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第2章 周辺国との和解へ向けて
第38話 些細なミス
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「神野殿。だめです。損害賠償」
言われて気がついた。
「あーそうだな、今回の出兵の経費と、これまでにうちの防衛にかかった費用。それと我が国の兵なへどの見舞金。それとそちらの間者が、身内を殺した。その分の慰謝料も必要だ」
「「「なっ」」」
「「「ぬうう」」」
会議室内に、とどよめきが広がる。
「もう少し、お待ちくだされ。それと、神野侯爵でしたな。ご結婚はされておられますか?」
場を仕切っている、公爵のじじいが聞いてきた。
「いや、まだ一八、いや一九か? まだそんな歳だし、独身だ」
素直な俺は、ぽろっと答えてしまう。
分かっていたのに。そんなことを言えばどうなるのか。
横で、トルスティ=クレーモラ伯爵も頭をかかえる。
「ほう。それは良きこと」
ペール=オーラ=ラーシャルード公爵と言う、じじいの目が光る。
そしてちらっと、側室であるセシーリア=クルームの方をみる。
会議は、紆余曲折をして、最終的に王子へと決まった。
だが、その前に。ラーシャルード公爵が、伝言ゲームのように耳打ちをしていたのが気になる。
そして何故か、セシーリアさんが、ニコニコしているのも気になる。
その後、思いだしたように、クレーモラ伯爵が、王から預かっていた親書を俺に見せてくる。
こいつが持っているという事は、その後二回、いや三回は王に会ったぞ。
親書は俺宛。
『貴殿がこれを読んでいるという事は、戦いに勝利をしたことであろう。おめでとう。さて、全権は委任をするから、我が国への手出しについて。それと賠償するように伝えてくれ。むろん貴殿の、友人の分も請求をするが良い。そして、勝手に派兵をした非礼とそなた達を、利用することをわびておく。残念だが、わしは…… どうしても怖かった。あの強力な武器が敵に回った時のことを考えると、眠れなかったのじゃ。ディオーナも、わしが夜中にうなされておったと申しておる。許せ。インフィルマ=パリブス』
「なんだか、中途半端な手紙だな? それに、インフィルマ様が、うなされていたと言っておるって、ねているんじゃないか? まあ、眠りの質はどうか知らんが」
「王はなんと?」
「いや、向こうに伝える内容と、勝手に派兵したことの詫びだな」
それだけで、伯爵は納得をしたようだ。
伯爵も、実は恐れていた。
勝手に派兵をして、敵に武器の鹵獲が発生した場合。此方に不利となる。
中に入って居る、火薬とか言う薬剤は、簡単には作れないとは言っていたが、それでも、裕樹に叱られるだろうと。
だが、出会った瞬間。裕樹は、味方に怪我がないことを安堵してくれた。
我らが手にした銃。
そう、銃に対して、我らが恐れるほどの脅威さを、裕樹は感じていない。
裕樹達にとっては、銃も剣も等しく同じなのだろう。
その事を、説明された。
確かに怖いが、あたらなければ同じだし、装弾数にも限りがある。
機械だから、詰まりもするし、不発もある。
必要以上に恐れなくて良い。
だが、敵に人質を取られた場合、簡単に助けに行くな。
それだけを、念押しをして教えられた。
目立つ小銃をおとりにして、近寄ってくれば、腰のホルスターから拳銃を出し撃てば良い。
「何かを拾うときに、どこかで視線は外れる」
日本という国は、平和でいい国だと口々に言っているが、そこから出てくる知恵はすべて物騒で残虐だ。
毒ガスに細菌兵器? 混ぜたら危険? よく分からないが、他にも感電だとか爆発? フラグに大滑り? とにかく、いくらでも出てくる。
「おい、伯爵。大丈夫か?」
会議中に、考え込んでいたようだ。
「あっはい。大丈夫です」
「とりあえず、話は付いたようだから、明日には帰ろう」
「そうですな。気導鉄騎兵団で今回隊長をしていた、アードリアン=ユルゲンス伯爵を管理官として、付けておきましょうか」
「そうだな、背中を撃たれちゃかなわないが、連絡は入れたから、すぐに誰かが来るのだろ」
「そうですね。今の状態だと属国と言っても通りそうな、感じですね。信用できる人間を据えないと、火種になりそうですな」
ふむ。
そう言えば、この国。
近衛から始まって、王の側近連中。
それに、王都の守備隊。
少数を残して、死に絶えたからな。
やり過ぎた、きらいもあるが、仕方が無い。
そうして、部屋で休んでいると、ノックをされる。
ドアの脇に隠れ、銃を抜きセーフティを外して返事をする。
「入れ」
「失礼いたします」
先に女性。
その後ろに王女。
その後兵が、此方に向いて顔を出す。
「お二人が、ご用事があるそうです。ごゆっくり。あっ廊下は異常ありませんし、少し離れていきますね」
そう言って、ニヤけた顔を引っ込める。
髪を下ろしていて、よく分からなかったが、王妃さん。じゃない側室さんだな。
なんだか俺が握っている銃を、不思議そうに見ている。
「ああ、すみません。どうぞ、お茶でも入れましょう」
そう言って、テーブルに着かせる。
側室さん。セシーリアさんだったな。
「どうぞ」
紅茶のストレート。
娘にも出す。此方は、興味芯々で周囲を見ている。
ああ、そう言えば。
非常食になるからと、美咲達が持たせてくれたクッキーがある。
「ご飯がないときには、クッキーよ」
そう言って。
女の人に食わすだなんて、叱られるかもだが、仕方が無い。
こんな事は、考えていなかった。
