88 / 124
燃え盛る想いに身を焦がす 3
しおりを挟む
リューイは結局何度も自分の中に二人の欲を吐き出されていた。
途中まではちゃんとゴムを付けていた。だが足らなかった。
「ふ…ぐっ、ん…んぁ」
「はぁ…まだ足らないのか。発情期ではないだろう」
仰向けになり、フィーディスの熱を胎内に受け入れながら変わらず硬いままのウィリディスの熱を口に咥える。
喉の奥まで咥えれば呼吸ができなくなり、ひどく苦しいがそれもまたよかった。
フィーディスはリューイを突き上げながら胸をいじる。腰をそらせくぐもった声を漏らすリューイを愛しそうに見つめているのを感じていた。
何度も貫かれ、二人の欲を受け止めたリューイのそこは赤くなり、白く泡だったものに埋もれている。
「うまいか、リューイ」
「おいしい…」
口を放して呼吸をすればウィリディスが問いかけてくる。
リューイはそれに返答すると幸せそうに微笑んだ。
二人の笑顔を見たフィーディスはより奥へとリューイを穿つ。目をつぶり声を上げたリューイはウィリディスの足に爪を立てた。わずかなその痛みに眉をひそめるもののリューイの好きにさせる。
「リュー、そっちばっかりじゃなくて俺を見てよ。今リューを抱いてるのは俺なんだよ?」
「ふぐっ…んぁ…あ…フィー、ディス…もっと、突いて」
「そう、それでいいの」
リューイの視線がフィーディスへと向けば満足したように笑ったフィーディスは己の熱の先で幾度もリューイのしこりをこすった。
瞳から理性が消えたリューイは手にウィリディスの熱をつかんだまま喘ぐ。
匂い立つ甘いフェロモンにフィーディスもウィリディスも飲まれていくのを感じていた。
リューイの声にあおられるままにフィーディスはベッドにその体を押し付けて強く突き上げる。
ウィリディスはリューイの涙すら浮かぶ瞳を見つめリューイの舌を指でつまんでいた。
まるで発情期、ウィリディスはそう思っていた。ちゅっ、と音を立ててリューイの口から指を引き抜く。
リューイの唾液で濡れた己の指に舌を這わせる。
「あっ…んんん…っ!…っ!あぅ…ッも、おく、んっ、せつな、からぁ……ッむり、らから」
「うん、ぎゅうぎゅうって締まって、出してっておねだりされてる。いい子だね、リュー…たくさん、出してあげる」
「ふぃー…ぅっぁあっ、 はー…はーっ、やっ、や……」
フィーディスは体に巻き付いたリューイの足に強く引き寄せられながら己を奥まで突き刺す。
頭が真っ白になるかと思うほどの快感と同時に残っていた欲の残滓を注ぎ切った。
ずるっとリューイの足が力をなくしてベッドに落ちる。
涙や汗、よだれでぐちゃぐちゃの顔を見つめ額に口づける。
「気持ちよかったね、リュー…こんなに乱れて…俺の運命、本当かわいい…」
「かわいくな…」
フィーディスの言葉にかすかに言葉を返すもののリューイはそのまま気を失う。
己を引き抜き、二人分の精液が流れ出していく様を見つめた。
ウィリディスはリューイを静かに抱き上げるとベッドを降りる。フィーディスは追いかけようとするものの、ウィリディスの背中がついてくるなと言っているように思えてその場を動かなかった。
暖かなシャワーをリューイの体にかけて汗や精液を流す。浴室まで来る間にもリューイの足は流れ出してきた精液でひどく汚れていた。
「まったく…明日立てなかったらどうするつもりだ?」
触れるだけのキスをし、その身を清めた。
石鹸を泡立て丁寧に洗って行く。リューイは時折体を揺らすが起きる気配はなかった。
優しく撫できれいに洗えば柔らかなタオルでその体をくるむ。丁寧に水気をとれば再びベッドまで運んでいく。
フィーディスがベッドを離れ三人分の体液で汚れたベッドシーツを取り払っていた。
下半身だけパジャマを着なおした彼はドアを開けて廊下を通るメイドに替えを頼んでいたらしい。
リューイを風呂にいれてしばらくしてドアがノックされ、メイドが新しいシーツを持ってきた。
