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幕間∶心の底から願うこと
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いつでも隣には愛する相手がいる。それが目覚めたときの幸せなのだとフォートはよく話していた。
実感できるはずなんてないと思っていたのだ。
「…朝…今日は休みか…」
窓から差し込む明かりに目を刺されて意識を浮上させる。
ベッド脇にさげられたデジタルタイプのカレンダーは休日を示す。確か昨日は途中でリューイから連絡があり、帰宅したのだったか。
疲れすぎているのかあまり記憶はがない。
リューイが起こしにくるまであと少しだけ眠ろうかと目を再び閉じた。
だが、耳に軽い足音が複数聞こえたかと思えばベッドに飛び上がり直後自分にのし掛かられる。
「レックス、シルバ…その起こし方はやめろとあれほど」
「だぁれ、レックスって」
「パパの弟だよ、アリシア。誕生日にいつもおもちゃくれるじゃん」
聞きなれない声である。
薄く目を開ければ自分の体の上に二つの姿が見える。
軽くうめいて体を起こせばよりその姿がはっきりした。
少しつり上がった紺色の眼と明るい茶色のストレートヘアの少年、青紫色のくりくりした瞳を持ち同じく茶髪のストレートヘアの女の子、この二人は誰だ。
固まるウィリディスを尻目に二人は起き上がったウィリディスに抱きつく。
「おはよう、パパ。朝だよ」
「おはよー、パパ」
完全に思考が止まったウィリディスを二人は不思議そうに眺める。
顔立ちがリューイに似ている。体の奥で心臓が大きな音をたてた。
「リューイ…」
「パパならごはん作ってるよ。今日はフレンチトーストだって」
「私ね、メープルシロップたくさんかけるの」
「僕ははちみつ!」
二人はウィリディスの腕を強く引っ張る。抵抗もせずウィリディスは引きずられるようにしてベッドを降りた。
部屋を出れば甘い香りがする。眩しさに一瞬視界が白く染まるが瞬けばキッチンにリューイがたっているのがみえた。
「パパ起こしてきたー!」
「ありがとな、アリシア、ノエ。おはよ、ウィル」
「…おはよう」
呆然となりながら返事を返せばリューイは少し目を瞬いてから笑った。
皿にフレンチトーストをのせて子供に渡せばキッチンを出てきてそばにやってくる。
その姿に少し違和感がある。手を伸ばし触れたほほはいつもの通り、しかし腰に回したうではその体が少し細くなったことを伝えてくるし、何よりもきれいな首筋が見える。
「リューイ、首輪は」
「寝ぼけてるの、ウィル。あんたが七年前俺のうなじを噛んで番にしたんだろ?」
あきれたような声とともにリューイはウィリディスの手を己の首へとすべらせた。
吸い付くような肌、うなじに指が這えば少しほほを赤くしてリューイは震える。
頭が混乱する。うなじをなぞればそこに歯形があることに絶句した。
リューイは心配そうにウィリディスを見つめる。
「ウィル、具合悪い?少し様子がおかしい」
「追い付いていけないだけだ…俺が、お前のうなじを噛んだなど…」
「ほんとだよ。俺に好きって言ってくれて、俺を抱いて、俺も嬉しかったからそのまま首輪外して、ウィルが噛んで」
なぜ覚えていないのだろうか。腕の中にいるリューイの瞳は少し陰りを見せる。
ウィリディスの様子に不安があるのだろう。少し背伸びして優しく頭をなで指先で唇をなぞる。唇で指先を挟まれ舌が当たれば、体に力が入った。
「ウィル…」
少しだけ熱の灯った声に名前を呼ばれた。
顔を寄せて口付ける。リューイも少し顔を傾けてウィリディスの唇を受け入れた。
唇を放し、首筋に顔を埋めればわずかに甘い香りが鼻先をくすぐる。
うなじを見ればしっかりと歯形があった。
「ウィル、朝から盛らないでよ」
「パパたち仲良し」
「いつもああだね。アリシア、先にごはん食べよう。冷めちゃう」
「うん」
