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初めての旅 〜ダグスク〜
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べアンハート神父夫妻にまた来ると別れを告げるとイオリ達は侯爵家へと向かった。
「何かあったのか?」
いつもと少し様子の違うイオリを心配してかヒューゴが声をかけてきた。
「んー。エナばあちゃんに会ってから、人が繋ぐって事の凄さに当てられてる感じかな。
“歴史ある港町・ダグスク”・・・素晴らしい街ですね。」
「そうか・・・。」
それ以上ヒューゴは何も言わずに並んで歩いた。
子供達の笑い声を聞きながら坂を下るイオリ達の頬を優しい潮風が撫でた。
_______
「街は如何でした?」
侯爵邸の玄関で迎えてくれたのは執事のカールだった。
「素敵でした。
明日の朝市が楽しみです。」
「「楽しかったー!」」
「イオリ。今度、本屋さん行っていい?」
子供達の反応も上々だとカールは嬉しそうに微笑んだ。
「主人がお待ちです。どうぞ。」
案内されたのは昨日と同じ部屋。
中には侯爵・オーウェンと騎士団長・レイナードがいた。
「昨日ぶりです。
お邪魔します。」
挨拶をするイオリに2人は微笑んだ。
「街は如何ですか?
楽しんでいただけると良いのですが。」
「素敵な街ですね。
明日は朝から朝市へ行ってみます。」
オーウェンは嬉しそうに頷くとイオリ達に座るように勧めた。
「早速ではありますが、昨夜ポーレット公爵へご相談したところ人材を送ってくれるという事でした。
奴隷制度の変革の仕組みなどを教授してもらう予定です。
グラトニー商会が全面的に協力をしてくれる事になり、販路などの確保は容易ですが、何よりも仕組みを作り替えなければ物を作っても意味がありません。」
「確かに。」
オーウェンの力説にイオリは頷いた。
「ミケルセン伯爵が交渉の材料として岩塩を持ち出した事でも分かる通り、塩は政治的にも重要な材料になってそうですもんね。
下手したら、争いの種になってしまうかもしれない・・・。」
「はい・・・。」
「だからこそ・・・。
だからこそ、塩を営利目的に使うべきではないのだと思います。
ポーレットから誰が来るのかわかりませんが、彼らがそれを教えてくれるでしょう。
それと今日、街で一人の女性に会いました。
このダグスクのもう一つの宝を守り続けてくれていた人です。
今度、その方のご家族を招いて食事会をしようと思います。
別宅をお借りします。
是非オーウェンさん達も参加して下さい。」
オーウェンとレイナードは首を捻るがイオリが言うのだ、間違いないと了承した。
「「楽しみだなー。」」
「ねー。」
コクコク
子供達は今から食事会が待ち遠しいようだ。
別宅に帰るとイオリは早速、買った品物を出して行った。
「これから嫌と言う程、俺の故郷の味を味わってもらうからね。
今日は、ちょっと味の違う物を作る事にするよ。」
そう言うとガシガシと魚介の処理に入った。
「イオリ!ボクは??」
やる気のスコルにはパンを作ってもらうことにした。
「材料は俺が測るよ。
あとはいつも通りで良いからね。
できるかなー?」
「ちぎりパン!!やる!!」
イオリの隣で生地をこね始めたスコルに微笑むとイオリは自分も料理の続きを始めた。
「トマト・・・。人参と玉ねぎをみじん切りにして。
魚介をオイルで焼いてー♪」
しばらくすると、いい匂いがするキッチンに他の面々が顔を出した。
「掃除はニナ隊長を中心にみんなでやったから終わったぞ。」
ヒューゴがそう言うとニナは嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、食卓の準備をお願い。
スプーンとかフォークとか並べておいてください。
そろそろ出来るだろうから。」
急いでテーブルの支度を始めるパティにつられるようにゼンとナギ、ニナが後を追った。
間も無くしてパンを焼いたスコルが汗を拭きながらイオリに出来を見てもらった。
「うん。良いじゃない。
ここ焦げちゃったけど、絶対に美味しいよ。」
合格点をもらったスコルは安心したようにニコと笑うと、ダッチオーブンごとテーブルに運んで行った。
イオリの方も味を整え終えるとニッコリしてダイニングまでやってきた。
「出来たよ!今日のメニューは魚介をタップリ使ったブイヤベースだよ。
スコルのパン付き!
召し上がれー!!」
見た事のないスープに子供達は大はしゃぎだった。
ヒューゴが皿に分けてやると手を合わせて
「「「「いただきまーす!」」」」
黙々と食べ始めた。
「ゼン達には殻とか骨とかとったコチラをどうぞ。」
別の大きな鍋からイオリが装ってやるとゼンもアウラもソルも大興奮だった。
『フーフー。ゴクン!
