民に発表されているし。
 虎の獣人に先祖返りをして、城を追い出されていることを、おチビは知らない。

 もし俺が病気にならなかったら、おチビが婚約者だったのか。
 でも、再び会えたことは運命かもな。

「兄上は何を笑ってるの? 僕がこんなに必死になっているのに!」

 顔が緩んでいたか……

「笑ってはいない。マークレが探すその子が森に入ったら直ぐに連絡する。母上が城で心配しているだろうから、今日は帰りなさい」

 そう言えば、母上が好きなマークレは焦りだした。

「……そ、そうだね。兄上、見つけたら直ぐに僕に連絡してね」

 マークレはそれだけ言うと踵を返すと洞窟を出ていった。

「おチビも、変な奴に目をつけられたな……マークレには渡さないけど」
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