そんな会話を尻目にキスを繰り返していたウィリディスだったがやがてリューイを強く抱きしめた。
リューイの声が耳元でする。抱きしめた腕により力を込めた。
「リューイ、愛してる」
「…なんか絶対おかしい」
「そんなことない。本音だ」
リューイは抱きしめられ恥ずかしそうにしている。
抱きしめたリューイの体は暖かい。心臓の鼓動も感じる。
顔を見ればウィリディスを不思議そうに見つめ返す。
「リューイ…」
「あーもう…ウィル、ほらごはん食べて。今日はせっかくの休みだし出かけよう」
「あぁ」
もう一度口づけてから二人も食卓についた。きれいな焼き色をしたフレンチトーストを頬張るリューイを見ていたがやがてそのリューイに面差しの似た二人の子供を見つめた。
リューイのうなじを自分が噛んだというのならば、彼らは自分とリューイの子供ということだろうか。
「パパ、どうしたの、フレンチトーストおいしくない?」
「…いや、おいしい」
視線に気づいたのか瞳がこちらを向いて声をかけられればウィリディスはそう答えるほかない。
リューイは隣に座る女の子と楽しそうに話して食べている。
「ねぇパパ、聞いてもいい?」
「なんだ」
「パパはパパのどこを好きになったの?」
聞きながらややこしいなと思いつつもその質問が聞こえたのか目元を赤くしてこちらを凝視するリューイに気づいてしまった。
こちらも赤くなりながらフレンチトーストを頬張る。
「ねぇパパはパパが大好きなんでしょ?どこが好きになったの」
「子供が気にしなくていい」
「えー。だってパパも気になるよね?パパが好きになったところどこかなぁって」
「私ね、パパの笑顔大好きー!」
「アリシアには聞いてない。僕も好きだけど」
子供二人の会話にリューイは完全に食べる手を止めている。
子供に悪気がないのはわかっている。答えなければ先には進めなさそうだと判断した。
「笑顔だな…あとはまっすぐにこちらを見つめてくる瞳だ」
「パパも笑顔好き?」
「あぁ。リューイが笑えばこちらも自然と笑顔になる」
「じゃぁいつからパパを好きになったの」
どうしてそんなことばかりを聞くんだ、と内心では頭を抱える。
リューイは完全に居心地が悪そうにしているではないか。自分もそういったことを好んで口に出すようなタイプではない。
期待に満ちた子供二人とリューイの視線に挟まれて咳ばらいをした。
「きっと、初めて触れてしまったときからリューイを気にしていたのだろうな…そうでもなければ家に知らない相手を住まわせることなどしないはずだ」
「それもそうだ」
リューイはウィリディスの言葉を聞いてうなずいていた。
何度も肌を重ね、唇を重ね、言葉を交わした。リューイの涙を何度も見たし、傷つけたことも幾度となくあった。
血がつながっていない子供を大事にするやさしさも珍しいと思えるし、自分に足らないことを学んで蓄えようとするところも好感が持てる。
そんなことを考えていて何も言葉を発しないウィリディスに焦れたのか服を引っ張られた。
「パパ、もっとないの?」
「もっと?ほかにお前は何を期待しているんだ」
「パパの笑顔!だって好きっていわれるとパパが嬉しそうに笑うんだもん」
「アリシア、ノエ、食べ終わったなら歯磨き!それと出掛ける準備!遊びに行く時間なくなるぞ」
リューイは耐えきれなくなったかそう早口に告げた。
二人の子供は慌てて皿をキッチンに運び上のフロアに上がっていく。子供部屋は上らしい。
顔を赤くしたリューイも立ち上がればキッチンに向かう。
ウィリディスは残りを食べ終えるとリューイを追いかけた。
「ウィルも答えなくていいからな?」
「なぜだ」
「恥ずかしいの!わかって」
耳まで赤くしながらリューイは皿を洗う。
洗われた皿を拭いて棚に戻しながらウィリディスは口を開く。
「リューイ…俺は研究を終えられたのか」
「本当に大丈夫?終わったよ。七年前、ウィルは病気の治療のための試薬をつくってそれが無事認可されて、今じゃかかる人なんてごくわずか。だからウィルは今ほかの研究してるわけでしょ」
