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出逢うべくして
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「よし!じゃあこれにて最後のホームルームは終了。3年1組、解散!」
鷲尾先生の言葉に、みんなは泣き笑いの表情で抱き合う。
「いやーん、寂しい」
「元気でね、また会おうね」
「先生、ぎっくり腰気をつけてね!」
「あはは!ほんとほんと」
名残は尽きず、みんなはそのあとも肩を組んで写真を撮ったり、固いハグを交わしたりと、賑やかに盛り上がっていた。
「結衣」
ふいに聞こえてきた声に、教室のざわめきが一瞬にして消える。
「校門で待ってるから」
注目を浴びながら教室のドアに片手をかけてそう言うと、くるりと踵を返して去って行く工藤くん。
みんなはその後ろ姿を見送ってから、一斉に「きゃー!」と悲鳴を上げた。
「なに?!もう、キュンキュン!」
「結衣、だって。いやーん!樋口さんってば!」
なぜだか私がバシッと背中を叩かれる。
「あの答辞も、すごかったよね」
「うんうん。もう私、映画のワンシーン観てるのかと思っちゃった」
「私もー!愛が溢れてたよね」
周りを囲まれながら、私はうつむいてドギマギする。
「ほら、樋口さん!早く行かないと。待ってるよ?工藤くん」
「そうだよ。私達、送って行ってあげるから」
お、送るとは?と眉を寄せていると、沢田さんが私のカバンを手渡してくれた。
「さ、行くわよ」
ワイワイと取り囲まれながら、私は階段を下りて昇降口から外へ出た。
真っ直ぐ先に、校門の脇に寄りかかって佇んでいる工藤くんの姿が見える。
「樋口さん、ほら!行って」
「え、あ、うん」
なぜか昇降口の扉の陰に身を潜めるみんなに促されて、私は校門へと歩き出す。
「工藤くん」
そっと呼びかけると工藤くんは顔を上げて、私を見るなりにっこりと笑う。
「結衣、卒業おめでとう」
「あ、ありがとう。工藤くんも、卒業おめでとう」
「ありがとう…って、結衣?目、真っ赤だぞ?」
顔を覗き込まれて、私は急にあの時の気持ちを思い出した。
「そうだ、工藤くん!ひどいよ、もう。どうしてあんな…」
そこまで言うと、またしても涙が溢れてきた。
「胸が痛くて苦しくて、大変だったんだからね?!私のこと散々泣かせて、それなのに抱きしめに来てもくれなくて。バカバカ!工藤くんのバカ!」
泣きながら工藤くんの胸をグーで叩く。
「いてっ。結衣?ごめんって。ほら」
工藤くんは、暴れる私を大きな腕でギュッと抱きしめる。
「ステージの上から泣いてる結衣が見えて、すぐにでも飛んで行きたかった。抱きしめて頭をなでて、優しくキスしたかった」
そう言ってから、すれば良かった?と聞かれて、私は目をむく。
「ダメ!」
「あはは!そう言うと思ってがまんした。でも、もういいだろ?」
そう言うと工藤くんは、そっと私の頭をなでて顔を寄せる。
「ダメだってば!ここ、学校だよ?」
思わず工藤くんの頬を手で押し返す。
「ええー?もう卒業したからいいでしょ」
「なに言ってんの、卒業しても学校は学校だよ。それに…」
私はちらりと昇降口を振り返る。
扉から顔を覗かせていたみんなが、慌てて隠れるのが見えた。
「ん?なにあれ」
「なにって…。工藤くんがあんなことするからでしょ?」
「あんなことって?」
「みんなの前で、その…。私に声かけたりするから」
「は?それがどうかしたのか?」
「もう!工藤くん、女心が分かってなさすぎ!」
私はますます憤慨する。
「よく分かんないけど、そんな怒るなって。せっかく結衣の可愛い制服姿を、最後にしっかり見ておこうと思ってるんだからさ」
うっ…、と私は言葉に詰まる。
またしても私のご機嫌は、工藤くんの甘い言葉でコロリと直されてしまった。
