世界は万華鏡でできている

兎杜唯人

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同じようで違う立ち位置。 3

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身を沈めていけば太いそれを飲み込んでいく。内壁をこすられ自重で普段よりも深くまで咥えてしまう。
リューイは根本まで入り切ったのを確認すればいったん呼吸を整える。ウィリディスの膝に手を置いてゆっくりと腰を持ち上げる。
入った時とは逆にカリ部分の出っ張りが離すまいと締め付ける壁をひっかく。孔の入口付近までカリが到達すれば再度リューイは腰を落として一気にウィリディスの熱を内部に招いた。

「---っ?!」

がくっと手から力が抜けた。体勢を崩したリューイを後ろからウィリディスの腕が支えた。
リューイを己にもたれるようにさせ荒く息をつく顔を見つめる。内壁はウィリディスの熱を締め付けてくる。
リューイの体を強く抱きしめて自分から精を搾りとろうとするかのような動きに耐える。

「せんせ…動きたい…」
「待て…今すぐには無理だ」

孔の入口はきつくウィリディスを締める。たまったものではない。
アルコールのせいでいつもよりも体は感じやすくリューイから漂うΩのフェロモンが効いている。
下が脱げているのをいいことにウィリディスはシャツの裾をまくり上げ肌をさらした。冷たい風が素肌にあたりリューイは体を震わせる。
自分の手は冷たくないだろうか、そんなことを考えつつウィリディスはリューイの胸元を触る。

「ゃ…せんせっ…つめたい…」
「知っている……ありきたりなセリフだが、お前に温めてもらおうか」

ない胸を揉み、先端の突起をつまめばリューイは声を上げた。
誰も聞こえるわけがないのに、自分の口を慌てて抑える。
スーツが汚れてしまうな、などと頭のどこかで冷静に考えるとリューイに己の熱を納めたままウィリディスは腰あげてスーツを脱ぐ。下着を脱ごうにもいったんリューイから抜かなければならないことを考えるとこのままでいいか、と思う。

「リューイ…動くぞ。いいんだな」
「…うん。俺も、動くから」

胸への刺激は止めずに己を引き抜く。そのまま打ち込めば腕を回したリューイの腹部に力が入った。
腰をくねらせリューイもウィリディスのものをより深く咥えるために動きを合わせる。
リューイの内部には愛液が溢れ動くたびに音を出す。自分の足の上に腰を下ろしているリューイを支えていたがいささかやりにくい。
腕を腹部から膝の裏へとずらしてリューイの足を持ち上げた。リューイの体重が孔一点に集中する。
赤子に粗相させるかのようなポーズにリューイの顔が闇の中でもわかるほどに赤くなった。
じゅぶじゅぷっと動くたびに音がする。リューイの肩に顔を埋めてひたすらに腰を動かした。

「気持ちいいな…」
「あ、あああ…だめ…俺、イく…」
「このままだとスーツを汚しかねないぞ?」
「だって、気持ちいいの、とまらない…」

腰の動きを止めた。足を抱えられたリューイは動けるはずもない。
リューイは腰を揺する。しかしそれは確かな刺激になるわけではない。

「せんせ…っ」
「スーツが汚れてしまう。お前に似合うと思って買ったのに」
「でも…イきたい…ねぇ、せんせー…」

リューイの手がウィリディスのほほに触れる。顔をすりよせて甘えるようなしぐさをするリューイをもっと喘がせたくなる。
リューイの顔が近づいたのをいいことに口づけた。吸われ舌を甘噛みされ、体を襲う快楽にリューイは涙さえこぼした。
足から手を放せばリューイのシャツのボタンを外す。ぼんやりとした目でウィリディスの手の動きを見ていたリューイは開かれたシャツを自分で脱ぎ捨ててしまう。
夜の明かりの中にリューイの体が浮かぶ。きれいだ、と思った。

「これなら…汚さないよね」

ソファの下にシャツとジャケットが落ちる。
首元にスカーフが巻かれた裸身を惜しげもなく晒してリューイは腰を静かに動かした。
先ほどとは異なり、ゆっくりと浅く打ち付ける。
ぬち、ぬち、と音がする。リューイのそこを出たり入ったりする己が白くなっていくのを見つめていた。