ウィリディスは手を止めて少し考える。
固有病の研究を終えることは自分にとっては悲願だったはずだ。クロエの体を取り戻すため、安心してリューイが生きていくために。
だが、なぜそれを覚えていないのだろうか。
頭に手をやりうつむけば背中にリューイが手を当てる。
「ウィル、今日は出掛けるのやめようか。やっぱり変だ」
「…いや、いい。お前と過ごす休みならばそれを優先したい」
するり、と言葉がこぼれた。大きく目を見開くリューイは少し口ごもるもやがて笑ってうなずいた。
片付けを終えれば二人も出掛ける用意を整える。
服を着替えて降りてきた子供たちと手を繋ぎ四人で外に出た。
リューイたちの楽しそうにはしゃぐ様を見るとウィリディスはなにかがすとんと胸の中に落ちる気がした。
長く望んだものが目の前にあるのだ。アリシアやノエに、パパと呼ばれることにも慣れてきた。
「今日はたくさん動いたー!」
夕飯も外で終えて風呂を済ませたリューイはベッドに転がり大きく体を伸ばした。
隣に座りリューイのまだわずかに濡れた髪にふれる。
照れくさそうな顔に微笑みかけた。
「ウィル、抱いてくれる?」
「抱かれたいのか」
「うん。疲れてるならわがままは言わないけど」
「いや、疲れてはいない」
リューイは体を起こせば座るウィリディスの膝に腰を下ろした。
目線の高さが揃いまっすぐにその瞳に射ぬかれる。小さく笑い口づけを交わせば体に熱が灯った。
リューイを押し倒してパジャマを剥ぐ。見えた肌に舌を這わせ胸元に手をやる。
赤く色づいた突起をつまむ。息を詰めたリューイは覆い被さるウィリディスの下肢に膝を当てる。
固いものが当たる。
「興奮した?」
「当たり前だ」
「嬉しい」
キスを繰り返し、互いに蜜を垂れ流す熱をしごく。すぐにリューイとウィリディスの手は濡れた。
リューイから強くΩのフェロモンを感じた。
出会ってから何度もそれを感じ、それは香り、ウィリディスを興奮させる。
ウィリディスの指がリューイの胎内を広げる。リューイのそこは指では足らないのだと締め付けうねる。
リューイは自分の指をなめてウィリディスに濡れた視線を送る。
「リューイ…愛してる」
「俺もだよ、ウィル。誰よりも大好き」
リューイは再びウィリディスの膝に乗る。
背中越しにウィリディスの熱を支えては自分で腰を下ろして行く。
内部を割り開きウィリディスに頭がしびれるほどの快感を繋がった部分から伝えてくる。
リューイの手がウィリディスのほほを挟む。艶然とした笑みを口許に浮かべたリューイは腰を動かす。
ウィリディスはもうリューイとの行為のことしか考えられなかった。
「気持ち、いい?」
「あぁ」
「好きなだけだして。また俺と子供作ろう?アリシアに兄弟ほしい」
ウィリディスはリューイの腰を支えながらその締め付けに耐える。気持ち良さそうに目を閉じて快楽を享受するリューイを見つめては自分も高ぶった。
リューイのそこは熱かった。体の奥から蜜を溢れさせて滑りをよくする。内部はうねり、ウィリディスのそれを撫で上げる。
奥まで差し込めばリューイはのどをさらす。体を痙攣させているが精は吐き出していない。
「きもち、いい…俺、ウィルとエッチするの、好き…」
「今までのαとどちらがいい?」
「ウィルに決まってるじゃん。ウィルこそほかのΩより俺の方がいいでしょ?」
リューイはウィリディスの首に腕を回して体を寄せる。ウィリディスの腹部でリューイの熱が跳ねた。
「ウィル、今日は寝かさないで。前みたいに、俺を気絶させるぐらい抱いて」
リューイが耳元でささやく。耳朶に這う舌の生暖かさに背筋が震えた。
リューイの腰を抱いたまま後ろに倒れこむ。リューイはウィリディスの胸元に頬を寄せて笑っていた。
飲み込まれそうだ、とウィリディスは思った。リューイの顔を自分に向かせて目元を撫でとろけた顔を見ればこちらも笑った。