「ちょうどいいから、写真頼もう。誰かシャッター押してくれる?」
工藤くんが声をかけると、わらわらと昇降口から女の子達が出て来た。
「はーい、喜んで!」
「ほら、二人並んで」
「あ、工藤くん。肩抱いてあげてよ」
は?いや、あの…と戸惑う私を尻目に、女の子達はなぜだか自分のスマートフォンを取り出してパシャパシャと何枚も写真を撮る。
「いいですねー。じゃあ今度は二人で見つめ合って」
え、ええ?と尻込みしていると、結衣、と工藤くんに呼ばれた。
咄嗟に視線を上げると、工藤くんは優しく微笑んで私を見つめる。
「きゃー!すてき!そのままそのまま」
まるでブライダルフォトのように、そのあとも色んなポーズを要求される。
私よりも、撮影している女の子達の方が遥かに盛り上がっていた。
「この写真、あとでたーくさん転送するからね!」
「あ、ありがとう…」
じゃあ、あとはお二人でごゆっくり、とみんなは手を振って帰っていった。
「ねえ、結衣」
「ん?なあに?」
誰もいない校庭の片隅。
ベンチに座って私達は静かに話をする。
「卒業アルバム見てたら、1年生の時の結衣の写真を見つけてさ。可愛いなーってニヤニヤしてた。なんで俺この時、結衣の可愛さに気づかなかったんだ?って、昔の自分に憤慨してた」
「ふふっ、また3年前の自分に『苦言を呈する』ですか?」
「そう。この馬鹿者、目を覚ませ!って」
あはは!と私は思わず笑ってしまう。
「そしたら俺は、3年間ずっと結衣と一緒にいられたのに。毎日学校で会えたし、色んな行事も一緒に楽しめて、同じ気持ちを共有できたのにって」
確かにそうだなと、私も少し後悔の念に駆られた。
「だけどもしその時に俺達が接触してても、つき合うことにはならなかったかもしれない。あの時、進路を考える時期に結衣と一緒に時間を過ごしたから、俺は結衣の人柄に惹かれたんだ。恋愛なんて全く興味がなくて、誰かを好きになったことも、つき合いたいと思ったこともなかったけど、政府のヘンテコリンな政策のおかげで結衣とお試しデートすることになった。それが俺の運命だったんだなって。俺は出逢うべき時に出逢うべくして、結衣に逢えたんだ」
そう言うと工藤くんは私に笑顔を向ける。
「この先の時間は、ずっと結衣と一緒にいる。大人の女性になって、社会人になって、いつかお母さんになる結衣を、俺がどんな時もそばで支えて、必ずこの手で守っていく。この学校で結衣と出逢えた奇跡に、いつまでも感謝しながらね」
私は目を潤ませながら、工藤くんに頷いてみせた。
「私も一生感謝します。工藤くんと出逢えたこと。工藤くんが、私と一緒に時間を過ごしてくれたこと。私の甘い考えに気づかせてくれたこと。一緒に受験がんばろうって、励ましてくれたこと。あの時、階段の踊り場で、いつの間にかこんなにも大切な存在になっていたって言ってくれたこと」
制服の上からネックレスを握りしめて、言葉を続ける。
「今、高校生活を振り返って、こんなにも幸せな気持ちになれるのも工藤くんのおかげ。工藤くん、私と出逢ってくれて本当にありがとう」
「結衣…」
工藤くんは優しく私を抱き寄せた。
そして耳元でささやく。
「結衣、キスしていい?」
「ダメ!ここ学校だってば」
「分かってるよ。俺達が出逢った大切な場所だ」
「だけどダメ!」
「ちぇっ。結衣は真面目だな」
そう言って身体を離しながら、工藤くんはさり気なく私の頬にチュッとキスをした。
「あー!ダメって言ったのに!」
「こんなのキスに入るかよ。海外では単なる挨拶だ」
「でもここは日本なの!」
「ほっぺにチューなんて、今どき小学生でもしてるぞ?」
「してません!」
やれやれと肩をすくめて、工藤くんは立ち上がる。
「さてと。そろそろ帰ろっか」
「そうだね」
手を繋いで歩き出すと、工藤くんはまたしても私の耳元でささやいた。
「校門出たらキスな」
「はあー?!もう、工藤くん!」
