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お抱え専門医、アルカの独り言

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 たかが魅了だと薬の研究に没頭したいからと、安易に国王陛下の依頼を断ったツケが回ってきたか。

 カチンコチンに凍った部屋を見て、ため息が漏れた。

「貴方様が専門医の方ですか?」

「そうだ、後は私が見よう。貴方は他の者を頼みます」

「かしこまりました、オルフレット殿下をよろしく頼みます」

 私を迎えた貴族風の男は頭を深々く下げると、部屋から出ていった。

 落ち着いた普通の対応だな。
 あの貴族のひとはこの状態を見ても変に思わないのか? はたまた思っていても顔にも態度に示さないのか……

 ーーたいしたものだな。

 国王陛下と王妃にぽーちゃんで連絡はした。
 遠い国にいた為か急いでも、戻るまで時間はかかると返信が返ってきた。

 それなら2人だけでも転送の魔法で、と思ったがジルベスター君は使えないな……いま森で『女神の涙』を採りに入った王子の婚約者で手がいっぱいだものな。
 
 その子の採取が成功した暁には、私の弟子に迎えたものだ。魔法使いも歳をとれば魔力が年々衰えて来る。

 1年前の健康診断で魔力を抑える刻印を新しく施しても、私の今の力ではオルフレット王子の魔力は抑えれないか……

 王子の婚約者のスキル。子供のことにうっすらと見えた世にも珍しい『女神の加護』を待つ婚約者が側にいたから王子の心も落ち着き、魔力を抑えれたのだろうか?

 それとも、あの女の子の包容力かな?

 だがその婚約者の子は魔力持ちのくせにまったく興味がないのか、魔力に関して無知なのか…… 

 いや、ほら、あるだろう。

 知らない内に己の感情の変化とか、何かの弾みで魔力を使用してしまうとか、とかもなかったみたいだ。

 王子が他の子に興味をもっとたときにショックで倒れるくらいだものな……そのあとの1ヶ月もの間、王子は特にやばかった。
 嫌われたと落ち込む王子は部屋を凍らす、私が呼ばれる。
  
 それの繰り返しだった。

『その様な心構えでは好きなその子を自身の魔法で、あのときの様に傷つけてしまうぞ!』

『魔法でなく自分の行動で傷付けた! 先生だって私の自業自得だと言いたいのだろう? そうさ、私が全て悪い……ロレッテ、ごめん。君だけを愛してる、許して欲しい……ううっ、ロレッテ』

 支離滅裂か……そんな部屋の隅で壁に向かって言ってもな、相手には聞こえないぞ。

 これに関して、私とシルベスター君は専門ではない。

 しかしな……あの子を気にいるジルベスター君に「なる様になる」とは言ったものの、この調子では連れていかれるぞ王子。

『ロレッテ……ごめん』

 はぁ……仕方ないな。

『ほらほら、若い身空で病むな、若人』

 いらないと言う王子に食事を取らせて、眠らせた。

 2度と好きな人を中からも外からも傷たくない、知られたくないと心の奥底に箱を作り。自分が魔力を持つという真実を上手いことそこに仕舞い込みよって。そういうところは器用なのだな。

 しかし王子も300歳の私から見ればまだまだ子供じゃな。

 私は魔法で氷を溶かして眠りから覚めぬ王子に、余り役に立たないが新しく魔力を抑える刻印を施した。
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