「あ、ああ…イく…」

ぐちゅぐちゅと音がした。リューイの動きが止まり前のめりになる。
どうやら自分でしごいているようだった。きゅうう、と内部の締め付けが強まる。眉をひそめた。

「リューイ…」
「な、に、せんせ…」
「そんなに締め付けるな。出てしまう」
「いいじゃん…出して。いつもみたいにいっぱい、俺の中に」

リューイの声が少し高くなる。空を仰ぎリューイの体がこわばった。
足に生暖かなものが垂れる。リューイが達したらしい。
体の力が抜けた彼を支えて一度引き抜く。

「リューイ…出すのは構わないが今のお前に出してしまうとほぼ間違いなく、ここに、できるぞ」

リューイの腹部、へそよりも少し下を圧迫する。トロン、ととけた瞳は何を言われているのかはわかっていないらしい。
この野外での性交のおかげなのかほんの少しだけ酔いが冷めてきた。リューイの体を自分と向き合うようにさせる。

「リューイ、よく聞け。俺がお前を抱くとき避妊剤を飲んでいるのは知っているだろう。今はこんなことになるとは思ってもみなかったから飲んでいない」
「…どうしてだめなの」

ぽつりとリューイが漏らす。
向き合うように座ったリューイはウィリディスの胸元に顔を埋めてしまったため、その表情はうかがい知ることはできない。
スーツを握り締めたリューイは絞り出すようにつぶやいた。

「せんせーが俺の中に出すのはいけないこと…?」
「そうじゃない。だが、俺はαでお前はΩだ。その意味が分からないほど子供ではないだろう」
「できてもいいって、そう言ったらこのまま続けてくれる?」
「リューイ…!」

咎めるように名前を呼んだ。
いやいや、と首を振るリューイを引き離そうとする。だが乱暴に素肌をつかんでは傷つけかねない。
肩をつかんではみたものの引き離すことなどできはしなかった。

「どうして…?俺がいいって言ってるのに」
「それは…」
「せんせー、このまま抱いて。俺もせんせーも、収まらないでしょ」

リューイが顔を上げる。少し赤らんだ目元を指でなぞった。
自分もリューイも酒とこの空気に酔っているのだ。そう言い聞かせる。パーティ前にリューイにつけた自分の香りと自分につけられたリューイの香りが混ざり互いの体温によってより強く香った。

「俺の奥にある、Ωの大事なところにせんせーの太いものを打ち付けて、いっぱい出して。俺をせんせーだけのΩにして」

リューイがスカーフをほどく。その下から出てきたのは革の首輪。Ωのうなじを守る最後の砦である。
そこにリューイの指がかかった。一瞬にしてウィリディスの頭が冴える。

「"俺を"」
「やめろ、リューイっ!自分が何をしているのかわかっているのか!」

リューイの手を首輪から無理やり外した。
Ωの首輪のロックを解除するのは首輪をつけているΩ自身の声と指紋である。
今自分自身も高ぶった状態で首輪が外れてしまえばαの本能に逆らえない。リューイの望むまま、自分はきっとうなじに噛みついてリューイを番にしてしまう。
リューイは掴まれた手の痛みに顔をゆがめる。しかし今手を放してやるわけにはいかない。

「どうして…俺の番になってくれないの?」
「どうして俺がお前の番になる必要がある。言っただろう、お前にはちゃんと見合った番を…」

リューイの瞳から快楽の時とは別の涙が流れる。
手を放せばリューイは自分の顔を覆った。

「リューイ…なぜ、泣く」
「せんせーはひどいよ……どうして突き放すの…俺、せんせーに番にされるなら受け入れられるのに」
「何を言っている。お前と俺とは一回りも年の差があるんだぞ。それ以前に俺にはもう」
「でもクロエさんは死んでる!年の差があったって番になっていいでしょう?!」

リューイの叫びに動きを止めた。
リューイは何かを堪えるように唇をかみしめている。それ以上は言葉にしなかった。
リューイの涙が次々と流れていく。泣かせてしまった、と思えば胸が痛い。
静かに背中に腕を回して引き寄せた。

「わかった…このまま続ける。だが後でお前には薬を飲んでもらうからな。それだけうなずけ。そうでなければもう部屋に戻る」
「出してくれるの…?」
「後飲みの避妊薬を飲ませる。だからだ」
「…それでいい。いっぱいせんせーを感じさせて」

