28 / 35
じゅうなな
しおりを挟む
魔王城からの帰り間際。エマ様に呼び止められた。
「サローナ、勇者装備一式は私が預かっておくわ」
「はい、エマ様」
エマ様に勇者装備を渡してこの日は解散した。
そして私はお風呂に入り、ユバの寝室にいる。
夫婦になるのだから一緒でいいだろうと、今日からここが私の部屋になった。
(今日から、ずっとユバと一緒なんだ)
ラトナはドラーゴ様に着いていかないと断り、ドラーゴ様も「いつでも会えるし、気長に行くわ」と、ご自分の寝床に帰られた。
私たちに着いてこようとしたが、ユバにダメだと言われて、いまは私たちの隣の一つ間、客間に通されていた。
「……ユ、ユバ」
「なに、サローナ?」
「これから、末永くよろしくね」
「あぁ、俺もよろしくな。この国の暮らしはいままでとは違うと思う。遠慮なく俺を頼ってくれ」
その言葉にこくりと頷いた。
彼に名前を呼ばれて、彼に見つめられて、目を瞑ると触れるだけのキスーー初めてのキスを好きな人とした。
一言、言うのなら「幸せすぎる」ね。
キスの余韻に浸っていると、ゴクリとユバの喉が鳴って、甘い香りが部屋を満たした。
「甘い香りがユバからする」
すんと鼻を鳴らすと、同じようにユバも香る。
「サローナからも俺を誘う香りがしてる」
「えっ、私からも?」
「あぁ、甘く、俺の好きな香り。だが、今日は我慢する。結婚したら覚悟してくれ、めちゃくちゃお前を愛する」
「私もユバを愛するわ」
もう遅いからと寝る準備に取り掛かる。
着替えを取り出そうと持ってきたトランクケースを開いた。
開けて、すぐに見えた本に私は動揺した。
(しまった、忘れていたわ。部屋ではラトナがいるか1人だと思っていたから、見える位置に入れたのだけど……この本ーー閨の教本をユバに見せるわけにはいかない)
「荷物整理か、手伝うか?」
寝巻きに着替えを終えた、ユバがトランクケースを横から覗いた。
(ま、まずい!)
ユバに見られるのはダメだと、私はトランクケースを体で隠して。
「だ、だ、大丈夫。1人で、できる、わ」
と、断ったのだけど。
「遠慮するなって」
きゃー! ユバにトランクケースを取られた。
そして、中身を見たユバが真っ赤になって固まった。
恥ずかしい。
一応、花嫁修行の時と、前世の記憶があるから、閨に関しての知識はあるけど。
好きな人との初夜だから……失敗したくない。
ユバは何も言わずその本を手に取り、パラパラめくり閉じた。
「あ、あのさ、サローナ。お、俺、初めてだから……その、失敗しないように頑張るよ。ちゃんと兄とか父上に閨について、聞いて学んでいるから」
「わ、私だって初めて……だもの。失敗とかわかんない。好きな人と、その……嬉しい」
「俺もだ……」
ユバの尻尾がパタパタ動き、互いにトランクケースを挟んで、私たちは真っ赤だ。
(彼になら、なにをされても私は幸せしか感じない、だろう)
ユバの部屋で、寝室。
この変な空気を変えたいと思っていた、ユバがトランクケースの中に何か見つけた。
「このドレス、サローナが卒業祝いの舞踏会で着ていたドレスだ」
トランクケースの中から、水色のドレスを取り出した。
「うん、そうだよ。私の大切な物だから持ってきたの」
「大切な物?」
「ユバと初めての、ダンスを踊った時のドレスだから……」
ユバが私のドレスを持って立ち上がり、自分のクローゼットを開いた。
そこには舞踏会の時にユバが着ていた赤色のジュストコールが、他の衣類とは離されて掛かっていた。
「これ、俺の宝物」
「ユバも私と同じ」
「好きなサローナとくっ付いたら、自分がどうなるか分からなかったけど。どうしても最後にダンスしたかった……サローナが俺と踊りたいと誘ってくれて嬉しかった」
「私も最後だと思ったから、ユバとダンスできて幸せだったわ」
ーーあの舞踏会の日。テラスにいるユバに勇気を出してダンスを誘ったの「いいよ」と笑って言ってくれた。
「いまもだけど、あの日のサローナは綺麗だった」
「ユバも素敵だった」
これは俺たちの宝物だなと、ユバは私のドレスをその服の隣にかけてくれた。
「サローナ、勇者装備一式は私が預かっておくわ」
「はい、エマ様」
