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第1章 壊された生活と異世界の村

第45話 改装工事と弟子たち

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 佐藤さんが言ったように、トイレはすごかった。

 風呂場の横にあったが、板が張られていて。
 その真ん中に、一枚分の隙間がある。

 片側の端に、斜めに板が刺さっている。
 するときは、あれに当てて、下に埋めてあるツボから、外に向けて外れないようにしてあるんだ。

 上から見る。
 下に、半分ほど埋まった。でかいツボがある。
 長く住んでいなかったのか。中には、何も入っていない。

「さて」
 佐藤さんが、そう言うと。
 ツボが、さらさらと砂になり。
 地面も埋まっていく?
 どこから、土が来たんだ?

「この土は、どこから来たんですか」
 まるで逆再生の様に、目の前で埋まっていく。
 穴を。土が埋めていく。
 見ていると、ポコッと。100Φ程度のパイプが、飛び出して来た。
「おおっ? このパイプは?」

「近くの地下に、汚水処理場を作ってあるんだ。バクテリアと妖精の共同作業で、まあ魔道具も使ってはいるのだけれど。バクテリアさんが、有機物が大好物でね。どんどん食べて、浄化をするんだよ。もともとは、この村から、西に湿原があったんだけど。……今は俺が改造して、大規模農場にしちゃった。
 まあ話がそれたが、バクテリアさん。そこで暮らしていて、なかなか強力なモンスターだった。でも、実は集合して。一つになっていただけで、小さなバクテリアの集合体だったんだ。スライムという、モンスターを知っているかい」

「ああはい」
「見つけたときは、そんな見た目だった。俺の電撃で弱っていたけれど。いろんなものを溶かしながら、移動していたのに気が付いてね。それで、妖精に通訳してもらって、お仕事を頼んだんだ。本来は、光に弱いので、地下に浄化プラントを作ることになった。そこまで、このパイプは繋がっている」

 そう話している間に、家の床面より100mm程度。高い所まで立ち上がった。
「少し高くないですか?」
 質問をすると。
「床をこれから張るからね。これでいいんだよ」
 そういった瞬間。
 目の端に、際根太(きわねだ)が入る。それに根太が2本。大引きが2本。目の前に現れて、勝手に組みあわさる。いきなり目の前。何もない空間に木が出来上がるんだ。驚くよ。
 そこに、無垢の床板が組み合わさり、気が付けば床ができていた。


 家に上がって、内側からの作業。
 トイレのドアは、引き戸のままだが、修理をして、中に入る。

 天井に、佐藤さんが四角いプレートを取り付けて、魔力を通すと部屋が明るくなる。
「この辺りかな」
 佐藤さんがそう言うと、便器。それも洋式の便座が、下から順に育っていく。トラップもタンクも、どんどん出来上がり、便座の裏に、小さな魔石をはめ込むと、終了らしい。途中で入っていた、シート状の金属が魔道具なのだろう。
 でも現物合わせで便器も作るなら。寸法なんて、気にしなくて、よかったんじゃないかと思ったのは、内緒だ。

 そのあと、床を突き抜けて、生えてきた給水用パイプ。便器の横で、勝手につながる。

 何回見ても、不思議だ。


 あとは、廊下や各部屋の天井に、あかり用の魔道具を設置していく。
 この魔道具は、消えろと言って消えてから、魔力を与えると一段目が光り。
 さらに加えると2段目が光る。
 そうして、もう一段明るくすことができる。3段式となっている。

「一個一個だから。ごめんね。めんどうでしょう。
 一度にオンオフできれば、いいのだけれど、できなくてね」
 佐藤さんはそう言いながら、本当に、申し訳なさそうだ。

 それと、不思議な技。
 廊下を歩いていて、軋みに気が付く。
 佐藤さんが、ぐっと力を入れて、軋みの様子を確認。すると、床板に隙間が開き。少し明るく光る。
 
 そして、もう一度。
 当然、次には、軋みが無くなっている。
 きっと床下では、さっきの一瞬で、修復されているのだろう。
 根太が入れ替わり、必要なら大引きも。
 そんなことを気にして、じっくり見る。

 廊下の割れや、汚れが。佐藤さんが、移動するのに合わせて、修復されていっている。
 この人。本当に人間か?

 思わず、信二と顔を見合わせる。

 その後。家の中を一通り見て回り。高瀬さんに、確認をしてもらう。
 まだ、水が使えないから、何ともならないのだけれど。
 最後にベッドが欲しいと言われて、佐藤さんは一瞬で作っていた。

 本当に、何でもありだな。俺も、この人みたいに、なれるんだろうか? 自分の力を使って、仕事をする。
 それにより、人から感謝されるって、なんだか気持ちがいい。

 小中学校の時みたいに、勉強ができないと馬鹿にされて、腹が立つからしなかった。そしたら、余計にわからなくなった。
 でも魔法は、この世界でも。みんなが使えない。
 村長の話では、この村でも、使えるようになって、一年も経っていないということだ。よし決めた。

「佐藤さん」
「はい? なんだい、山村君」
「誠一と呼んでください。俺。弟子になります。魔法を教えてください」
 そうお願いしながら、頭を下げた。それを見て。
「おいずるいぞ。信二です。俺もお願いします」
 信二も一緒になって、頭を下げる。

「まあ実際。俺一人じゃあ色々困るから、弟子というか。覚えたいなら教えるけれど。まず。君たちに言っておきたい。それが守れないなら、話は無しだ。良いかな」
 俺たち二人は、頭を下げる。
 横で、高瀬さんが、ニコニコと聞いている。

「まず。魔法は力だ。まあ。ほかの道具でも一緒だけれど。使い方をミスすれば、自分を含めて、ケガや、ひどければ死ぬこと。無論殺すこともある。村のために。人を守るために。村を豊かにするために。そう誓えるなら、教えよう」

「はい。大丈夫です。悪さはしません」
「でもまあ、いいか。見ていて。ダメそうなら。僕が責任を取って。君たちを消すから。忘れないように」
 そう言って、にっこり笑いかける。
 その言葉で、俺たちは、引きつりながら、黙って頭を下げる。

 それを、横で聞いていて。高瀬さんもお願いしてくる。
「私も、お願いしていいかね。自己満足だが。人のために、何かをしたいと思う」
「いいですけれど。条件は一緒ですよ」
 高瀬さんは、こっくりと頷く。

「その方が、有難い」
 と、笑って言った。

 じゃあと、いうことで、順に手を取り魔力を流す。
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