頬を撫でる手にリューイはすり寄った。涙を唇で吸い取り間近で視線を交わす。
リューイの尻たぶを割ってそこに熱い楔を打ち込んだ。待ち望んだものにリューイはまた達した。
がくがくと震える体を抱き、ウィリディスもスーツを脱ぎ捨てる。

「せんせー…」

リューイがついばむように口づけた。肌が触れあえば容易く体は達する。
強くリューイを抱き締め奥へと精を注ぎ込めばリューイも何度目になるのか同じように精を吐き出した。ウィリディスの腹部にリューイが飛ばした精が当たる。
口付けを交わしまた腰を動かす。収まりきらないものが流れだし、二人を汚す。
二度目はすぐだった。リューイは薄くなったものを吐き出して震えている。
ウィリディスは乱れた髪が落ちるのも構わず、ソファにリューイを横たわらせた。
背もたれに片足をかけ、足を大きく開かせる。眼前に蜜を流すリューイのそれと、リューイが吐き出した白い精で汚れる腹部、赤く尖った突起がある。
引き抜いたその場所からは自分が出したものが流れている。リューイは腹部に手を当て嬉しそうにしていた。それを見ていると自然とまた己が固さを取り戻していく。
もっと出したい、目の前のΩに自分の精を注ぎ込み孕ませたい。
危険な考えが頭を支配する。今αとしてのフェロモンを放出し、リューイに首輪をはずすように言えば彼は喜んではずすだろう。

「リューイ…薬を飲むことを忘れるなよ」
「…うん」

リューイがうなずけば孔に再度熱を推し当て、肉壁を割り開く。歓喜の声をあげるように溢れた蜜液を指ですくって舐めた。
足を閉じないように太ももを支えて奥まで押し込めば亀頭に触れる場所がある。
Ωが子供を孕む場所だった。リューイの体は自分を貫くαの子供を宿すことを望んでいるのだ。

「リューイ……」
「せんせ?」
「セックスのときぐらい、名前で呼べばいいものを」
「…ウィリディス…もっと、ぐちゃぐちゃにして?」

リューイの甘えた声にぞくぞくと背筋が震えた。
そのあとはただがむしゃらに腰を打ち付けた。リューイの体のことを考えない、自分本意のセックスだった。
汗と精にまみれ夢中でリューイを貪る。リューイもよく応えたと思う。
最終的に出すものはなくなり虚ろな目をしてリューイは体を震わせるだけだった。
呼吸を乱したままリューイから引き抜けば赤く腫れたそこは痛々しい。

「リューイ、俺がわかるか」

リューイの返答はない。汗に濡れたままでは体を壊しかねない。
ソファにかけられた毛皮でリューイをくるむ。静かに頭を撫で眠りへと促した。
静かに目が閉じられればその額に汗で張り付く髪をどかす。
自分もなにも纏わぬままにソファに深く座り込んだ。

「驚いたな、理性の権化のようなお前が獣そのものになるとは」
「Ωのフェロモンを無意識に垂れ流されてみろ。発情期中ではないだけましだ」
「本当に孕ませるつもりだったみたいだな」

ニキアスがやってくれば顔だけ後ろに向ける。
眼前に差し出されたのはシロップタイプの避妊薬である。パメラが改良を加えたものでかなり強いためあまり飲むことを推奨はしていない。
今回のようにやむを得ないときに使用するのである。即時吸収されるため効果はある。
シロップを受けとればリューイの体を静かに起こす。それでもリューイは起きない。

「すまなかったな、リューイ…」

優しい声音で謝罪すればシロップを口に含み、意識のないリューイにそれを口移しで与える。
喉が動いたのを確認すればまた横たわらせた。
ニキアスがウィリディスのスーツを投げて寄越す。しわくちゃのそれを身にまとう。リューイのものも回収した。

「早くそいつを手放したほうが良さそうだな」
「…わかっている」
「ウィリディス。情がうつる前に決断しろよ」
「言われずとも。とはいえ、もう遅いかもしれないがな」

リューイを見つめる瞳には彼への愛情がある。
ニキアスは肩をすくめた。どうするのかは弟に完全任せるが、先行きは知れている。
孕ませるのが先か、うなじを噛むのが先か、といったところだろうか。

「どうでもいいけどな。俺には関係のない話だ」
「関係ないと言いつつ覗きのような真似はするのか」
「母さんたちがお前を探していたんだ。そいつの、引き取り希望先があるらしいな」