「若様」
「こちらでやる。すまなかったな」
メイドがベッドメイキングをやろうとすればそれを丁寧に断りリューイを室内のソファに寝かせる。
フィーディスはリューイを見つめていたがやがて浴室に向かった。
ベッドメイキングを終えたウィリディスはリューイを静かに抱き上げてベッドへと運ぶ。ふかふかの肌触りのいいベッドに横になればリューイの顔がほころんだように感じた。
「おやすみ、リューイ…また明日」
フィーディスが浴室から出てくる。フィーディスはウィリディスをにらむもののベッドの上にいるリューイに視線を戻せば駆け足気味に近寄りその寝顔を覗く。
穏やかな寝息を立てている様子にほっとしていた。
手を伸ばしてほほを優しく撫でる。
「ここで寝るつもりか」
「そのつもりですが何か問題でも?」
フィーディスとウィリディスは無言でにらみ合う。
同時に顔を背ければリューイを挟んでベッドに横になった。
互いにリューイの手をそれぞれ握り眠る。しかしウィリディスはすぐに眠ることができずリューイの横顔を見つめていた。
フィーディスは寝息を立てている。
ゆっくりと握った手を放せば一度だけ頭を撫でてベッドを降りた。足音を立てないようにベッドを離れて窓際に向かえば外を眺めるために置かれた椅子に腰かける。
ぼんやりと月明かりに照らされる庭を眺めながらアカテスに告げられたことを考えていた。
その答えが自分の中で出るわけがなかった。
「ウィル…」
小さな呼び声にはっとして振り向いた。
ベッドの上でリューイが体を起こしている。どれだけ考えていたのだろうか。先ほど見た時よりも庭に降り注ぐ明かりの量が変化していた。
「どうした、リューイ。喉が渇いたのなら水を持ってくるか」
「いらない」
リューイはそろそろと体を起こす。痛みがないか確認しているようであった。
ベッドから降りたリューイはウィリディスが先ほどまでかけていた布団を肩から羽織り、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そうしてウィリディスのもとに来れば足元にぺたんと腰を下ろした。ウィリディスの足に頭を乗せて寄りかかりながら外を見つめる。
「…どうしたの、ウィル」
「何がだ」
「少し空気が暗かったよ」
「そんなことはない」
「本当?」
リューイの目はウィリディスの言葉を信じてない。
口元に笑みを浮かべるとリューイから庭へと視線を移動させた。
「…都市の研究者には、その研究が人間にとって有用であると政府が判断した場合ある権利が与えられる…」
「権利?自由に実験道具が使えるとか?」
「………人体実験が必要になった際、申請を行えば、犯罪者に限りその人体を使って実験が行える、というものだ」
「犯罪者に限り…実験ができる」
「あぁ」
リューイは目を丸くする。
リューイが驚くのも無理はないだろう。知ってはいたが実際その制度を利用する研究者もいるらしい。
たとえ犯罪者とわかっていても実験に使うなどウィリディスはしたくはなかった。死ぬかもしれない実験なのだ。
「…犯罪者とはいっても、すでに刑が確定し、かなり重い刑を受けている人間に限る…人体実験を行った者は減刑をされることもあり、希望するものがいないわけではない…だが」
「Ω病の研究だから、Ωが実験体で、しかも下手するとα細胞のせいで死ぬことになるかもしれない?」
「あぁ」
リューイは唇を引き結んだ。
もしかしてアカテスはその話をウィリディスにしたのだろうか。
「父に、言われた。人体実験の申請を出してきたと。まぁ自ら希望してくるものはそうそういないとは思うんだが、いた場合受けていいものだろうかと悩んでいた」
リューイは言葉が出なかった。
そうやすやすとリューイが返答できるものでもない。ウィリディスは返答を期待していたわけではないだろう。
「わかってはいたんだ。人体実験を行わなければきちんとした結果は出せないことも。だが…どうしても、申請ができなかった」
