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11.その後
しおりを挟む**二年後**
「誓いますか?」
「「誓います」」
私とレイン君は王都から少し離れた国境近くの町に移動し、今日、結婚した。
「おめでとう!」
「副団長おめでとうございます!」
「お幸せに!」
恥ずかしいけど、嬉しくて。なんか変な気持ちだな。
お父さんやお母さん、生意気で要領のいい弟、友達。
皆、元気かな。
特別に綺麗にしてもらったし、見てもらいたかったなんて思ってしまう。
きっと死ぬまで、死んでからも帰りたい気持ちは残っている。
でも、今日から夫婦、家族が出来たんだ。
なんか、満たされている。
前よりは寂しくない。
「美味そう!」
「この花の形、食べれるの?!」
部屋を借りるのもなと青空の中、広間で立食パーティーにした結果、かなり規模が大きくなってしまった。
だけど、皆が楽しそうで私も嬉しさが増していく。
「やぁ、おめでとう」
大量に用意した食事やお酒、食後のお菓子を皆が飲み食べ始めた頃、一人の男性に声をかけられた。
「二つ手に入れようとして両方を逃すとは惜しい事をしなぁ」
「そうですか。それより、そのきらきらを抑えて頂けませんか?」
「きらきら?」
「いえ、もう不可能なのは分かっています」
きっと王子様に気配を消せと言う方が無理なのよ。
「ルーカス殿下?招待した覚えはないのですが」
そこに本日、夫となった今は辺境の地で副団長になったレインが現れた。
「呼ばれないから来たよ。しかし、招待状は送って欲しかったなぁ。グラニー家の当主には実力がなければなれなかったろうけど機会をあげたのは私なのに」
確かに。
あの住み込み事件から色々あった。都心は便利が良いけど忙しなくて。
疲れてしまった私は、田舎に引っ越す事にしたんだけど、レインさんもついてくる事になって。その頃には、お互いが良いパートナーにもなっていた。
「ある程度の地位が欲しいって言うから何事かと思えば大事な人を守りたいとは。無表情、無感情人間が成長して涙ものだね」
「水を差しにいらしたなら早く城に戻って下さい」
「つれないなぁ」
レインは、ちょっと変な加護持ちの私を心配して辺境の地を収める二つの家のうちの一つ、グラニー家の養子となり、いまや当主である。
辺境の地は、戦火となれば重要な場所になる。私が、普通の人だったら彼と飯屋をしていただろうかとふと考える時もある。
「ナオ、後で孤児院にも寄ろう。きっと君の菓子を楽しみにしているだろうから」
優しい視線が私を見下ろしてきた。
「そうだね。喜ぶかな」
「勿論」
「試作品も持っていこうかな」
「良いですね」
流石に飯屋は店じまいをしたけれど、週に二回程、お菓子を簡易テントの下で販売しているのだ。
「特産品として日持ちする菓子は良い案よね。町の活性化にも繋がるし」
「なんか⋯⋯負けられないな」
「いや、勝負じゃないし」
私達、今日から夫婦よね?
「私の事、忘れてない?」
賑やかな声にルーカスの小さな言葉は消えていった。
***
「寒い?」
「いや、そうじゃないんだけど」
そして静まり返った夜、私は夫となったレインの前で毛布を体に巻いて立っていた。
「あの、私の選んだのではなく弟さんから貰ったんだけど」
「ヴァンから?」
レインの双子の弟であり、今は影ではなく表舞台に騎士として働いているチャラい人が、結婚祝いにとプレゼントを私宛に送ってきたのだ。
〃絶対にあいつの好みだから〃
そう書いてあったが、本当だろうか。
「ナオ」
珍しく焦れた声に私は諦めた。
「笑わないでよ」
巻いていた毛布を一気に外せば、スケスケパジャマの登場である。
いや、寝衣というらしいが。
色は白で肩は細いリボン結びの紐である。胸は上品なレースでギリギリ隠れているのはありがたい。下はミニスカートの長さで切り込みが片方にのみ入っており、しゃがめば確実に丸見えである。
ちなみに普段の私は長袖長ズボンでボタンをちゃんと留め、お腹を冷やさないパジャマである。
勇気を出したものの、案の定、目の前の夫はフリーズしていた。
いや、わかるよ。此方の方々に比べたら背もだけど、なによりお胸サイズ小さい私。
私にお色気担当は無理なのよ。
「あ、やっぱり着替えなお、ふぐっ」
な、何事?!
ベッドに腰掛けていたレインにぎゅうぎゅうに抱きしめられていた。
「…い」
ん?
「凄く…イイ」
え?
「アイツが選んだというのがとてつもなく気に入らないが」
腰に絡んだ腕が緩む中、彼を見下ろせば、バチリと目が合った。
「今度は…俺が選んだのを身に着けてもらえますか?」
「うん」
上気した顔で見つめられて、即答した自分に後悔する事になるのは、また後の話である。
~~END~~
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roko様
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