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第三章 復旧への進め

第11話 町長達との密談

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「――と言う事で、会いに行って大丈夫か?」

「まあ、どちらにしろ進展させるには、それが良いかも。本国からは何も返信がないし」
「じゃあ。シーヴに忠告だ。語尾にニャを付けると、話が進みやすい」
 そう言うと、変な顔をされる。

 そして、本立てに向かい指をさす。
「この辺り。この異世界転生何ちゃらの、猫系獣人がこびを売るためと書いてある。これを私にしろと……」
 そう言って、じっとり睨んでくる。

「かわいいと思ったのに……」
 俺がそう言って、じっとりと見つめる。
 そう言うと、少し驚いた顔になる。

「そうか? でも、だからと言って、私がそんな事をすると、本国からの移住が、その…… 本格的になると、獣人系はみんなそんな言葉を、使わねばいけなくなるじゃ無いか……」
 シーヴの頬に、そっと掌を当てる。

「違う。君だから良いんだ」
 そう言って、見つめあう。

 そこに割り込む杏。
「だー。私の前でいちゃつくな」
「えー。シーヴってば、何でも信じるから面白いのに」
「悪いことをしないで、教えたことが地球での基準になるんでしょ」
「そう…… にゃ。なるん…… にゃ」
 真っ赤な顔をして…… 

「なんて、かわいいんだぁ」
 そう言っていると、杏が対抗をする。

「私だって、その位…… いえるにゃ」
 何時のか分からないが、猫耳カチューシャが頭にくっ付いている。
 あーいや。昔、夏祭りで勝った奴。
 だけど、何で俺の部屋に……
 杏がする、にゃんこの、手つき。
 意外とかわいい。

 つい頭をなでる。
「へっ。えへっ」
 杏が真っ赤になってしまった。

 なんか性格変わったな。

 そう、この前から妙に素直になった。


 その後、学校に集まる。
 むろん夜だ。

 学校には、今だに電気が来ていない。
 そのため、魔導具を借りた。

「おお、これは素晴らしい」
 ぽつんと教室の四隅に置かれただけで、教室全体が明るくなる。

 町長さん達、ご満悦。

 ここに集まったのは、校長 中村 武司なかむら たけし、先生 鈴木 啓二すずき けいじ、町長 黒川 数弘くろかわ かずひろ、職員 町野 要人まちの かなめ、議員さんA 藪野 渉やぶの わたる、議員さんB 兼目 好夫かねめ よしお

 対して俺とじいちゃん。
 シーヴと、いつもの五人衆。
 なぜか俺が紹介をする。

「こちらが、惑星ファジェーエヴァ。中央政府マグナコーキ特任大使、シーヴ=マリア=リナ=ヘイディーン様と、行政官…… 一応自己紹介をして」
 そう言って促す。決して覚えて…… 覚えられるかぁ。長いんだよ名前が。

「行政官、ユーディット=テクラ=イリーネ=ヴェルターです」
「同じく、フィリップ=ルーペルト=ルンドです」
「ソフィー=マルチェ=ペトラ=デ=コークです」
「クリームヒルデ=レオニー=ヘルツベルク」
「ロッタ=ソイントゥ=リュオサ」

 とまあ、紹介をする。
「日本語が分かるのかね」
「ええ魔導具を使用しています。地球側の言語は学習はさせています」

 ユーディットが、キリッと答える。
「それで、いきなりで悪いが、こちらでも地球の現在状況が分かっておらん。教えてくれるかね」
 町長にそう聞かれて、ユーディットが困った顔をしてくる。

「仕方ない。町民にしらすかどうかは、町長の判断だが、いずれは知ることだ。出してやれ」
 じいちゃんが命令をする。

「はっ、モニター投影します」
 スクリーンではなく、空中に画が出る。

「これが、この二十四時間の状態です。夜間部分は暗く。復旧が行われていません」
 昔見た衛星情報とちがい、夜の部分は真っ暗だ。

 そして、時間が進み、地球全体が明るくなると、穴だらけ。

 そう俺達が見て、ショックを受けた光景。
「これはひどい」
「世界中の主要都市がなくなっている」
 これを言ったのは先生。
 他の人たちは、東京くらいは分かるが、地理的なもの覚えていないんじゃないか? 反応が薄い。

 職員の町野さんが聞いてくる。
「このクレータの所、生存者の有無は分かりますか?」
 地図上に、生命体の分布が光点となって表示される。

「これは……」
 そう、クレーターの外周まで、生命反応はない。

「モンスターの分布は?」
 すると今度は、クレーターの外周が濃い。
「やっぱりな」
 じいちゃんが一人納得をする。

「モンスターが多いのは、落下した物質のせいですか?」
 町野さんは、気がついたようだ。

「落としたのは魔結晶だな?」
「そうです」
「魔結晶?」
 町野さんに聞かれ、じいちゃんがペラペラとしゃべる。

「魔結晶というのは、魔素の固まりだ。これによって地球上に魔素が振りまかれ、モンスターが発生している。このクレーターの周囲は、魔素が多いからダンジョンと同じで、いるのはもどきだろうが、数が多い。面倒だな」
 じいちゃんがそう言うと、ユーディットががあわてる。

「駆除は、無人の戦闘システムで対応します」
 そう言うと、じいちゃんの目が光る。
「ほう、近頃はそんな便利なものがあるのか。なら任せよう」
「ありがとうございます」

 そう言っていると、議員から手が上がる。
「先ずは、インフラを立て直したいが、良いものはないかね?」
 そう言って、教室の四隅にある魔導具をちらっと見る。

「そうですね。いくつか役に立ちそうな魔導具を、お持ちしました」
 そう言って、色々な道具がポケット、いや亜空間収納庫から取り出される。
 それを見て、議員さんの目が、怪しく光る……
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