1 / 43
プロローグ
しおりを挟む
何かがひび割れたような音がした。
わたしが購買でミルクティーを買って教室に戻った時、成実と就也の表情は固まっていた。
「……? どしたの、ふたりとも」
さっき、夕焼けがさし込む廊下で遭遇した白昼夢みたいな出来事を話すのも忘れ、わたしは尋ねた。
ふたりは答えない。熱々のミルクティーの缶を握る手が、じんわりと汗をかく。
「羽鶴……」
成実が見開いた目でわたしを見ている。
色つきリップを塗った唇が震えて、まるでこの世にいるはずのない化け物を前にしているような。
「どしたのってば、成実。就也、何かあったの?」
就也が甘く整った顔を強ばらせて、無言でスマホの画面を見せてきた。
そこには、
【新世代声優育成企画・Arome CirCusプロジェクト
オーディション結果発表
1.ラベンダー役:……
2.ローズマリー役:……
……
13.ジュニパー役:小山内羽鶴(長野県プリューム養成所)】
二人と一緒に受けた、オーディションの結果があった。
わたしだけが合格していた。
手に入れてしまった、のだ。
声優になるという三人の夢の切符を、わたしだけが。
ゴトン、と勝手にミルクティーが手から離れて床に落ちた。
目の前のことが信じられなくて、わたしの口元が勝手に引きつった。
成実と就也は、依然わたしを見つめている。
その時に感じた、氷の針のような空気を。
その時に向けられた成実と就也の視線を。
わたしはおそらく、一生忘れないだろう。
頭の中で、何かがひび割れたような音が、……した。
わたしが購買でミルクティーを買って教室に戻った時、成実と就也の表情は固まっていた。
「……? どしたの、ふたりとも」
さっき、夕焼けがさし込む廊下で遭遇した白昼夢みたいな出来事を話すのも忘れ、わたしは尋ねた。
ふたりは答えない。熱々のミルクティーの缶を握る手が、じんわりと汗をかく。
「羽鶴……」
成実が見開いた目でわたしを見ている。
色つきリップを塗った唇が震えて、まるでこの世にいるはずのない化け物を前にしているような。
「どしたのってば、成実。就也、何かあったの?」
就也が甘く整った顔を強ばらせて、無言でスマホの画面を見せてきた。
そこには、
【新世代声優育成企画・Arome CirCusプロジェクト
オーディション結果発表
1.ラベンダー役:……
2.ローズマリー役:……
……
13.ジュニパー役:小山内羽鶴(長野県プリューム養成所)】
二人と一緒に受けた、オーディションの結果があった。
わたしだけが合格していた。
手に入れてしまった、のだ。
声優になるという三人の夢の切符を、わたしだけが。
ゴトン、と勝手にミルクティーが手から離れて床に落ちた。
目の前のことが信じられなくて、わたしの口元が勝手に引きつった。
成実と就也は、依然わたしを見つめている。
その時に感じた、氷の針のような空気を。
その時に向けられた成実と就也の視線を。
わたしはおそらく、一生忘れないだろう。
頭の中で、何かがひび割れたような音が、……した。
11
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
僕《わたし》は誰でしょう
紫音みけ🐾書籍発売中
青春
※第7回ライト文芸大賞にて奨励賞を受賞しました。応援してくださった皆様、ありがとうございました。
【あらすじ】
交通事故の後遺症で記憶喪失になってしまった女子高生・比良坂すずは、自分が女であることに違和感を抱く。
「自分はもともと男ではなかったか?」
事故後から男性寄りの思考になり、周囲とのギャップに悩む彼女は、次第に身に覚えのないはずの記憶を思い出し始める。まるで別人のものとしか思えないその記憶は、一体どこから来たのだろうか。
見知らぬ思い出をめぐる青春SF。
※表紙イラスト=ミカスケ様
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
付喪神狩
やまだごんた
キャラ文芸
古い道具には年月と共に人の情念が蓄積され、それが意思を持ったものが付喪神と呼ばれる。
容姿端麗だが口も性格も女癖も悪い大和御門は日本で唯一の付喪神狩として、付喪神を祓う能力者。
自分に取り憑いた大口真神を引き連れ、同居中の相方・棚橋亨と繰り広げる現代異能バトル
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
美味しいコーヒーの愉しみ方 Acidity and Bitterness
碧井夢夏
ライト文芸
<第五回ライト文芸大賞 最終選考・奨励賞>
住宅街とオフィスビルが共存するとある下町にある定食屋「まなべ」。
看板娘の利津(りつ)は毎日忙しくお店を手伝っている。
最近隣にできたコーヒーショップ「The Coffee Stand Natsu」。
どうやら、店長は有名なクリエイティブ・ディレクターで、脱サラして始めたお店らしく……?
神の舌を持つ定食屋の娘×クリエイティブ界の神と呼ばれた男 2人の出会いはやがて下町を変えていく――?
定食屋とコーヒーショップ、時々美容室、を中心に繰り広げられる出会いと挫折の物語。
過激表現はありませんが、重めの過去が出ることがあります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる