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しおりを挟む「はぁ、それは私の事ですけど。」
いきなり失礼な人だな。立場を奪われたのは本当だけどさ。
「いや失敬、私の名前はゼルレッジ・マーティナ。若輩ながらここの領主をしている。」
「私はシェルエッタ・テールミス。つい先日、妹に家から追い出された小娘よ。どうぞよろしく。」
失礼な挨拶を嫌味たっぷりと返してやると、領主は眉を顰めながら使用人のセバスを呼んだ。
「あぁ、よろしく。セバス、このお嬢さんを部屋に案内してやってくれ。ヴァーレン家に押し付けられたお荷物だが、丁重に扱って欲しい。」
「畏まりました。それではシェルエッタ様、こちらに。」
「はい。」
フンッ。何あの男!家族に追い出された、いたいけな女の子をもう少し労ってくれてもいいじゃないっ!
とりあえず、あまり歓迎されてないことはわかった。
「先程は申し訳ありませんでした、シェルエッタ様。主にかわりお詫び申し上げます。」
「いえ、大丈夫です。気にしてませんので。」
「主は口ではああ言ってますが、本心では貴方のことを気にかけているはずです。ただ、主とヴァーレン家のハイレント様は犬猿の仲ですので、その指令に従って貴方を引き取ったことが気に食わなかったのでしよう。」
「なるほど。」
ヴァーレン家が気に入らない者達を一箇所にまとめてるのか。それにしてもこのお屋敷…、あんまり掃除が行き届いているとは思えないな。ところどころ蜘蛛の巣はってるし、ホコリっぽい。なんだか鼻がムズムズして…。
「ヘックチュン!。」
「はっはっはっ!これはお恥ずかしい。お気づきかもしれませんが、実は屋敷の清掃が間に合ってなくてですね。私も執事長を名乗っていますが、使用人は私1人だけなんですよ。主には再三にわたり、人を雇って欲しいと申し出ているのですが、人件費が惜しいの一点張りで困ったもんです。」
「まぁ、それは困ったもので。ゼルレッジ様は意外とけちん坊なんですね。」
「ははっ!そうなんですよ。幼少期からお金はあまり使いたがらない方でして…。あ、雑談してる間に着きましたな。ここがシェルエッタ様のお部屋になります。」
「おぉ~!」
用意された部屋は客人用なのか結構な広さだった。掃除も行き届いていて、ドレッサーと大きめのベッド付きのシンプルな部屋だ。すると、肩の力が抜けたのかベッドにダイブする。
「ん~フカフカだぁ~。」
「はっはっは!気に入れられたようで何よりです。それでは夕食の準備が出来ましたら呼びに参りますので、それまでお寛ぎください。」
「はーい。」
今思うと、こうやって心を落ち着かされるのはここが初めてだ。前の家では何も分からずに振り回されてしまったが、今度は自分の立場を守らなければならない。では、自分の立場を守るにはどうすれば良いか…。
「決めた、働こ。」
こうして自分の立場を守るため、私は働くことを決心する。
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