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第2章 周辺国との和解へ向けて

第16話 奴らが来る

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 その頃。思ったように情報が取れず。
 業を煮やした、オリエンテム王国。

 大量に木の盾をくっ付けた台車を準備して、王都を出発する。
「我が国が、舐められるわけにはいかん」
「そうでございます。我が国は強国。それを、パリブス王国滅亡を持って、この大陸。コンティニアス大陸の諸国に知らしめる。その後。覇を唱える。王のお考えを実現いたしましょう」

 会話をしているのは、王と今回の出兵責任者。
 セレスティノ=モンストシニョス侯爵。
 何よりも、戦が好きな困った御仁。

 物々しくも盛大に、今回は八千もの兵を動員をした。



 その頃。
 パリブス王国の王都パロプンテでは、盛大に新部隊のお披露目が行われていた。
 だが市民からは、驚きと恐れがにじみ出る。

 緑色と土色。迷彩色の巨大な兵達が、動くたびにパシューと音を上げる。

 巨大なハルバード。
 赤く光るギミック。
 一見。目のようだが、単なるライト。夜間も安全。
 目は、黒いパンチ穴のメッシュ、その隙間から覗いている。
 コンセプトは、男のロマン。

「新機動部隊を創設。第一弾として気導鉄騎兵団を本日より運用開始。第二弾は未定だが、戦車部隊と名は決まっておる様だ。この姿、民は恐れているようだが、同様に敵も恐れてくれるだろう。彼らに出会えば殲滅される。その事を盛大に触れ回って良いぞ」

 軍務卿ガブリエル=オリバレスが、部隊を盛大に紹介をするのは、間者達に対してのアピール。
 ここにも、盛大に潜んでいるのだろう。

 持っている巨大なハルバードを軽快に横へ一薙ぎ。一足飛びに前進をする。

 足の裏と、背中のランドセル。両側から加速時に少しだけ空気を噴出する。
 改良をしたが、それでも、タンク容量の半分を使う。
 普段は使えないが、今回のデモンストレーションのために、兵達は半日練習をした。およそ二メートルの距離を、一瞬で詰める事が出来る。

 そう言っている間に、視界の中で幾人か、血相を変えて移動を始める者達がいる。
 むろん、それを追いかける奴も。追いかけるのは当然。此方の部隊だ。

「何だあれは。やばい。もう本国から、部隊の本隊は出発をしたはず。伝えなくては」
 オリエンテム王国は、大量の部隊を放っていた。
 横の情報は基本取っていないため、あわてた連中が、一斉に行動を起こす様は滑稽でもある。

「あれ全部、オリエンテムだな。捕まえろ」
 通信兵は、初期的なモールスを送る。ただ、あらかじめ決められた命令は書類として流されており、それに該当する短点と長点を無音を三秒入れて、三度繰り返す。
 本物と違うのは、モールス符号を誰も覚えていなかったから。

 構造は、電気のスイッチを繋いだり切ったりする電磁波? ノイズ発生器。近所で電子機器を使っていれば、クレームの嵐だろうが、ここにはない。確かこんな感じと言って作ったら繋がったので、スピーカーを作るついでに実用化をした。まあ、ノイズ混じりの電波を出して切ってを繰り返すだけの、体にも悪そうな物体。
 距離も短いし、今ならのろしの方が早い。
 その内、振幅変調とか周波数変調の無線機を、誰かが考えてくれるだろう。


「さて、聞こうか? お前達は、オリエンテムの者達だなぁ」
 捕まった彼らは、微妙に距離を開けた部屋に分けられた。
 何故か、黒い全身タイツを着せられて、椅子に縛り付けられている。
 様式美だそうだ。

「良い情報をくれたものは、金を与え釈放も考えている。早いもの順だがな。先着三名にしよう。しゃべる気になったら、手に持っている紐を引けば、鐘が鳴るようになっている。いいな。先着順だ……」

 そう言って、兵は部屋を出る。この兵達は拷問のプロ。

「本当に、こんな事でよろしいのでしょうか? 彼らは訓練を積んだ者達。拷問をしても、なかなか情報を吐きませんが」
 初めてのことに、不安そうな彼ら。

「うんまあ。駄目なら別の手を考えよう。我らミステリー研の名にかけて」
「ええ、そうね。我らミステリー研の名にかけて。何とかするわ」
 ビシッと台詞を吐き、練習をしたかのように、そろった動きで、めがねがくいっとあげられる。

 戦隊物の様に、そろった五人。
 山本 秀明、佐藤 秀夫、武田 彩、佐々木 慶子、渡邉 洋子。
 ここでは、山本秀明と佐々木 慶子が部長と副部長を名乗り、此方へ来てからは普段は、執筆を行っている。
 捕虜を捕まえるという話を聞き、実録だわ。そう言って、取材と知識の検証にやって来た。

 そして捕虜達、各(おのおの)が意地とプライドをかけて頑張る中。一回目の鐘が鳴る。
「なっ」
 思わず声が出る。

 むろんこの鐘は、秀明達が相談をして鳴らしたもの。
「はい。これを読んで」
 兵に手渡されるメモ。

「あーはい。なに? それは本当か? ――ふあっ、はっはっは、残念だが、その情報が本当なのは知っておる。我が国でも情報を捉えておるからな。正直なのは認めよう。だが…… 放免をするのなら、もっと有意義な情報が良いな。残念だが、あと三回のままだ。早い者勝ちだぞぉ。――これでよろしいのでしょうか?」
「大根ね」
「大根だな」
「もっと自然に読めないのかしら?」
 何故か、めがねのレンズが、白く光る。

「はあ。自然にですか。頑張ります」

 だが、この世界では、効果がてきめんであった。
 くそう。自分だけが逃れようと。
 次々に、鐘が鳴り始める。

 王国の中で、ミステリー研の名が、一気に有名になった伝説の始まりであった。
 何故か小説は、情報収集の指南書と、犯罪の傾向と対策。その基本的考え方として配布されることになる。
 残念な事に、一般へは配布が禁止されて、ベストセラーにはならなかった。

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