エマ様に勇者装備を渡してこの日は解散した。
そして私はお風呂に入り、ユバの寝室にいる。
夫婦になるのだから一緒でいいだろうと、今日からここが私の部屋になった。
(今日から、ずっとユバと一緒なんだ)
ラトナはドラーゴ様に着いていかないと断り、ドラーゴ様も「いつでも会えるし、気長に行くわ」と、ご自分の寝床に帰られた。
私たちに着いてこようとしたが、ユバにダメだと言われて、いまは私たちの隣の一つ間、客間に通されていた。
「……ユ、ユバ」
「なに、サローナ?」
「これから、末永くよろしくね」
「あぁ、俺もよろしくな。この国の暮らしはいままでとは違うと思う。遠慮なく俺を頼ってくれ」
その言葉にこくりと頷いた。
彼に名前を呼ばれて、彼に見つめられて、目を瞑ると触れるだけのキスーー初めてのキスを好きな人とした。
一言、言うのなら「幸せすぎる」ね。
キスの余韻に浸っていると、ゴクリとユバの喉が鳴って、甘い香りが部屋を満たした。
「甘い香りがユバからする」
すんと鼻を鳴らすと、同じようにユバも香る。
「サローナからも俺を誘う香りがしてる」
「えっ、私からも?」
「あぁ、甘く、俺の好きな香り。だが、今日は我慢する。結婚したら覚悟してくれ、めちゃくちゃお前を愛する」
「私もユバを愛するわ」
もう遅いからと寝る準備に取り掛かる。
着替えを取り出そうと持ってきたトランクケースを開いた。
開けて、すぐに見えた本に私は動揺した。
(しまった、忘れていたわ。部屋ではラトナがいるか1人だと思っていたから、見える位置に入れたのだけど……この本ーー閨の教本をユバに見せるわけにはいかない)
「荷物整理か、手伝うか?」
寝巻きに着替えを終えた、ユバがトランクケースを横から覗いた。
(ま、まずい!)
ユバに見られるのはダメだと、私はトランクケースを体で隠して。
「だ、だ、大丈夫。1人で、できる、わ」
と、断ったのだけど。
「遠慮するなって」
きゃー! ユバにトランクケースを取られた。
そして、中身を見たユバが真っ赤になって固まった。
恥ずかしい。
一応、花嫁修行の時と、前世の記憶があるから、閨に関しての知識はあるけど。
好きな人との初夜だから……失敗したくない。
ユバは何も言わずその本を手に取り、パラパラめくり閉じた。
「あ、あのさ、サローナ。お、俺、初めてだから……その、失敗しないように頑張るよ。ちゃんと兄とか父上に閨について、聞いて学んでいるから」
「わ、私だって初めて……だもの。失敗とかわかんない。好きな人と、その……嬉しい」
「俺もだ……」
ユバの尻尾がパタパタ動き、互いにトランクケースを挟んで、私たちは真っ赤だ。
(彼になら、なにをされても私は幸せしか感じない、だろう)
ユバの部屋で、寝室。
この変な空気を変えたいと思っていた、ユバがトランクケースの中に何か見つけた。
「このドレス、サローナが卒業祝いの舞踏会で着ていたドレスだ」
トランクケースの中から、水色のドレスを取り出した。
「うん、そうだよ。私の大切な物だから持ってきたの」
「大切な物?」
「ユバと初めての、ダンスを踊った時のドレスだから……」
ユバが私のドレスを持って立ち上がり、自分のクローゼットを開いた。
そこには舞踏会の時にユバが着ていた赤色のジュストコールが、他の衣類とは離されて掛かっていた。
「これ、俺の宝物」
「ユバも私と同じ」
「好きなサローナとくっ付いたら、自分がどうなるか分からなかったけど。どうしても最後にダンスしたかった……サローナが俺と踊りたいと誘ってくれて嬉しかった」
「私も最後だと思ったから、ユバとダンスできて幸せだったわ」
ーーあの舞踏会の日。テラスにいるユバに勇気を出してダンスを誘ったの「いいよ」と笑って言ってくれた。
「いまもだけど、あの日のサローナは綺麗だった」
「ユバも素敵だった」
これは俺たちの宝物だなと、ユバは私のドレスをその服の隣にかけてくれた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
154
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる