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しおりを挟む「ハ、ハイレント様!一体どうされてのですか?」
ミクラが大男に尋ねた。どうやら、あれが私の婚約者ハイレント・ヴァーレンらしい。
「どうもこうもないっ!この女、よく調べれば養子ではないか!それもスラムの孤児院から引き取られたらしいな!」
そうだったのか…。シェルエッタ…。それはさぞ、辛い幼年期だっただろう。
「しかし、そのことはヴァーレン家に通達しています。シェルエッタ様の出自は承知の上で、今回の婚約を承諾してくださったのではないのですか?。」
「通達など知るか!使用人の分際で、俺に口出しするな!当主を出せ!」
うわぁ、古めのクレーマーかよ…。
「お、落ち着きなされよ。ハイレント殿?」
おどおどしながら、私の父親らしき人物が対応にあたる。
「誉れ高きヴァーレン家の血が汚れようとしたのだぞ!落ち着いていられるか!」
「そ、それは誠に申し訳ありません。」
いや、そこは謝らないでよ…。娘が汚いもの呼ばわりされてるんだから。でも、養子だとあまり愛情がわかないのかなぁ。どうやら、この身体の主はわりと辛い人生を送っていたのかもしれない。
シェルエッタの人間関係に考察を進めていると、ヴァーレン家の使用人らしき女性がハイレントを止めにでた。
「坊っちゃま、怒りを鎮めてください。ヴァーレン家のことを思うなら。」
「くそっ!元々、俺は下級貴族との婚約などしたくなかった。ましてや、あの運だけの良い″成金″なんかと…。」
その体で坊っちゃま呼びなんかいっ!ギャップがすごいわ。
なるほど。推測をするに、ヴァーレン家の懐事情は中々厳しいらしい。それを改善するために、″成金″と呼ばれる我らテールミス家と婚約し援助金を掻っ払うつもりのようだ。ヴァーレン家の懐事情は解決し、テールミス家も″成金″の汚名を返上して、伯爵家の血縁を作ることで家の格も上がる。まさにwin-winな関係ということだ。本人同士の気持ちを無視しなければね…。
「お父様、ハイレント様。折り入ってご相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「むっ。誰だ。」
「あぁ、失敬。私は、テールミス家次女のアルミナ・テールミスと申します。以後お見知り置きを。」
揉めているところを見かねたのか、妹ちゃんが前に出てきた。
「そ、それでアルミナ。相談というのは?」
「はい。察するにヴァーレン家としては、婚約者になる予定のシェルエッタ姉様が元平民であり、その血を家にいれたくない。しかし、テールミス家の援助はなくなるのは厳しいので、仕方なく婚約を受けるということで間違いありませんか」
「まぁ、その通りだが。」
…なんていうか我が儘だな。確かに望まれない婚約は嫌だろうけど、本人の前で言わなくてもいいのに。
「でしたら、シェルエッタ姉様の代わりに私を婚約者してみてはいかがでしょうか?」
「なっ!」
「えっ!」
「私はお姉様と違いテールミス家の実子ですし、幼少期から教養を得ています。今のところ婚約の障害となっているのは、お姉様の出自のみ。でしたら、そこの問題はない私がヴァーレン家の婚約者に相応しいかと。」
「な、何を言っているんだアルミナ。婚約直前に…。」
「よいっ!アルミナと言ったか?俺はそなたのような柔軟で賢い女は好きだ。よって、このハイレント・ヴァーレンがテールミス家の婚約者として認める!」
えぇ…そんなのありですか。ま、まぁでも好きでもなんでもない男と結婚させられるなんてごめん被りたい。
「で、アルミナ。そなたは妻としてまず俺に何を望む?」
望み?あぁ、家の汚名を返上することかな?
それを目的にヴァーレン家と婚約を結ぶんだし。
「はい。私は私の姉、シェルエッタ・テールミスの追放を望みます。」
妹ちゃんの返答により、私の異世界ライフがハードモードになることが確定した。
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