美味しい!!これ好き!何これ!!』
ゼンの興奮に当てれられたようにアウラも熱いスープに口をつけて嬉しそうに飲んでいた。
ソルは口だけでなく顔全体をベチャベチャにして飲んでいる。
「イオリ・・・これは美味いぞ。
今までのスープとは全く違う。」
ヒューゴは驚きながらも食べる手を止めない。
「美味しいでしょ?それが、魚介の持つ出汁の力ですよ。
俺はエナばあちゃんの作った物を探していましたが、この生の魚介を使った料理も大好きなんです。
沢山つくったから、いっぱい召し上がれ。」
先程と違い、食べ物について熱量の高い、いつものイオリに戻っているようで嬉しくなった家族達は顔を見合わせると笑った。
その日の良い匂いは侯爵邸まで届いたとか届いてないとか・・・
「何かあったのか?」
いつもと少し様子の違うイオリを心配してかヒューゴが声をかけてきた。
「んー。エナばあちゃんに会ってから、人が繋ぐって事の凄さに当てられてる感じかな。
“歴史ある港町・ダグスク”・・・素晴らしい街ですね。」
「そうか・・・。」
それ以上ヒューゴは何も言わずに並んで歩いた。
子供達の笑い声を聞きながら坂を下るイオリ達の頬を優しい潮風が撫でた。
_______
「街は如何でした?」
侯爵邸の玄関で迎えてくれたのは執事のカールだった。
「素敵でした。
明日の朝市が楽しみです。」
「「楽しかったー!」」
「イオリ。今度、本屋さん行っていい?」
子供達の反応も上々だとカールは嬉しそうに微笑んだ。
「主人がお待ちです。どうぞ。」
案内されたのは昨日と同じ部屋。
中には侯爵・オーウェンと騎士団長・レイナードがいた。
「昨日ぶりです。
お邪魔します。」
挨拶をするイオリに2人は微笑んだ。
「街は如何ですか?
楽しんでいただけると良いのですが。」
「素敵な街ですね。
明日は朝から朝市へ行ってみます。」
オーウェンは嬉しそうに頷くとイオリ達に座るように勧めた。
「早速ではありますが、昨夜ポーレット公爵へご相談したところ人材を送ってくれるという事でした。
奴隷制度の変革の仕組みなどを教授してもらう予定です。
グラトニー商会が全面的に協力をしてくれる事になり、販路などの確保は容易ですが、何よりも仕組みを作り替えなければ物を作っても意味がありません。」
「確かに。」
オーウェンの力説にイオリは頷いた。
「ミケルセン伯爵が交渉の材料として岩塩を持ち出した事でも分かる通り、塩は政治的にも重要な材料になってそうですもんね。
下手したら、争いの種になってしまうかもしれない・・・。」
「はい・・・。」
「だからこそ・・・。
だからこそ、塩を営利目的に使うべきではないのだと思います。
ポーレットから誰が来るのかわかりませんが、彼らがそれを教えてくれるでしょう。
それと今日、街で一人の女性に会いました。
このダグスクのもう一つの宝を守り続けてくれていた人です。
今度、その方のご家族を招いて食事会をしようと思います。
別宅をお借りします。
是非オーウェンさん達も参加して下さい。」
オーウェンとレイナードは首を捻るがイオリが言うのだ、間違いないと了承した。
「「楽しみだなー。」」
「ねー。」
コクコク
子供達は今から食事会が待ち遠しいようだ。
別宅に帰るとイオリは早速、買った品物を出して行った。
「これから嫌と言う程、俺の故郷の味を味わってもらうからね。
今日は、ちょっと味の違う物を作る事にするよ。」
そう言うとガシガシと魚介の処理に入った。
「イオリ!ボクは??」
やる気のスコルにはパンを作ってもらうことにした。
「材料は俺が測るよ。
あとはいつも通りで良いからね。
できるかなー?」
「ちぎりパン!!やる!!」
イオリの隣で生地をこね始めたスコルに微笑むとイオリは自分も料理の続きを始めた。
「トマト・・・。人参と玉ねぎをみじん切りにして。
魚介をオイルで焼いてー♪」
しばらくすると、いい匂いがするキッチンに他の面々が顔を出した。
「掃除はニナ隊長を中心にみんなでやったから終わったぞ。」
ヒューゴがそう言うとニナは嬉しそうに頷いた。
「じゃあ、食卓の準備をお願い。
スプーンとかフォークとか並べておいてください。
そろそろ出来るだろうから。」
急いでテーブルの支度を始めるパティにつられるようにゼンとナギ、ニナが後を追った。
間も無くしてパンを焼いたスコルが汗を拭きながらイオリに出来を見てもらった。
「うん。良いじゃない。
ここ焦げちゃったけど、絶対に美味しいよ。」
合格点をもらったスコルは安心したようにニコと笑うと、ダッチオーブンごとテーブルに運んで行った。
イオリの方も味を整え終えるとニッコリしてダイニングまでやってきた。
「出来たよ!今日のメニューは魚介をタップリ使ったブイヤベースだよ。
スコルのパン付き!
召し上がれー!!」
見た事のないスープに子供達は大はしゃぎだった。
ヒューゴが皿に分けてやると手を合わせて
「「「「いただきまーす!」」」」
黙々と食べ始めた。
「ゼン達には殻とか骨とかとったコチラをどうぞ。」
別の大きな鍋からイオリが装ってやるとゼンもアウラもソルも大興奮だった。
『フーフー。ゴクン!
美味しい!!これ好き!何これ!!』
ゼンの興奮に当てれられたようにアウラも熱いスープに口をつけて嬉しそうに飲んでいた。
ソルは口だけでなく顔全体をベチャベチャにして飲んでいる。
「イオリ・・・これは美味いぞ。
今までのスープとは全く違う。」
ヒューゴは驚きながらも食べる手を止めない。
「美味しいでしょ?それが、魚介の持つ出汁の力ですよ。
俺はエナばあちゃんの作った物を探していましたが、この生の魚介を使った料理も大好きなんです。
沢山つくったから、いっぱい召し上がれ。」
先程と違い、食べ物について熱量の高い、いつものイオリに戻っているようで嬉しくなった家族達は顔を見合わせると笑った。
その日の良い匂いは侯爵邸まで届いたとか届いてないとか・・・
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