大体、二人だけ入れて、兵も付いていないって何だよ。
双方共に物騒だろ。
そんなことを思っていると、婦人が口を開く。
言われて気がついた。
「あーそうだな、今回の出兵の経費と、これまでにうちの防衛にかかった費用。それと我が国の兵なへどの見舞金。それとそちらの間者が、身内を殺した。その分の慰謝料も必要だ」
「「「なっ」」」
「「「ぬうう」」」
会議室内に、とどよめきが広がる。
「もう少し、お待ちくだされ。それと、神野侯爵でしたな。ご結婚はされておられますか?」
場を仕切っている、公爵のじじいが聞いてきた。
「いや、まだ一八、いや一九か? まだそんな歳だし、独身だ」
素直な俺は、ぽろっと答えてしまう。
分かっていたのに。そんなことを言えばどうなるのか。
横で、トルスティ=クレーモラ伯爵も頭をかかえる。
「ほう。それは良きこと」
ペール=オーラ=ラーシャルード公爵と言う、じじいの目が光る。
そしてちらっと、側室であるセシーリア=クルームの方をみる。
会議は、紆余曲折をして、最終的に王子へと決まった。
だが、その前に。ラーシャルード公爵が、伝言ゲームのように耳打ちをしていたのが気になる。
そして何故か、セシーリアさんが、ニコニコしているのも気になる。
その後、思いだしたように、クレーモラ伯爵が、王から預かっていた親書を俺に見せてくる。
こいつが持っているという事は、その後二回、いや三回は王に会ったぞ。
親書は俺宛。
『貴殿がこれを読んでいるという事は、戦いに勝利をしたことであろう。おめでとう。さて、全権は委任をするから、我が国への手出しについて。それと賠償するように伝えてくれ。むろん貴殿の、友人の分も請求をするが良い。そして、勝手に派兵をした非礼とそなた達を、利用することをわびておく。残念だが、わしは…… どうしても怖かった。あの強力な武器が敵に回った時のことを考えると、眠れなかったのじゃ。ディオーナも、わしが夜中にうなされておったと申しておる。許せ。インフィルマ=パリブス』
「なんだか、中途半端な手紙だな? それに、インフィルマ様が、うなされていたと言っておるって、ねているんじゃないか? まあ、眠りの質はどうか知らんが」
「王はなんと?」
「いや、向こうに伝える内容と、勝手に派兵したことの詫びだな」
それだけで、伯爵は納得をしたようだ。
伯爵も、実は恐れていた。
勝手に派兵をして、敵に武器の鹵獲が発生した場合。此方に不利となる。
中に入って居る、火薬とか言う薬剤は、簡単には作れないとは言っていたが、それでも、裕樹に叱られるだろうと。
だが、出会った瞬間。裕樹は、味方に怪我がないことを安堵してくれた。
我らが手にした銃。
そう、銃に対して、我らが恐れるほどの脅威さを、裕樹は感じていない。
裕樹達にとっては、銃も剣も等しく同じなのだろう。
その事を、説明された。
確かに怖いが、あたらなければ同じだし、装弾数にも限りがある。
機械だから、詰まりもするし、不発もある。
必要以上に恐れなくて良い。
だが、敵に人質を取られた場合、簡単に助けに行くな。
それだけを、念押しをして教えられた。
目立つ小銃をおとりにして、近寄ってくれば、腰のホルスターから拳銃を出し撃てば良い。
「何かを拾うときに、どこかで視線は外れる」
日本という国は、平和でいい国だと口々に言っているが、そこから出てくる知恵はすべて物騒で残虐だ。
毒ガスに細菌兵器? 混ぜたら危険? よく分からないが、他にも感電だとか爆発? フラグに大滑り? とにかく、いくらでも出てくる。
「おい、伯爵。大丈夫か?」
会議中に、考え込んでいたようだ。
「あっはい。大丈夫です」
「とりあえず、話は付いたようだから、明日には帰ろう」
「そうですな。気導鉄騎兵団で今回隊長をしていた、アードリアン=ユルゲンス伯爵を管理官として、付けておきましょうか」
「そうだな、背中を撃たれちゃかなわないが、連絡は入れたから、すぐに誰かが来るのだろ」
「そうですね。今の状態だと属国と言っても通りそうな、感じですね。信用できる人間を据えないと、火種になりそうですな」
ふむ。
そう言えば、この国。
近衛から始まって、王の側近連中。
それに、王都の守備隊。
少数を残して、死に絶えたからな。
やり過ぎた、きらいもあるが、仕方が無い。
そうして、部屋で休んでいると、ノックをされる。
ドアの脇に隠れ、銃を抜きセーフティを外して返事をする。
「入れ」
「失礼いたします」
先に女性。
その後ろに王女。
その後兵が、此方に向いて顔を出す。
「お二人が、ご用事があるそうです。ごゆっくり。あっ廊下は異常ありませんし、少し離れていきますね」
そう言って、ニヤけた顔を引っ込める。
髪を下ろしていて、よく分からなかったが、王妃さん。じゃない側室さんだな。
なんだか俺が握っている銃を、不思議そうに見ている。
「ああ、すみません。どうぞ、お茶でも入れましょう」
そう言って、テーブルに着かせる。
側室さん。セシーリアさんだったな。
「どうぞ」
紅茶のストレート。
娘にも出す。此方は、興味芯々で周囲を見ている。
ああ、そう言えば。
非常食になるからと、美咲達が持たせてくれたクッキーがある。
「ご飯がないときには、クッキーよ」
そう言って。
女の人に食わすだなんて、叱られるかもだが、仕方が無い。
こんな事は、考えていなかった。
大体、二人だけ入れて、兵も付いていないって何だよ。
双方共に物騒だろ。
そんなことを思っていると、婦人が口を開く。
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