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第二章 接近遭遇、そして、いきなりコンタクト

第7話 ねこ? ふーん

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 見知ったダンジョン。

 本国においても、研修で幾度も入った事がある。
「中は同じですね」
「若いから、洞窟型か」
 そう言って、彼らが周囲を見回していると、光希は一気に走り始める。

「やばい。付いていけ。身体強化」
「おう」
 だが、光希は、床を走らない。

 曲がりくねった道を、壁や天井を走りながら、「だれ?」と言わんばかりに、顔を出したゴブリン達が破裂していく。
「この速度で、魔法を撃って、この正確さ」
 だが、驚くのはそこからだった。
 ワンフロア、五キロほど。

 それを、四分程度で駆け抜ける。
 おおよそ、時速八十キロくらい。

 当然。一フロアすら、ついて行けない。
 一人、身体能力の違いから、シーヴのみ付いていく。
「猫系獣人は伊達じゃない」
 そんな事を、叫びながら……
 それは、気合いを入れる、魂の叫び。

「何だよ、ひ弱だな。八百年だか、経っているから期待をしたのに」
 そんな事を言われる始末。

「あんた達、もっと、気合いを……」
「まて。理解はしても、体が……」

 壁を走行中に、クリームヒルデが、躓き落下する。
 それを見て、つい手を伸ばしたユーディットが、天井で躓く。

「うおお、ユーディットぉ」
 
 フィリップが声をかけるが、ものすごいスピードで、二人は転がっていく。

「ちっ。仕方ねえなあ」
 光希が戻ってきて、浄化と治療を行う。
 むろん変に方向へ曲がっていた手や足は、泣こうがわめこうが、一瞬でまともな方向へ戻される。

「行くぞ」
 そう言って、今度は床を走って、たまに壁を走るくらいに落ち着いた。

 だがそれは、十層くらい続いた。

 そして、浅いが階一つで、大きくモンスターが変わる。
 それは、若いダンジョンの特徴。

 古ければ深く、モンスターの変化もなだらか。
 だが十階で、すでに、超巨体が現れる。
「さっきミノタウロスだったのに、もうベヒーモスが」

「おう、倒してみるか?」
 そう聞かれるが、答えが出せない。
 せっかくの勇者のお誘い。
 だが嬉しくない。

「いえ。お願いいたします」
「そうか」
 そう言って、頭を殴り、顎が跳ね返り地面から浮き上がるときに、下からパンチが顎先へとさらに突き刺さる。

 前足が浮き上がる。
 その時に、胸へとパンチ一閃。
 魔石がはじける、小気味よいパキッという音が聞こえる。

 それだけ。
 とんでもない短時間で、ベヒーモスが死んでしまう。
「何という強さだ。年は召したが、衰えがない」

 一同は、驚く。

 そしてさらに驚くことになる。
 いきなり拘束をされる。

「おい。シーヴだったな。強くなりたいか?」
「えっ。あっはい」
「ちょっとこっちへ来い」
「えっ。まだ現役。えとっ。心の準備が……」
「何をぐだぐだと。こっちだ」
 フロアの奥へ、連れて行かれる。

「秘密だからな。黙っとけよ」
 いきなり、不破壊はずだが、ダンジョンの壁が壊される。
「えっ?」
「秘密だぞ」
 そう言って、引っ張り込まれる。

 お付きの者達は、きっちり拘束をされている。
「ああ、大使がやられてしまう」
「いや命令なら、仲良くなれだから良いんじゃ無いの?」
「そういう命令か?」

 そんな事を言っていると、破壊されて突然現れた隠し部屋。
 そこから、いよいよもって怪しい声が聞こえ始める。

 そう。内緒にしようと決めた、一子相伝がもう破られた。
 クリスタルを取り込み、呻き回るシーヴ。

 本人は体がバラバラにされ、再構築をされる痛みと苦しみ。それと闘っている。
 だが余所で聞くと、とても人に言えないことをしている声に聞こえる。

「わー、そんなにすごいんだ」
 ソフィーやクリームヒルデ。ロッタがもじもじし始める。
 そして、ユーディットとフィリップは体の一部が反応してしまう。
 拘束されていて動けないのに、ぽっこりと目立つ。


 学校から帰ってきた、息吹。
「あれ? じいちゃんは」
「さあ、見ていませんよ?」
 母親にそう言われて、外を見に行く。
「掘りに行ったかな?」
 杏のことを聞こうと、昨日言っていた目的のダンジョンへ飛び込んでいく。


 そして最下層の十階までくると、ボスは倒され、例のお付きの人たちが立っている。
 そして、奥から、悩ましい声。
「ああ。じいちゃん与えたのか」
 知らない者が聞いたら誤解するような、台詞を吐き奥へと進む。

 皆は、覗いていいの? と考える。
 それと同時に、一人で来た息吹に驚く。

「じいちゃん。内緒にするって言っていなかったか?」
「おう来たのか? 復活にはまだかかるだろうから、担いで行ってくれ。わしじゃあ、ばあさんに焼き餅を焼かれるからの」
 まあ見た感じ、事後だな。

 彼女は、べったりと汗をかき。
 髪の毛が、頬に張り付いている。
 目は潤み、顔は赤く。
 息をするのが、やっとという感じ。
 うーん確かに。色っぽい。

 息吹はひょいっと、シーヴを背中に負う。
「じゃあ、帰ろうか」
 そう言って外に出る。

 立っていた連中は、シーヴの顔を見た瞬間、なんだか目をそらす。
 バインドを解除してやり、出口へ向けて走り出す。

 彼らは、すぐ後を追いかけてきたが、追いつけない。
 じいちゃんにもすぐ抜かれた。

「何で、光希様は別としても、シーヴを背負った息吹様まで……」

 そうして、一足先に外へ出て、家に近付くと、杏が立っていた。
「おう、どうした。まだ、じいちゃんには聞いていないぞ」
 そう聞いても、目が細く睨んでいる。

「ねえ。飼っている猫って、もしかして、それ?」
「ああ。そうそう。今ちょっと体調が悪くて」
「ふーん? 彼女がいたんだ……」
「彼女? 違うよ」
「じゃあ、遊びなんだぁ」
 言葉を重ねるたびに、杏の様子がおかしくなっていく。
 髪の毛が逆立ち、そう。修羅と呼べば良いだろうか……
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