続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜パライソの森⒉〜

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「客人!
 侵入者達は北の洞窟に潜伏していると聞いている。
 川岸から向かった方が早い!
 ついて来い!」

 イドリアルを先頭にガーディアンが先導すると、イオリの真後ろに子供達を乗せたゼンとアウラが追いついた。

「ここにも魔獣いない。」

 木に登って周囲を伺っていたホワンが戻ってくると、音もなくナギとニナが跨っていたアウラに座った。

「お前達の話に出てたアマメは想像よりもデカいな。」

 大口を開けて笑うヒューゴにイオリはニヤリとした。

「怖くなかったですか?」

「不思議だ。
 普通なら、恐怖の1つでも湧きそうなものだが、自然と受け入れていたよ。」

 ヒューゴの言葉が正しいと言うように、前を走るガーディアン達が嬉しそうに守護者に会ったと湧き立っている。

「おい!見たか?
 大樹よりも大きな鹿だぞ?」

 ガーディアンであり狼の獣人のガルムが興奮しながら話していると、イドリアルの一喝が落ちた。

「守護者様がパライソの危機を教えてくれただろうが!
 気を引き締めろ!」

 先を急ぐ女エルフの怒りは、仲間に向けたものじゃない。
 再び、パライソの森に危険が迫っている事が許せないのだろう。

 そんな彼女の焦りに導かれたように2人の男女が一行の目に入った。

「イドリアル!?
 “ペンプティ”か?」

「助かった。」

 それはルーシュピケのガーディアンである犬獣人の男と熊獣人の女だった。

「エルマーとデーデか?
 客人、アイツらはガーディアン“サバト”のメンバーだ。
 ずっと侵入者達を見張っていたのさ。」

 2人のガーディアンは合流すると息を切らしていた。
 よく見れば熊の獣人の女性デーデは腕から大量の血を流している。

「「はぁはぁはぁ。」」

 ナギがポーションを差し出した。

「緊急事態みたいだから、飲んじゃって。」

 普段は薄めて計画的に使うポーションもこの時ばかりは必要そうだ。
 
「ありがとう。
 助かるよ。」

 2人がポーションを飲み干すのを見届けると、イドリアルが問いかけた。

「何があった?」

「ここんとこ、ずっと奴らの洞窟を見張ってたのは知っているな。
 今日になって、いつの間にか魔獣達に洞窟が囲まれちまったのさ。
 その辺の魔獣を掻き集めたみたいな量だ。
 注意深く見ていたが、侵入者が何かしたような行動はない。
 奴らも驚いてたよ。
 大人しく洞窟の奥に引っ込んでやがる。」

 苦虫を噛み潰したようなエルマーに続いてデーデが話し始めた。

「問題は、その後さ。
 奴らが来たんだよ。
 奴らさ!
 “エルフの里”の奴らがやってきたんだよ!」

「なんだって!」

 それは、衝撃的な報告だった。

 イオリもヒューゴと顔を見合わせ、事の重大さに険しい顔になった。

「奴ら、洞窟を目指してやがった。
 でも魔獣達が集まっているから苛立ってね。
 その辺を火の海にしやがるから、うちらも黙ってられなくてね。
 争いになってんだよ。」

 傷があった腕を摩ると、デーデは悔しそうだった。

「“サバト”が抑えてる。
 うちらは砦に帰って応援を呼ぶ為に戻ってきたんだ。
 頼むよ!
 タイソン達を助けておくれよ。」
 
 同胞が傷ついているのだ。
 黙っているルーシュピケのガーディアンじゃない。

「当たり前さ。
 ホワン!
 代わりに砦に戻ってくれないかい?
 救援もそうだが、砦にも防衛強化の報告が必要だ。」

「任された。」

 ホワンはアウラの背から飛び降りると、瞬く間に姿を消した。

「客人。
 これが、守護者様の言っていた危機ってやつかね。」

「・・・おそらく。
 とにかく急ぎましょう。」

 その後、イオリ達は無言で走り続けたのだった。
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