あはは!と笑い出す工藤くんに、呆れながらもつられて笑ってしまい、私達は仲良く手を繋いだまま学校をあとにした。
鷲尾先生の言葉に、みんなは泣き笑いの表情で抱き合う。
「いやーん、寂しい」
「元気でね、また会おうね」
「先生、ぎっくり腰気をつけてね!」
「あはは!ほんとほんと」
名残は尽きず、みんなはそのあとも肩を組んで写真を撮ったり、固いハグを交わしたりと、賑やかに盛り上がっていた。
「結衣」
ふいに聞こえてきた声に、教室のざわめきが一瞬にして消える。
「校門で待ってるから」
注目を浴びながら教室のドアに片手をかけてそう言うと、くるりと踵を返して去って行く工藤くん。
みんなはその後ろ姿を見送ってから、一斉に「きゃー!」と悲鳴を上げた。
「なに?!もう、キュンキュン!」
「結衣、だって。いやーん!樋口さんってば!」
なぜだか私がバシッと背中を叩かれる。
「あの答辞も、すごかったよね」
「うんうん。もう私、映画のワンシーン観てるのかと思っちゃった」
「私もー!愛が溢れてたよね」
周りを囲まれながら、私はうつむいてドギマギする。
「ほら、樋口さん!早く行かないと。待ってるよ?工藤くん」
「そうだよ。私達、送って行ってあげるから」
お、送るとは?と眉を寄せていると、沢田さんが私のカバンを手渡してくれた。
「さ、行くわよ」
ワイワイと取り囲まれながら、私は階段を下りて昇降口から外へ出た。
真っ直ぐ先に、校門の脇に寄りかかって佇んでいる工藤くんの姿が見える。
「樋口さん、ほら!行って」
「え、あ、うん」
なぜか昇降口の扉の陰に身を潜めるみんなに促されて、私は校門へと歩き出す。
「工藤くん」
そっと呼びかけると工藤くんは顔を上げて、私を見るなりにっこりと笑う。
「結衣、卒業おめでとう」
「あ、ありがとう。工藤くんも、卒業おめでとう」
「ありがとう…って、結衣?目、真っ赤だぞ?」
顔を覗き込まれて、私は急にあの時の気持ちを思い出した。
「そうだ、工藤くん!ひどいよ、もう。どうしてあんな…」
そこまで言うと、またしても涙が溢れてきた。
「胸が痛くて苦しくて、大変だったんだからね?!私のこと散々泣かせて、それなのに抱きしめに来てもくれなくて。バカバカ!工藤くんのバカ!」
泣きながら工藤くんの胸をグーで叩く。
「いてっ。結衣?ごめんって。ほら」
工藤くんは、暴れる私を大きな腕でギュッと抱きしめる。
「ステージの上から泣いてる結衣が見えて、すぐにでも飛んで行きたかった。抱きしめて頭をなでて、優しくキスしたかった」
そう言ってから、すれば良かった?と聞かれて、私は目をむく。
「ダメ!」
「あはは!そう言うと思ってがまんした。でも、もういいだろ?」
そう言うと工藤くんは、そっと私の頭をなでて顔を寄せる。
「ダメだってば!ここ、学校だよ?」
思わず工藤くんの頬を手で押し返す。
「ええー?もう卒業したからいいでしょ」
「なに言ってんの、卒業しても学校は学校だよ。それに…」
私はちらりと昇降口を振り返る。
扉から顔を覗かせていたみんなが、慌てて隠れるのが見えた。
「ん?なにあれ」
「なにって…。工藤くんがあんなことするからでしょ?」
「あんなことって?」
「みんなの前で、その…。私に声かけたりするから」
「は?それがどうかしたのか?」
「もう!工藤くん、女心が分かってなさすぎ!」
私はますます憤慨する。
「よく分かんないけど、そんな怒るなって。せっかく結衣の可愛い制服姿を、最後にしっかり見ておこうと思ってるんだからさ」
うっ…、と私は言葉に詰まる。
またしても私のご機嫌は、工藤くんの甘い言葉でコロリと直されてしまった。
「ちょうどいいから、写真頼もう。誰かシャッター押してくれる?」
工藤くんが声をかけると、わらわらと昇降口から女の子達が出て来た。
「はーい、喜んで!」
「ほら、二人並んで」
「あ、工藤くん。肩抱いてあげてよ」