繋がるところから溶けていく。リューイと自分は今ひとつになったのだと思えば幸せに浸る。
ウィリディスは再びリューイを大きく穿ち出した。
実感できるはずなんてないと思っていたのだ。
「…朝…今日は休みか…」
窓から差し込む明かりに目を刺されて意識を浮上させる。
ベッド脇にさげられたデジタルタイプのカレンダーは休日を示す。確か昨日は途中でリューイから連絡があり、帰宅したのだったか。
疲れすぎているのかあまり記憶はがない。
リューイが起こしにくるまであと少しだけ眠ろうかと目を再び閉じた。
だが、耳に軽い足音が複数聞こえたかと思えばベッドに飛び上がり直後自分にのし掛かられる。
「レックス、シルバ…その起こし方はやめろとあれほど」
「だぁれ、レックスって」
「パパの弟だよ、アリシア。誕生日にいつもおもちゃくれるじゃん」
聞きなれない声である。
薄く目を開ければ自分の体の上に二つの姿が見える。
軽くうめいて体を起こせばよりその姿がはっきりした。
少しつり上がった紺色の眼と明るい茶色のストレートヘアの少年、青紫色のくりくりした瞳を持ち同じく茶髪のストレートヘアの女の子、この二人は誰だ。
固まるウィリディスを尻目に二人は起き上がったウィリディスに抱きつく。
「おはよう、パパ。朝だよ」
「おはよー、パパ」
完全に思考が止まったウィリディスを二人は不思議そうに眺める。
顔立ちがリューイに似ている。体の奥で心臓が大きな音をたてた。
「リューイ…」
「パパならごはん作ってるよ。今日はフレンチトーストだって」
「私ね、メープルシロップたくさんかけるの」
「僕ははちみつ!」
二人はウィリディスの腕を強く引っ張る。抵抗もせずウィリディスは引きずられるようにしてベッドを降りた。
部屋を出れば甘い香りがする。眩しさに一瞬視界が白く染まるが瞬けばキッチンにリューイがたっているのがみえた。
「パパ起こしてきたー!」
「ありがとな、アリシア、ノエ。おはよ、ウィル」
「…おはよう」
呆然となりながら返事を返せばリューイは少し目を瞬いてから笑った。
皿にフレンチトーストをのせて子供に渡せばキッチンを出てきてそばにやってくる。
その姿に少し違和感がある。手を伸ばし触れたほほはいつもの通り、しかし腰に回したうではその体が少し細くなったことを伝えてくるし、何よりもきれいな首筋が見える。
「リューイ、首輪は」
「寝ぼけてるの、ウィル。あんたが七年前俺のうなじを噛んで番にしたんだろ?」
あきれたような声とともにリューイはウィリディスの手を己の首へとすべらせた。
吸い付くような肌、うなじに指が這えば少しほほを赤くしてリューイは震える。
頭が混乱する。うなじをなぞればそこに歯形があることに絶句した。
リューイは心配そうにウィリディスを見つめる。
「ウィル、具合悪い?少し様子がおかしい」
「追い付いていけないだけだ…俺が、お前のうなじを噛んだなど…」
「ほんとだよ。俺に好きって言ってくれて、俺を抱いて、俺も嬉しかったからそのまま首輪外して、ウィルが噛んで」
なぜ覚えていないのだろうか。腕の中にいるリューイの瞳は少し陰りを見せる。
ウィリディスの様子に不安があるのだろう。少し背伸びして優しく頭をなで指先で唇をなぞる。唇で指先を挟まれ舌が当たれば、体に力が入った。
「ウィル…」
少しだけ熱の灯った声に名前を呼ばれた。
顔を寄せて口付ける。リューイも少し顔を傾けてウィリディスの唇を受け入れた。
唇を放し、首筋に顔を埋めればわずかに甘い香りが鼻先をくすぐる。
うなじを見ればしっかりと歯形があった。
「ウィル、朝から盛らないでよ」
「パパたち仲良し」
「いつもああだね。アリシア、先にごはん食べよう。冷めちゃう」
「うん」
そんな会話を尻目にキスを繰り返していたウィリディスだったがやがてリューイを強く抱きしめた。
リューイの声が耳元でする。抱きしめた腕により力を込めた。
「リューイ、愛してる」
「…なんか絶対おかしい」
「そんなことない。本音だ」