ニキアスの言葉にウィリディスは動きを止めた。
考えないようにしていたことだ。
朝方、ニキアスが部屋にリューイを連れてくるまでアクティナと話していた。
リューイを番に、と望むαがいることを聞いた。それが誰かはすぐにぴんときた。
息を吐き出し再度兄を見た。兄もこちらを見ていた。

「お前がどんな道を選ぼうが俺には関係ない。だが、忘れるな、お前はこの家の息子なんだ」
「わかっている。情けない真似をすれば俺は二度と日の目を見れはしないだろうな」

ウィリディスの生家であるこの場所と、アカテス、アクティナ、その先祖が築いてきた場所を簡単には失えない。

「俺もどうがんばってもしがらみがある…それにリューイを巻き込みたくはない。自由に生きられるならばそのほうがいいだろう」
「巻き込みたくないだけならいいけどな」

毛皮にリューイをくるんで抱き上げる。少し体を動かすも目覚める気配はない。
落とさぬようにしっかりと抱えてソファから立ち上がる。
飛び石を兄と渡り、もう客のいなくなった会場へと入る。

「あらまぁ…情事後ですって姿ね、息子くんは」
「お客さんがいなくてよかったってところかな…あぁ、スーツもしわくちゃだね」
「……成り行きで」
「そのスーツ、夜会用とはいえわりと高いのよ?しっかりした仕立てだし、特注したのに」

ため息交じりに言われてしまい、何も言い返せない。
脇でニキアスはあきれたような表情をしている。助け船を出すつもりはないらしい。
アクティナは気を取り直してまじめな顔になった。

「リューイくんにはいつ伝えるつもりなのかだけ聞いておこうと思ってね。それによって先方への返事のタイミングも変わるわ」
「いつまでも今の関係を続けるわけにはいかないのは君が一番よくわかっているはずだよ。リューイくんのためにも君のためにも、決断は早いほうがいいだろうね」

腕の中のリューイの寝顔を見つめる。リューイはまだレックスたちに養子の件を話してはいない。
こちらからリューイの相手のことを話すのはそれが落ち着いてからのほうがいいだろう。
ウィリディスはそう伝えた。自分でも悪あがきをしているような気がしてならなかった。引き延ばせば引き延ばすほど、自分もリューイも戻れなくなってしまうのは十分すぎるほどに理解しているのだ。
なるべく傷は浅いほうがいいとわかっている。それでも手放せなくなるほどにリューイとの時間が愛しいのだ。

「…バカみたいだな。心を寄せたところで、なににもならないというのに」

自嘲気味につぶやけばアクティナが口を開きかける。アカテスがそれを制して首を振った。
唇を尖らせてアクティナは不満をあらわにするものの言いかけた言葉は口にはしなかった。

「明日リューイが目を覚まし次第戻る。土産も買って行かねばならないのでな」
「またリューイくん連れてきてね」
「そうだな…ほかの子供が牧場に行きたがるだろうから養子先に引き渡す前には一度くると思う」
「そうか。ならまた部屋を空けておかないといけないね。小さなお客様のために。ちゃんとくるときは連絡を寄越すんだよ?」
「わかっている」

少しずり落ちてきたリューイを抱えなおしてウィリディスは部屋に戻るべく足をすすめた。

「息子くん、お土産を用意してあるから明日持ち帰るのを忘れないでね」

アクティナの声が聞こえたかは定かではなかった。
ウィリディスは部屋へと戻りリューイをベッドへと横たわらせた。体を包んでいた毛皮をとって布団をかける。朝起きたら浴室へすぐさま行かせねばなるまい。
そばに腰かけて寝顔を見つめた。気持ちよさそうだなと思えば自然と笑みがこぼれる。
そろそろ自分も性交の疲れが出てき始めた。ただでさえ普段飲まないアルコールを摂取したのだ。体が強く休みを求めていた。
自室まで帰るのは少々骨が折れそうだ。またスーツにしわが増えるなと思いつつリューイの隣に寝転ぶことにした。
リューイの体を引き寄せて抱きしめる。耳に唇を寄せて静かに囁いた。

「リューイ、お前を愛している…」

聞こえるはずもないが口にせずにはいられなかった。言ったところで何が変わるわけでもない。
心の中では満足していた。おやすみ、とささやいて目を閉じる。せめて夢の中だけでも、だれにも邪魔されず二人きりで過ごしたいとささやかな願いを抱いた。
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