は?いや、あの…と戸惑う私を尻目に、女の子達はなぜだか自分のスマートフォンを取り出してパシャパシャと何枚も写真を撮る。
「いいですねー。じゃあ今度は二人で見つめ合って」
え、ええ?と尻込みしていると、結衣、と工藤くんに呼ばれた。
咄嗟に視線を上げると、工藤くんは優しく微笑んで私を見つめる。
「きゃー!すてき!そのままそのまま」
まるでブライダルフォトのように、そのあとも色んなポーズを要求される。
私よりも、撮影している女の子達の方が遥かに盛り上がっていた。
「この写真、あとでたーくさん転送するからね!」
「あ、ありがとう…」
じゃあ、あとはお二人でごゆっくり、とみんなは手を振って帰っていった。
「ねえ、結衣」
「ん?なあに?」
誰もいない校庭の片隅。
ベンチに座って私達は静かに話をする。
「卒業アルバム見てたら、1年生の時の結衣の写真を見つけてさ。可愛いなーってニヤニヤしてた。なんで俺この時、結衣の可愛さに気づかなかったんだ?って、昔の自分に憤慨してた」
「ふふっ、また3年前の自分に『苦言を呈する』ですか?」
「そう。この馬鹿者、目を覚ませ!って」
あはは!と私は思わず笑ってしまう。
「そしたら俺は、3年間ずっと結衣と一緒にいられたのに。毎日学校で会えたし、色んな行事も一緒に楽しめて、同じ気持ちを共有できたのにって」
確かにそうだなと、私も少し後悔の念に駆られた。
「だけどもしその時に俺達が接触してても、つき合うことにはならなかったかもしれない。あの時、進路を考える時期に結衣と一緒に時間を過ごしたから、俺は結衣の人柄に惹かれたんだ。恋愛なんて全く興味がなくて、誰かを好きになったことも、つき合いたいと思ったこともなかったけど、政府のヘンテコリンな政策のおかげで結衣とお試しデートすることになった。それが俺の運命だったんだなって。俺は出逢うべき時に出逢うべくして、結衣に逢えたんだ」
そう言うと工藤くんは私に笑顔を向ける。
「この先の時間は、ずっと結衣と一緒にいる。大人の女性になって、社会人になって、いつかお母さんになる結衣を、俺がどんな時もそばで支えて、必ずこの手で守っていく。この学校で結衣と出逢えた奇跡に、いつまでも感謝しながらね」
私は目を潤ませながら、工藤くんに頷いてみせた。
「私も一生感謝します。工藤くんと出逢えたこと。工藤くんが、私と一緒に時間を過ごしてくれたこと。私の甘い考えに気づかせてくれたこと。一緒に受験がんばろうって、励ましてくれたこと。あの時、階段の踊り場で、いつの間にかこんなにも大切な存在になっていたって言ってくれたこと」
制服の上からネックレスを握りしめて、言葉を続ける。
「今、高校生活を振り返って、こんなにも幸せな気持ちになれるのも工藤くんのおかげ。工藤くん、私と出逢ってくれて本当にありがとう」
「結衣…」
工藤くんは優しく私を抱き寄せた。
そして耳元でささやく。
「結衣、キスしていい?」
「ダメ!ここ学校だってば」
「分かってるよ。俺達が出逢った大切な場所だ」
「だけどダメ!」
「ちぇっ。結衣は真面目だな」
そう言って身体を離しながら、工藤くんはさり気なく私の頬にチュッとキスをした。
「あー!ダメって言ったのに!」
「こんなのキスに入るかよ。海外では単なる挨拶だ」
「でもここは日本なの!」
「ほっぺにチューなんて、今どき小学生でもしてるぞ?」
「してません!」
やれやれと肩をすくめて、工藤くんは立ち上がる。
「さてと。そろそろ帰ろっか」
「そうだね」
手を繋いで歩き出すと、工藤くんはまたしても私の耳元でささやいた。
「校門出たらキスな」
「はあー?!もう、工藤くん!」
あはは!と笑い出す工藤くんに、呆れながらもつられて笑ってしまい、私達は仲良く手を繋いだまま学校をあとにした。
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