リューイは抱きしめられ恥ずかしそうにしている。
抱きしめたリューイの体は暖かい。心臓の鼓動も感じる。
顔を見ればウィリディスを不思議そうに見つめ返す。
「リューイ…」
「あーもう…ウィル、ほらごはん食べて。今日はせっかくの休みだし出かけよう」
「あぁ」
もう一度口づけてから二人も食卓についた。きれいな焼き色をしたフレンチトーストを頬張るリューイを見ていたがやがてそのリューイに面差しの似た二人の子供を見つめた。
リューイのうなじを自分が噛んだというのならば、彼らは自分とリューイの子供ということだろうか。
「パパ、どうしたの、フレンチトーストおいしくない?」
「…いや、おいしい」
視線に気づいたのか瞳がこちらを向いて声をかけられればウィリディスはそう答えるほかない。
リューイは隣に座る女の子と楽しそうに話して食べている。
「ねぇパパ、聞いてもいい?」
「なんだ」
「パパはパパのどこを好きになったの?」
聞きながらややこしいなと思いつつもその質問が聞こえたのか目元を赤くしてこちらを凝視するリューイに気づいてしまった。
こちらも赤くなりながらフレンチトーストを頬張る。
「ねぇパパはパパが大好きなんでしょ?どこが好きになったの」
「子供が気にしなくていい」
「えー。だってパパも気になるよね?パパが好きになったところどこかなぁって」
「私ね、パパの笑顔大好きー!」
「アリシアには聞いてない。僕も好きだけど」
子供二人の会話にリューイは完全に食べる手を止めている。
子供に悪気がないのはわかっている。答えなければ先には進めなさそうだと判断した。
「笑顔だな…あとはまっすぐにこちらを見つめてくる瞳だ」
「パパも笑顔好き?」
「あぁ。リューイが笑えばこちらも自然と笑顔になる」
「じゃぁいつからパパを好きになったの」
どうしてそんなことばかりを聞くんだ、と内心では頭を抱える。
リューイは完全に居心地が悪そうにしているではないか。自分もそういったことを好んで口に出すようなタイプではない。
期待に満ちた子供二人とリューイの視線に挟まれて咳ばらいをした。
「きっと、初めて触れてしまったときからリューイを気にしていたのだろうな…そうでもなければ家に知らない相手を住まわせることなどしないはずだ」
「それもそうだ」
リューイはウィリディスの言葉を聞いてうなずいていた。
何度も肌を重ね、唇を重ね、言葉を交わした。リューイの涙を何度も見たし、傷つけたことも幾度となくあった。
血がつながっていない子供を大事にするやさしさも珍しいと思えるし、自分に足らないことを学んで蓄えようとするところも好感が持てる。
そんなことを考えていて何も言葉を発しないウィリディスに焦れたのか服を引っ張られた。
「パパ、もっとないの?」
「もっと?ほかにお前は何を期待しているんだ」
「パパの笑顔!だって好きっていわれるとパパが嬉しそうに笑うんだもん」
「アリシア、ノエ、食べ終わったなら歯磨き!それと出掛ける準備!遊びに行く時間なくなるぞ」
リューイは耐えきれなくなったかそう早口に告げた。
二人の子供は慌てて皿をキッチンに運び上のフロアに上がっていく。子供部屋は上らしい。
顔を赤くしたリューイも立ち上がればキッチンに向かう。
ウィリディスは残りを食べ終えるとリューイを追いかけた。
「ウィルも答えなくていいからな?」
「なぜだ」
「恥ずかしいの!わかって」
耳まで赤くしながらリューイは皿を洗う。
洗われた皿を拭いて棚に戻しながらウィリディスは口を開く。
「リューイ…俺は研究を終えられたのか」
「本当に大丈夫?終わったよ。七年前、ウィルは病気の治療のための試薬をつくってそれが無事認可されて、今じゃかかる人なんてごくわずか。だからウィルは今ほかの研究してるわけでしょ」
ウィリディスは手を止めて少し考える。
固有病の研究を終えることは自分にとっては悲願だったはずだ。クロエの体を取り戻すため、安心してリューイが生きていくために。
