7 / 80
6.4人でランチ(2)
しおりを挟む
常連の主婦軍団が来たらしく、普段なら良く話しかけてくるマスターがカウンターにへばりついて、主婦たちと話に興じている。盛り上がりの一瞬のスキを突いて、会計をお願いした。
「ごちそうさまでした」
大輝が喫茶店の扉に手をかけ、全員でマスターに手を振って外へ出た。
店の前で蓮がショッピングモールのある方向を指さした。
「俺と悠里、映画、観に行くから」
悠里が蓮の隣に並んで2人で手を振ってきた。千紗が振り返す。隣に立った大輝も頭の上で大きく手を振っていた。
歩いていく2人を見送って、大輝を見上げる。
「私もここで」
立ち去ろうとする千紗の腕を大輝がつかんできた。
「帰るの。まだ昼過ぎじゃん。俺らもどっか行こーよ」
純真無垢と表現してもいい目で千紗の顔をのぞきこむように見てきた。千紗は大輝から視線を外して、掴まれた腕を振りほどく。
「誰かに見られたらイヤだから行かない。女の嫉妬に巻き込まれるのはイヤなの」
こんなにも感情が乗るのかと自分でも驚くほどの暗い声になった。あまりにも低すぎて、反射的に大輝に失礼な言い方になったと反省して、外していた目線を大輝に戻した。大輝は口を少しとがらせて、悲しそうな目をしていた。
「そっか。嫉妬な。今日のだけでも面倒くさそうって思うよな」
今度は大輝が千紗から目線を外して、少し上を見上げる。
「でも、その言い方って、俺がイヤってわけじゃなさそうだな。それだけは良かった」
大輝を見上げていた千紗の目の前に影ができて、頭の上に何かが乗った。黒目を上にあげてみる。大輝の手が千紗の頭を撫でていた。とっさに後ろに下がって、頭に乗っていた手を振り落とした。心臓が大きく早く動き出す。
千紗は大輝に挨拶もせず、その場から逃げるように走った。
◇◇◇◇◇
高1のとき付き合っていた大学生の彼氏に頭を撫でられるのが好きだった。
でも千紗は浮気相手で、本命の彼女から髪にガムをぬりつけられた。おかげで髪を切る羽目になった。
あれは彼女の強い嫉妬から来たものだと思っている。
最近、夢にも見るうえに、大輝に頭を撫でられて、鮮明にその時のことが思い出された。
嫌がらせを受けた日から髪はショートボブのままだ。
「ごちそうさまでした」
大輝が喫茶店の扉に手をかけ、全員でマスターに手を振って外へ出た。
店の前で蓮がショッピングモールのある方向を指さした。
「俺と悠里、映画、観に行くから」
悠里が蓮の隣に並んで2人で手を振ってきた。千紗が振り返す。隣に立った大輝も頭の上で大きく手を振っていた。
歩いていく2人を見送って、大輝を見上げる。
「私もここで」
立ち去ろうとする千紗の腕を大輝がつかんできた。
「帰るの。まだ昼過ぎじゃん。俺らもどっか行こーよ」
純真無垢と表現してもいい目で千紗の顔をのぞきこむように見てきた。千紗は大輝から視線を外して、掴まれた腕を振りほどく。
「誰かに見られたらイヤだから行かない。女の嫉妬に巻き込まれるのはイヤなの」
こんなにも感情が乗るのかと自分でも驚くほどの暗い声になった。あまりにも低すぎて、反射的に大輝に失礼な言い方になったと反省して、外していた目線を大輝に戻した。大輝は口を少しとがらせて、悲しそうな目をしていた。
「そっか。嫉妬な。今日のだけでも面倒くさそうって思うよな」
今度は大輝が千紗から目線を外して、少し上を見上げる。
「でも、その言い方って、俺がイヤってわけじゃなさそうだな。それだけは良かった」
大輝を見上げていた千紗の目の前に影ができて、頭の上に何かが乗った。黒目を上にあげてみる。大輝の手が千紗の頭を撫でていた。とっさに後ろに下がって、頭に乗っていた手を振り落とした。心臓が大きく早く動き出す。
千紗は大輝に挨拶もせず、その場から逃げるように走った。
◇◇◇◇◇
高1のとき付き合っていた大学生の彼氏に頭を撫でられるのが好きだった。
でも千紗は浮気相手で、本命の彼女から髪にガムをぬりつけられた。おかげで髪を切る羽目になった。
あれは彼女の強い嫉妬から来たものだと思っている。
最近、夢にも見るうえに、大輝に頭を撫でられて、鮮明にその時のことが思い出された。
嫌がらせを受けた日から髪はショートボブのままだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!
satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。
働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。
早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。
そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。
大丈夫なのかなぁ?
先生
藤谷 郁
恋愛
薫は28歳の会社員。
町の絵画教室で、穏やかで優しい先生と出会い、恋をした。
ひとまわりも年上の島先生。独身で、恋人もいないと噂されている。
だけど薫は恋愛初心者。
どうすればいいのかわからなくて……
※他サイトに掲載した過去作品を転載(全年齢向けに改稿)
イケメンエリート軍団??何ですかそれ??【イケメンエリートシリーズ第二弾】
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団の異色男子
ジャスティン・レスターの意外なお話
矢代木の実(23歳)
借金地獄の元カレから身をひそめるため
友達の家に居候のはずが友達に彼氏ができ
今はネットカフェを放浪中
「もしかして、君って、家出少女??」
ある日、ビルの駐車場をうろついてたら
金髪のイケメンの外人さんに
声をかけられました
「寝るとこないないなら、俺ん家に来る?
あ、俺は、ここの27階で働いてる
ジャスティンって言うんだ」
「………あ、でも」
「大丈夫、何も心配ないよ。だって俺は…
女の子には興味はないから」
10年引きこもりの私が外に出たら、御曹司の妻になりました
専業プウタ
恋愛
25歳の桜田未来は中学生から10年以上引きこもりだったが、2人暮らしの母親の死により外に出なくてはならなくなる。城ヶ崎冬馬は女遊びの激しい大手アパレルブランドの副社長。彼をストーカーから身を張って助けた事で未来は一時的に記憶喪失に陥る。冬馬はちょっとした興味から、未来は自分の恋人だったと偽る。冬馬は未来の純粋さと直向きさに惹かれていき、嘘が明らかになる日を恐れながらも未来の為に自分を変えていく。そして、未来は恐れもなくし、愛する人の胸に飛び込み夢を叶える扉を自ら開くのだった。
イケメン警視、アルバイトで雇った恋人役を溺愛する。
楠ノ木雫
恋愛
蒸発した母の借金を擦り付けられた主人公瑠奈は、お見合い代行のアルバイトを受けた。だが、そのお見合い相手、矢野湊に借金の事を見破られ3ヶ月間恋人役を務めるアルバイトを提案された。瑠奈はその報酬に飛びついたが……
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
【完結】育てた後輩を送り出したらハイスペになって戻ってきました
藤浪保
恋愛
大手IT会社に勤める早苗は会社の歓迎会でかつての後輩の桜木と再会した。酔っ払った桜木を家に送った早苗は押し倒され、キスに翻弄されてそのまま関係を持ってしまう。
次の朝目覚めた早苗は前夜の記憶をなくし、関係を持った事しか覚えていなかった。
それは、ホントに不可抗力で。
樹沙都
恋愛
これ以上他人に振り回されるのはまっぴらごめんと一大決意。人生における全ての無駄を排除し、おひとりさまを謳歌する歩夢の前に、ひとりの男が立ちはだかった。
「まさか、夫の顔……を、忘れたとは言わないだろうな? 奥さん」
その婚姻は、天の啓示か、はたまた……ついうっかり、か。
恋に仕事に人間関係にと翻弄されるお人好しオンナ関口歩夢と腹黒大魔王小林尊の攻防戦。
まさにいま、開始のゴングが鳴った。
まあね、所詮、人生は不可抗力でできている。わけよ。とほほっ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる