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62話
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あの事件に触れないよう説明するのは難しいというか、秋星に思うところがあるだけに上手く言いにくい。とりあえず、吸血する際に血を見ることで倒れやすいとは辛うじて伝えた。
「あとな、風呂入る時も気ぃつけたほうがええみたいやな」
「へぇ。血の巡りよくなりそうなイメージあるのにな」
「やから毎回俺が一緒に入ったろか」
ついでに唇に指を当て、ニッコリと言えば照れるどころかドン引きされたし、実際別々に入った。
邦一の反応に、この野郎と内心面白くない秋星は嫌がるのがわかっていて「とりあえず今日は様子見とかなあかんからな、俺の布団で一緒に寝ぇ」と言い切れば「そんな必要ないだろ」と即答される。
「クニは可愛くなくなったなぁ」
「可愛いんじゃないのか」
「可愛い、言われたほぉが嬉しいんか」
「そんな訳あるか。とりあえず俺は自分の……」
「俺に仕えてんねやったらそれくらい俺の言うこと聞きぃ」
「むしろいつだって聞かされてるだろ……!」
結局、邦一が食べ損ねた夕食を、秋星も一緒に食べることを条件にその日は共に寝ることになった。
「お前、俺と一緒にご飯、食べたかったんか?」
「……別にそれでもいいけど、こうでもしないとお前、夕食抜く気だっただろ」
「何で俺が食べてへんって思うねん。クニが眠ってる時に何でちゃんと食べてるて、そこは思えへんねん」
本当に気分を害しているのではないが、ムッとした顔を邦一へ向ければため息を吐かれた。
「お前、割りと失礼なやっちゃよな」
「俺がか。だって秋星、俺がいちいち言わなきゃすぐ、食事をサボろうとするだろ」
「当たり前やろ。何でこんなもん、食わなあかんねん」
「人間と共に生きてくためだろ、わかってるくせに」
「別にアホみたいに律儀に三食食べんでも人間にバレへんやんか」
子どもの頃はずっと関西の祖母宅で過ごしたのもあって、秋星はどうにもしっかり朝昼晩と人間の食事をする行為が慣れない。姉の秋穂は普段でもしとやかに黙々と食べているが、秋星としてはできれば避けたい。
「何でそんな嫌なんだよ。栄養にならんからか?」
確かに何の糧にもならない。
「お前な、それこそ毒やないから花食え、言われたら喜んで食うか?」
「食べないけど」
「せやろ? 一緒や。全然美味しないし感触も嫌やし、せやのに何の栄養にもならんねんで? 何で食べなアカンねんってなるやろ」
すると邦一が「今のはまだわかりやすいな」と少し笑ってきた。基本的にあまり笑わないので秋星としては嬉しくなるのだが、顔には出さずに皿を邦一へ押しやる。
「ほんだらクニが食べて」
「駄目」
「美味しい、思うもんが食えばえぇんや」
「……チョコレートは食べるくせに」
「あれは別や。前にも説明したやろ。それなりに糧にはなるしな」
すると邦一が今度は怪訝な顔をしてくる。
「何やねん」
「他にも血が綺麗になったりサラサラになる食べ物はあるぞ」
「人間の尺度でもの言わんといて。体のつくりが全然ちゃうんやからな。だいたいお前ら人間かて、美味しい言うて食べる葉っぱと食べ物の訳ないやろって思てる葉っぱあるやろ」
秋星の言葉に、邦一は納得したように唸っていた。それでも結局食事はさせられた。
「本当に様子見るためか」
布団を二人分敷こうとした邦一に「一つでえぇんや」と言えば一応言われた通りにしながらも微妙な顔で聞いてきた。
「そぉいうこと聞くところがクニが色気ないまだまだアカンとこやねん」
「様子見とどう関係あるんだよ……」
「えぇからさっさと敷きぃ」
ため息を吐きながらも邦一は素直に準備をする。
「……夏にこんな狭い状態で寝るとか、多分暑くて寝られないぞ」
敷いた布団に早速入る秋星に、邦一は呆れたような顔を向けてくる。
「お前が心配すんのはそれだけなん?」
文句を言いながらも布団の中へ入ってくる邦一を秋星はじっと見る。
「どういう意味?」
「俺にさんざん血ぃ吸われたり性的なことされてる上に、お前から聞いてきたんやで、俺がお前のこと好きなんかって」
別に何もする気はない。血は既に飲んでいるし、原因はまた違うとはいえ倒れた邦一を襲いたいとも思わない。ただ、本当のところは嫌がらせでも何でもなく、相当久しぶりに一緒に眠りたかっただけだ。だがそうとは言わずに秋星はニッコリと邦一を見た。同じく秋星を見ていた邦一は「ああ」と呟きながら、そのまま横になってきた。
「いくらろくでもない秋星でもさ、俺が倒れたその日に何かしてくるとは俺も思ってないからな」
「……何やねん、それ……」
むしろ秋星は邦一の顔を見ていられなくなり、寝返りを打つ。
「あれ? 暑くないな……」
背中から邦一が呟いている声が聞こえてきた。
……当たり前や。俺の体温はあってないようなもんや、言うたやろが。
内心呟きながらも、秋星はそのまま黙って背を向けたままでいる。
「……何か……一緒に寝るの、懐かしいな……」
すると、また邦一が呟いた。秋星は込み上げてくるものを感じ、そっと目を閉じる。
「……そうやな……」
秋星も静かに声に出して呟いた。
「あとな、風呂入る時も気ぃつけたほうがええみたいやな」
「へぇ。血の巡りよくなりそうなイメージあるのにな」
「やから毎回俺が一緒に入ったろか」
ついでに唇に指を当て、ニッコリと言えば照れるどころかドン引きされたし、実際別々に入った。
邦一の反応に、この野郎と内心面白くない秋星は嫌がるのがわかっていて「とりあえず今日は様子見とかなあかんからな、俺の布団で一緒に寝ぇ」と言い切れば「そんな必要ないだろ」と即答される。
「クニは可愛くなくなったなぁ」
「可愛いんじゃないのか」
「可愛い、言われたほぉが嬉しいんか」
「そんな訳あるか。とりあえず俺は自分の……」
「俺に仕えてんねやったらそれくらい俺の言うこと聞きぃ」
「むしろいつだって聞かされてるだろ……!」
結局、邦一が食べ損ねた夕食を、秋星も一緒に食べることを条件にその日は共に寝ることになった。
「お前、俺と一緒にご飯、食べたかったんか?」
「……別にそれでもいいけど、こうでもしないとお前、夕食抜く気だっただろ」
「何で俺が食べてへんって思うねん。クニが眠ってる時に何でちゃんと食べてるて、そこは思えへんねん」
本当に気分を害しているのではないが、ムッとした顔を邦一へ向ければため息を吐かれた。
「お前、割りと失礼なやっちゃよな」
「俺がか。だって秋星、俺がいちいち言わなきゃすぐ、食事をサボろうとするだろ」
「当たり前やろ。何でこんなもん、食わなあかんねん」
「人間と共に生きてくためだろ、わかってるくせに」
「別にアホみたいに律儀に三食食べんでも人間にバレへんやんか」
子どもの頃はずっと関西の祖母宅で過ごしたのもあって、秋星はどうにもしっかり朝昼晩と人間の食事をする行為が慣れない。姉の秋穂は普段でもしとやかに黙々と食べているが、秋星としてはできれば避けたい。
「何でそんな嫌なんだよ。栄養にならんからか?」
確かに何の糧にもならない。
「お前な、それこそ毒やないから花食え、言われたら喜んで食うか?」
「食べないけど」
「せやろ? 一緒や。全然美味しないし感触も嫌やし、せやのに何の栄養にもならんねんで? 何で食べなアカンねんってなるやろ」
すると邦一が「今のはまだわかりやすいな」と少し笑ってきた。基本的にあまり笑わないので秋星としては嬉しくなるのだが、顔には出さずに皿を邦一へ押しやる。
「ほんだらクニが食べて」
「駄目」
「美味しい、思うもんが食えばえぇんや」
「……チョコレートは食べるくせに」
「あれは別や。前にも説明したやろ。それなりに糧にはなるしな」
すると邦一が今度は怪訝な顔をしてくる。
「何やねん」
「他にも血が綺麗になったりサラサラになる食べ物はあるぞ」
「人間の尺度でもの言わんといて。体のつくりが全然ちゃうんやからな。だいたいお前ら人間かて、美味しい言うて食べる葉っぱと食べ物の訳ないやろって思てる葉っぱあるやろ」
秋星の言葉に、邦一は納得したように唸っていた。それでも結局食事はさせられた。
「本当に様子見るためか」
布団を二人分敷こうとした邦一に「一つでえぇんや」と言えば一応言われた通りにしながらも微妙な顔で聞いてきた。
「そぉいうこと聞くところがクニが色気ないまだまだアカンとこやねん」
「様子見とどう関係あるんだよ……」
「えぇからさっさと敷きぃ」
ため息を吐きながらも邦一は素直に準備をする。
「……夏にこんな狭い状態で寝るとか、多分暑くて寝られないぞ」
敷いた布団に早速入る秋星に、邦一は呆れたような顔を向けてくる。
「お前が心配すんのはそれだけなん?」
文句を言いながらも布団の中へ入ってくる邦一を秋星はじっと見る。
「どういう意味?」
「俺にさんざん血ぃ吸われたり性的なことされてる上に、お前から聞いてきたんやで、俺がお前のこと好きなんかって」
別に何もする気はない。血は既に飲んでいるし、原因はまた違うとはいえ倒れた邦一を襲いたいとも思わない。ただ、本当のところは嫌がらせでも何でもなく、相当久しぶりに一緒に眠りたかっただけだ。だがそうとは言わずに秋星はニッコリと邦一を見た。同じく秋星を見ていた邦一は「ああ」と呟きながら、そのまま横になってきた。
「いくらろくでもない秋星でもさ、俺が倒れたその日に何かしてくるとは俺も思ってないからな」
「……何やねん、それ……」
むしろ秋星は邦一の顔を見ていられなくなり、寝返りを打つ。
「あれ? 暑くないな……」
背中から邦一が呟いている声が聞こえてきた。
……当たり前や。俺の体温はあってないようなもんや、言うたやろが。
内心呟きながらも、秋星はそのまま黙って背を向けたままでいる。
「……何か……一緒に寝るの、懐かしいな……」
すると、また邦一が呟いた。秋星は込み上げてくるものを感じ、そっと目を閉じる。
「……そうやな……」
秋星も静かに声に出して呟いた。
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