【完結】恋なんてしない、つもりだったのに。

高羽志雨

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21.大輝の変化(3)

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 HRが終わり、担任教師が教室を出ていく。
 クラスメイトの行動は、慌ただしく席を立って部活に向かう者、放課後の時間を持て余してのんびり友人同士で会話する者、無駄のない動きでスッと帰っていく者さまざまだ。
 
 千紗は通学鞄にノートや教科書を入れていく。机の上のペンケースを手に取ると、ファスナーについているライオンのキーホルダーが目に入った。動物園で買った物だ。大輝はウサギのキーホルダーを持っている。
 これなら返事をしてくれるかもしれない。
 千紗は動いた気配のない後ろの席を振り返った。

「ね、南くん。ウサギのキーホルダーってどこにつけた?」

 机の上に横向きで突っ伏している大輝は、肘をついた手に頭を乗せ、グラウンドを見ていた。
 声が聞こえたらしく、大輝が首を動かす。
 そのまま何も言わずに体を起こして席を立った。

 手に持った通学鞄を千紗がいる側の肩に担ぐ。横目で千紗を見て、すぐに目をそらした。何も言葉を発しないまま、千紗に背を向け、教室の扉へ向かって歩き出した。
 朝はただ機嫌が良くなかっただけかもしれない。そう思おうとしていたけれど、簡単に打ち砕かれた。やはり、大輝は自分と話す気はないらしい。
 
 去っていく大輝の後ろ姿をぼんやりと眺める。背中に垂れた鞄のポケットのファスナーにウサギが揺れていた。
千紗はそれを凝視した。

 大輝が廊下に出て右に曲がり、顔を教室の中へと向ける。美人過ぎる彼の顔は無表情だと冷たく感じる。その目が自分を見たような気がした。

 彼の態度の変化を気にすることはないのかもしれない。
 そう思うことにした。
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