「それは、Ωに同情したから」
「あぁ…考える必要など本来ならないのだろうな。少数の犠牲のもとで大勢が救われるなら。それに実験をしたとして必ずしも命を落とすとは限らない。だが罪を犯したものが必ずしも悪意を持って犯したわけではないこともある…そんなことを想ってしまうとどうしても、な」
「ウィル、優しすぎるでしょ…そんなウィルもいいと思うけど」
リューイは立ち上がればウィリディスの膝をまたいで座った。向き合い、見つめあえばリューイはウィリディスの両頬を挟んで笑いかける。
ウィリディスではきっと決断ができなかった。だからアカテスは代わりに行ったのだろう。
「ウィルがそんなことを言っていたらいつまでたってもクロエさんの体は戻ってこないよ。そうこうしてる間にウィルが死んじゃったら誰がクロエさんのために研究するの…?」
「だが、だれかを犠牲にしてまで俺は…」
「人間の、薬の開発には動物実験がよく用いられてるって聞くけど、人間がダメで動物はいいの?」
リューイの言葉に反論しようとしたがウィリディスはできなかった。
人か動物か。どちらの命が重いかなんて判断できるはずはない。
返事に窮してしまったウィリディスを見つめたリューイだって答えはわかるわけがない。
「ウィル…人体実験のことを誰かが悪く言うなら俺がウィルの盾になる。ウィリディスのやったことは間違ってない、きっとたくさんの人のためになることなんだって俺が代わりに叫んでやる」
リューイの瞳に射抜かれてウィリディスは動きを止める。
ふっとそこに宿っていた強い光が和らげばリューイはウィリディスを抱きしめた。
「何度だって言ってやる。俺はウィリディスを信じてる。だからあんたは自分の思うようにやればいい。人体実験しないっていうならそれもありだし、実験して、苦しんでる人を救うっていうならそれもありだ。ウィル、そばにいる。実験が終わって、クロエさんを取り戻せるまで、俺がそばにいて支えるから」
「……お前はどうして、そんなことを……いや…そうだな」
リューイを抱いてウィリディスは微笑む。
リューイがそばにいてくれるならば何があっても大丈夫な気がしている。
「ウィリディス…俺が愛した、大事なα…どんな批判も罵詈雑言も俺が受け止めてやる。だからそのまままっすぐ前を見て研究していけばいいよ」
リューイに思わず口づければまじめな話なのに、と文句を言う。
だが再び口づけたときには幸せそうに顔を蕩けさせていた。
抱きしめて鎖骨に口づければ声を堪える。
「寝るか、リューイ」
「またセックスするって言ったらぶんなぐるところだった」
「フィーディスを誘ったうえで再戦したのはお前だろう」
「だって物足りないしすっきりしなかったし」
「そうか…ならば次は俺一人で」
「そうだよ…ウィルだけで満足させて」
甘えた声で告げられた言葉にやはり今一度抱くべきだろうかと考えてしまったものの、少し眠たげなリューイを見ていれば寝かせてやらなければなるまいと判断し腕に抱き上げる。
ベッドに運ぶ途中でリューイは寝息を立てていた。
ふたたび横たわらせればフィーディスがリューイに甘えるように背中に額をこすりつけている。
思わぬものを見てしまい戸惑うもののリューイの隣に横になれば今度はリューイがウィリディスにすり寄ってくる。二人の体が冷えないようにしっかりと布団をかける。
「そばにいてくれ、リューイ…お前がいなければ俺はもう呼吸すらできないから」
リューイにささやきウィリディスも目を閉じる。
夜が明けるまであと僅かだが夢の世界はウィリディスを優しく迎えてくれた。
途中まではちゃんとゴムを付けていた。だが足らなかった。
「ふ…ぐっ、ん…んぁ」
「はぁ…まだ足らないのか。発情期ではないだろう」
仰向けになり、フィーディスの熱を胎内に受け入れながら変わらず硬いままのウィリディスの熱を口に咥える。
喉の奥まで咥えれば呼吸ができなくなり、ひどく苦しいがそれもまたよかった。
フィーディスはリューイを突き上げながら胸をいじる。腰をそらせくぐもった声を漏らすリューイを愛しそうに見つめているのを感じていた。
何度も貫かれ、二人の欲を受け止めたリューイのそこは赤くなり、白く泡だったものに埋もれている。
「うまいか、リューイ」
「おいしい…」
口を放して呼吸をすればウィリディスが問いかけてくる。
リューイはそれに返答すると幸せそうに微笑んだ。
二人の笑顔を見たフィーディスはより奥へとリューイを穿つ。目をつぶり声を上げたリューイはウィリディスの足に爪を立てた。わずかなその痛みに眉をひそめるもののリューイの好きにさせる。
「リュー、そっちばっかりじゃなくて俺を見てよ。今リューを抱いてるのは俺なんだよ?」
「ふぐっ…んぁ…あ…フィー、ディス…もっと、突いて」
「そう、それでいいの」
リューイの視線がフィーディスへと向けば満足したように笑ったフィーディスは己の熱の先で幾度もリューイのしこりをこすった。
瞳から理性が消えたリューイは手にウィリディスの熱をつかんだまま喘ぐ。
匂い立つ甘いフェロモンにフィーディスもウィリディスも飲まれていくのを感じていた。
リューイの声にあおられるままにフィーディスはベッドにその体を押し付けて強く突き上げる。
ウィリディスはリューイの涙すら浮かぶ瞳を見つめリューイの舌を指でつまんでいた。
まるで発情期、ウィリディスはそう思っていた。ちゅっ、と音を立ててリューイの口から指を引き抜く。
リューイの唾液で濡れた己の指に舌を這わせる。
「あっ…んんん…っ!…っ!あぅ…ッも、おく、んっ、せつな、からぁ……ッむり、らから」
「うん、ぎゅうぎゅうって締まって、出してっておねだりされてる。いい子だね、リュー…たくさん、出してあげる」
「ふぃー…ぅっぁあっ、 はー…はーっ、やっ、や……」
フィーディスは体に巻き付いたリューイの足に強く引き寄せられながら己を奥まで突き刺す。
頭が真っ白になるかと思うほどの快感と同時に残っていた欲の残滓を注ぎ切った。
ずるっとリューイの足が力をなくしてベッドに落ちる。
涙や汗、よだれでぐちゃぐちゃの顔を見つめ額に口づける。
「気持ちよかったね、リュー…こんなに乱れて…俺の運命、本当かわいい…」
「かわいくな…」
フィーディスの言葉にかすかに言葉を返すもののリューイはそのまま気を失う。
己を引き抜き、二人分の精液が流れ出していく様を見つめた。
ウィリディスはリューイを静かに抱き上げるとベッドを降りる。フィーディスは追いかけようとするものの、ウィリディスの背中がついてくるなと言っているように思えてその場を動かなかった。
暖かなシャワーをリューイの体にかけて汗や精液を流す。浴室まで来る間にもリューイの足は流れ出してきた精液でひどく汚れていた。
「まったく…明日立てなかったらどうするつもりだ?」
触れるだけのキスをし、その身を清めた。
石鹸を泡立て丁寧に洗って行く。リューイは時折体を揺らすが起きる気配はなかった。
優しく撫できれいに洗えば柔らかなタオルでその体をくるむ。丁寧に水気をとれば再びベッドまで運んでいく。
フィーディスがベッドを離れ三人分の体液で汚れたベッドシーツを取り払っていた。
下半身だけパジャマを着なおした彼はドアを開けて廊下を通るメイドに替えを頼んでいたらしい。
リューイを風呂にいれてしばらくしてドアがノックされ、メイドが新しいシーツを持ってきた。
「若様」
「こちらでやる。すまなかったな」
メイドがベッドメイキングをやろうとすればそれを丁寧に断りリューイを室内のソファに寝かせる。
フィーディスはリューイを見つめていたがやがて浴室に向かった。
ベッドメイキングを終えたウィリディスはリューイを静かに抱き上げてベッドへと運ぶ。ふかふかの肌触りのいいベッドに横になればリューイの顔がほころんだように感じた。
「おやすみ、リューイ…また明日」
