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第四章 日本の竜司から、世界の竜司へ

第62話 モテ期

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「機長です。ただいま、気流が不安定なため、シートベルトの着用をお願いいたします」
 エアポケットだったようだが、マイリの様子がおかしい。

「おい、マイリ。大丈夫か?」
「えっ、あっはい。あの時のことを、思いだしてしまって……」
 その言葉で理解をする。
 隕石の直撃。

「ああ、あれは一瞬だったからな」
 まだ震えるマイリの手を、上からそっと掴む。
 すると気がついたのだろう、その手に、もう一つの手も重ねてきて、嬉しそうに微笑む。

 横では、伶菜がむうという感じだが、さっきの会話は前世の話。
 当然入ってはいけないし、二人だけの共通情報に少し焼き餅を焼く。

 怪しい連中がうろうろしているが、対象の拉致が目的なので、爆破などは起きず無事に千歳に到着。

 そこから、五稜郭経由で函館へ向かう予定となっている。

 タワーがあり、そこの展望室から五稜郭を眺める。

 時間が切られているので、急ぎ足で、奉行所や土塁を見て回る。丁度桜は終わっていた。
 四月末から、五月初旬に見頃だそうだ。

「残念ね」
「流石の北海道でも、無理だったか」

 そんな時、まだ、勇者大石くんは、彩に話しかけていた。
「だからさあ、今晩函館の夜景を見るために、箱館山に登るだろ。あっもちろん元町の散策からでも良いけど。俺らの班と一緒に行動をしようぜ」

 それを聞いたのだろが、マイリがこそこそと俺に言ってくる。
「彼らは、男ばかりの様子。クラスで美女軍団と名高い、私たちが目的だったようですね」
 そう、他の男子連中からすれば、気にいらないのだろう。

 もう一グループ、美少女グループはあるのだが……
 神宮路かぐやが率いるグループは、元々偉い人の家系らしくて、少し近寄りにくい。
 構成員は、神宮路かぐやじんぐうじかぐやを筆頭に織戸由布紀おりと ゆうき久賀妃美子くがきみこ辺りは、同じような家系で、幼馴染み。
 それに、都賀風夏つが ふうか神馬悠月じんま ゆづき
 この二人は、護衛ではないかと言われている。

 そして、しつこく彩に言い寄っているのは、大石のグループ。
 原元辰はら もととき吉田兼貞よしだ かねさだ片岡高房かたおか たかふさ堀部武庸ほりべ たけつねと全員が身長百八十センチ近いスポーツマンの固まり。
 はっきり言って声はでかいし、奴らが来ると筋肉による代謝なのか暑い。

 それが、桜の散ってしまった土塁の上で、俺達のグループを挟む形になる。
 そう、俺達の後ろに、大石のグループ。
 正面からは、「桜が散って、残念でしたわね」などと言いながら、こっちへやって来る、神宮路達。

「あら、佐藤くん。こんにちは」
 神宮路から声がかかる。

 一般の高校生なら、コロッと落とされそうな笑顔。
 少したれ気味のアーモンド型の目。
 日本人に多い、ほっそりした輪郭をしたお嬢さん方の顔。
 百六十センチくらいの身長で、校則ギリギリのロングの髪。
 あまり主張はしないが、しっかりした胸。
 まあ、完璧と言える女の子。

 普通の男が、彼女と付き合い始めれば、彼女へのコンプレックスと、他の男に奪われるかも知れない不安。その辺りを、日々抱えて暮らさないといけないだろう。
 それが分かっているから、大石達も近付かないのだと思う。

 竜司の信者となった、ベルタ=スローンズ。
 彼女が、世話になっている姉妹。武内 沙耶と礼美は、神宮路家の関係者らしい。

 そして、お偉いさんの治療を行っていると、その界隈では有名となってくる。
 むろん手に入れようと、画策しようともする。

 多分じいさん連中が、考えたのだろう。クラスメイトなら都合が良い。
 の者は、おなごが好きなようじゃ、懇意にしなさい。とでも言われたのじゃないだろうか?

 彼女達は、急激に距離を詰めて来始めた。

「こんな所でお会いするとは、私たち、よほど深いえにしでもある様ですわ」
「いや、見学コースだし、周りの奴らは目に入らないのか?」
 むろん彼女は、竜司のそんな言葉は無視する。

 そんな時、背中側で彩が珍しく否定の声を上げる。

「私たちは、好きで竜ちゃんと一緒に居るの。放っといて」
 そう言って、俺の背中側に走り込んでくる。

「ちっ。いくぞ」
 そう言って、大石達は踵を返す。

「どうしたんだ?」
「ううん? 何でもない」
 そう言いながら、人の背中に頬を当て、スリスリとマーキングをしている彩。

「あっ。そうそう、今晩函館の夜景見物があるのですって。楽しみね。それでは、又後で」
 神宮路達は、そう言ってすれ違う。

 その中で、神馬悠月と目が合う。
 鋭く、その心は何処までも安定。
 刃の下に心を置く。そんな雰囲気を感じる。
 ペコッと頭を下げて、すれ違っていく。

 神馬悠月は、その対象をまじまじと見た。
 彼を含めて、その一団は、普段でも何か力を発しており、下手に近付くことが出来ない。

 だが今は、至近距離でまみえる事ができた。

「あれが、佐藤竜司。恐ろしい」

 悠月は本気で、おじいさんに命令された。
「悠月。のものと懇意になり、必要なら力を使い、目合まぐわえ」
「はっ? おじいさま。今、なんと?」
 そう聞き返すと、じいさんは、報告書と写真を出してくる。

「こやつの調査資料だ。目を通せ」
 そこに書かれていたことは、本当に信じられない内容だった。
 前世が宇宙人。
 現在でも関わりがあり、大気圏外に宇宙船を停泊させている。

 宇宙船の内部写真。
 そこで笑う彼と、見知った顔。
 そして、上半身裸で、見事な翼を広げて、それを輝かせている彼。

 笑いながら、引っくり返った戦車の前に佇む彼。

 すでに日本では、超重要人物として保護対象。
 彼の力は、万病を治療できる。
 重篤な遺伝子疾患まで。

「理解したか。来週から一緒に寝泊まりをするのだろう。力を尽くせ」
「はい」
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