だが、なぜそれを覚えていないのだろうか。
頭に手をやりうつむけば背中にリューイが手を当てる。
「ウィル、今日は出掛けるのやめようか。やっぱり変だ」
「…いや、いい。お前と過ごす休みならばそれを優先したい」
するり、と言葉がこぼれた。大きく目を見開くリューイは少し口ごもるもやがて笑ってうなずいた。
片付けを終えれば二人も出掛ける用意を整える。
服を着替えて降りてきた子供たちと手を繋ぎ四人で外に出た。
リューイたちの楽しそうにはしゃぐ様を見るとウィリディスはなにかがすとんと胸の中に落ちる気がした。
長く望んだものが目の前にあるのだ。アリシアやノエに、パパと呼ばれることにも慣れてきた。
「今日はたくさん動いたー!」
夕飯も外で終えて風呂を済ませたリューイはベッドに転がり大きく体を伸ばした。
隣に座りリューイのまだわずかに濡れた髪にふれる。
照れくさそうな顔に微笑みかけた。
「ウィル、抱いてくれる?」
「抱かれたいのか」
「うん。疲れてるならわがままは言わないけど」
「いや、疲れてはいない」
リューイは体を起こせば座るウィリディスの膝に腰を下ろした。
目線の高さが揃いまっすぐにその瞳に射ぬかれる。小さく笑い口づけを交わせば体に熱が灯った。
リューイを押し倒してパジャマを剥ぐ。見えた肌に舌を這わせ胸元に手をやる。
赤く色づいた突起をつまむ。息を詰めたリューイは覆い被さるウィリディスの下肢に膝を当てる。
固いものが当たる。
「興奮した?」
「当たり前だ」
「嬉しい」
キスを繰り返し、互いに蜜を垂れ流す熱をしごく。すぐにリューイとウィリディスの手は濡れた。
リューイから強くΩのフェロモンを感じた。
出会ってから何度もそれを感じ、それは香り、ウィリディスを興奮させる。
ウィリディスの指がリューイの胎内を広げる。リューイのそこは指では足らないのだと締め付けうねる。
リューイは自分の指をなめてウィリディスに濡れた視線を送る。
「リューイ…愛してる」
「俺もだよ、ウィル。誰よりも大好き」
リューイは再びウィリディスの膝に乗る。
背中越しにウィリディスの熱を支えては自分で腰を下ろして行く。
内部を割り開きウィリディスに頭がしびれるほどの快感を繋がった部分から伝えてくる。
リューイの手がウィリディスのほほを挟む。艶然とした笑みを口許に浮かべたリューイは腰を動かす。
ウィリディスはもうリューイとの行為のことしか考えられなかった。
「気持ち、いい?」
「あぁ」
「好きなだけだして。また俺と子供作ろう?アリシアに兄弟ほしい」
ウィリディスはリューイの腰を支えながらその締め付けに耐える。気持ち良さそうに目を閉じて快楽を享受するリューイを見つめては自分も高ぶった。
リューイのそこは熱かった。体の奥から蜜を溢れさせて滑りをよくする。内部はうねり、ウィリディスのそれを撫で上げる。
奥まで差し込めばリューイはのどをさらす。体を痙攣させているが精は吐き出していない。
「きもち、いい…俺、ウィルとエッチするの、好き…」
「今までのαとどちらがいい?」
「ウィルに決まってるじゃん。ウィルこそほかのΩより俺の方がいいでしょ?」
リューイはウィリディスの首に腕を回して体を寄せる。ウィリディスの腹部でリューイの熱が跳ねた。
「ウィル、今日は寝かさないで。前みたいに、俺を気絶させるぐらい抱いて」
リューイが耳元でささやく。耳朶に這う舌の生暖かさに背筋が震えた。
リューイの腰を抱いたまま後ろに倒れこむ。リューイはウィリディスの胸元に頬を寄せて笑っていた。
飲み込まれそうだ、とウィリディスは思った。リューイの顔を自分に向かせて目元を撫でとろけた顔を見ればこちらも笑った。
繋がるところから溶けていく。リューイと自分は今ひとつになったのだと思えば幸せに浸る。
ウィリディスは再びリューイを大きく穿ち出した。
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