フィーディスが浴室から出てくる。フィーディスはウィリディスをにらむもののベッドの上にいるリューイに視線を戻せば駆け足気味に近寄りその寝顔を覗く。
穏やかな寝息を立てている様子にほっとしていた。
手を伸ばしてほほを優しく撫でる。
「ここで寝るつもりか」
「そのつもりですが何か問題でも?」
フィーディスとウィリディスは無言でにらみ合う。
同時に顔を背ければリューイを挟んでベッドに横になった。
互いにリューイの手をそれぞれ握り眠る。しかしウィリディスはすぐに眠ることができずリューイの横顔を見つめていた。
フィーディスは寝息を立てている。
ゆっくりと握った手を放せば一度だけ頭を撫でてベッドを降りた。足音を立てないようにベッドを離れて窓際に向かえば外を眺めるために置かれた椅子に腰かける。
ぼんやりと月明かりに照らされる庭を眺めながらアカテスに告げられたことを考えていた。
その答えが自分の中で出るわけがなかった。
「ウィル…」
小さな呼び声にはっとして振り向いた。
ベッドの上でリューイが体を起こしている。どれだけ考えていたのだろうか。先ほど見た時よりも庭に降り注ぐ明かりの量が変化していた。
「どうした、リューイ。喉が渇いたのなら水を持ってくるか」
「いらない」
リューイはそろそろと体を起こす。痛みがないか確認しているようであった。
ベッドから降りたリューイはウィリディスが先ほどまでかけていた布団を肩から羽織り、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そうしてウィリディスのもとに来れば足元にぺたんと腰を下ろした。ウィリディスの足に頭を乗せて寄りかかりながら外を見つめる。
「…どうしたの、ウィル」
「何がだ」
「少し空気が暗かったよ」
「そんなことはない」
「本当?」
リューイの目はウィリディスの言葉を信じてない。
口元に笑みを浮かべるとリューイから庭へと視線を移動させた。
「…都市の研究者には、その研究が人間にとって有用であると政府が判断した場合ある権利が与えられる…」
「権利?自由に実験道具が使えるとか?」
「………人体実験が必要になった際、申請を行えば、犯罪者に限りその人体を使って実験が行える、というものだ」
「犯罪者に限り…実験ができる」
「あぁ」
リューイは目を丸くする。
リューイが驚くのも無理はないだろう。知ってはいたが実際その制度を利用する研究者もいるらしい。
たとえ犯罪者とわかっていても実験に使うなどウィリディスはしたくはなかった。死ぬかもしれない実験なのだ。
「…犯罪者とはいっても、すでに刑が確定し、かなり重い刑を受けている人間に限る…人体実験を行った者は減刑をされることもあり、希望するものがいないわけではない…だが」
「Ω病の研究だから、Ωが実験体で、しかも下手するとα細胞のせいで死ぬことになるかもしれない?」
「あぁ」
リューイは唇を引き結んだ。
もしかしてアカテスはその話をウィリディスにしたのだろうか。
「父に、言われた。人体実験の申請を出してきたと。まぁ自ら希望してくるものはそうそういないとは思うんだが、いた場合受けていいものだろうかと悩んでいた」
リューイは言葉が出なかった。
そうやすやすとリューイが返答できるものでもない。ウィリディスは返答を期待していたわけではないだろう。
「わかってはいたんだ。人体実験を行わなければきちんとした結果は出せないことも。だが…どうしても、申請ができなかった」
「それは、Ωに同情したから」
「あぁ…考える必要など本来ならないのだろうな。少数の犠牲のもとで大勢が救われるなら。それに実験をしたとして必ずしも命を落とすとは限らない。だが罪を犯したものが必ずしも悪意を持って犯したわけではないこともある…そんなことを想ってしまうとどうしても、な」
「ウィル、優しすぎるでしょ…そんなウィルもいいと思うけど」
リューイは立ち上がればウィリディスの膝をまたいで座った。向き合い、見つめあえばリューイはウィリディスの両頬を挟んで笑いかける。
ウィリディスではきっと決断ができなかった。だからアカテスは代わりに行ったのだろう。
「ウィルがそんなことを言っていたらいつまでたってもクロエさんの体は戻ってこないよ。そうこうしてる間にウィルが死んじゃったら誰がクロエさんのために研究するの…?」
「だが、だれかを犠牲にしてまで俺は…」
「人間の、薬の開発には動物実験がよく用いられてるって聞くけど、人間がダメで動物はいいの?」
リューイの言葉に反論しようとしたがウィリディスはできなかった。
人か動物か。どちらの命が重いかなんて判断できるはずはない。
返事に窮してしまったウィリディスを見つめたリューイだって答えはわかるわけがない。
「ウィル…人体実験のことを誰かが悪く言うなら俺がウィルの盾になる。ウィリディスのやったことは間違ってない、きっとたくさんの人のためになることなんだって俺が代わりに叫んでやる」
リューイの瞳に射抜かれてウィリディスは動きを止める。
ふっとそこに宿っていた強い光が和らげばリューイはウィリディスを抱きしめた。
「何度だって言ってやる。俺はウィリディスを信じてる。だからあんたは自分の思うようにやればいい。人体実験しないっていうならそれもありだし、実験して、苦しんでる人を救うっていうならそれもありだ。ウィル、そばにいる。実験が終わって、クロエさんを取り戻せるまで、俺がそばにいて支えるから」
「……お前はどうして、そんなことを……いや…そうだな」
リューイを抱いてウィリディスは微笑む。
リューイがそばにいてくれるならば何があっても大丈夫な気がしている。
「ウィリディス…俺が愛した、大事なα…どんな批判も罵詈雑言も俺が受け止めてやる。だからそのまままっすぐ前を見て研究していけばいいよ」
リューイに思わず口づければまじめな話なのに、と文句を言う。
だが再び口づけたときには幸せそうに顔を蕩けさせていた。
抱きしめて鎖骨に口づければ声を堪える。
「寝るか、リューイ」
「またセックスするって言ったらぶんなぐるところだった」
「フィーディスを誘ったうえで再戦したのはお前だろう」
「だって物足りないしすっきりしなかったし」
「そうか…ならば次は俺一人で」
「そうだよ…ウィルだけで満足させて」
甘えた声で告げられた言葉にやはり今一度抱くべきだろうかと考えてしまったものの、少し眠たげなリューイを見ていれば寝かせてやらなければなるまいと判断し腕に抱き上げる。
ベッドに運ぶ途中でリューイは寝息を立てていた。
ふたたび横たわらせればフィーディスがリューイに甘えるように背中に額をこすりつけている。
思わぬものを見てしまい戸惑うもののリューイの隣に横になれば今度はリューイがウィリディスにすり寄ってくる。二人の体が冷えないようにしっかりと布団をかける。
「そばにいてくれ、リューイ…お前がいなければ俺はもう呼吸すらできないから」
リューイにささやきウィリディスも目を閉じる。
夜が明けるまであと僅かだが夢の世界はウィリディスを優しく迎えてくれた。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる
水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。
「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」
過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。
ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。
孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる