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旅路〜パライソの森⒉〜
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魔獣の川を足速に歩き抜けたイオリ達は洞窟を見上げていた。
それは洞窟というよりかは、洞穴と呼ばれる類のものだろうとイオリは考えた。
下からは中の様子を伺う事は出来ないようだ。
手始めは岩など荒れた道であったが、徐々に歩きやすい坂道に変わっていった。
「イオリ様。」
何処からか鳥獣人のコナーが飛んでくると、イオリに跪く。
「洞窟に変化はありませんが、どうやら1人が様子を見に外に出て来そうです。」
「そうですか・・・。
面倒な事じゃないと良いんですけどね。」
「そんな事、あるわけないだろう。
確実に面倒事だ。
諦めろ。」
溜息混じりに呟くイオリをヒューゴが小突いた。
「・・・ですよね。」
落胆するイオリをイドリアルとタイソンが気まずそうに見つめる中、リルラとコナーはクスクスと笑う。
「何者だっ!!
止まれ!」
コナーの報告にあった通り、外の様子を見に来た1人・・・男の声に緊張が走った。
イオリ達に気づいた時にギョッとした顔しながら、男は刀に手をかけた。
「何者だ!」
再び、男が叫ぶと、今度はルーシュピケのガーディアンであるイドリアルの怒号が飛ぶ。
「何者だとはこっちのセリフだ!
ここは我らルーシュピケの民が愛するパライソの森、余所者であるはずのお前らこそが何者だ!」
今にも刀を抜きそうな男を、洞窟から飛び出てきた男が止めた。
「ソウスケ殿!
おやめください。
ここは、我らの国ではないッス。」
必死に止める仲間に男は不満そうながら、握っていた柄から手を離した。
「我らは“グランヌス”からの旅人ッス。
争う気はありません。
魔獣の群れで身動きが出来なかったッスよ。
あんた達は、どうやってここ迄?」
イドリアルはイオリと視線を交わすと魔獣達を指し示した。
「今なら、魔獣の川を渡れる。」
男達・・・ソウスケとロクが目にしたのは魔獣の群れが真っ二つに割れ、道ができている光景だった。
「・・・なんで?」
「・・・。」
唖然とするロクとソウスケは互いに顔を見合わせた。
イドリアル達に睨まれているのに気づいたのだろう。
2人はルーシュピケの民を頭を下げた。
「騒がせて、すまないッス。」
「見れば、エルフや獣人達だった。
気が張っていたとは言え、失礼を平に謝罪する。
申し訳ない。」
素直に謝るソウスケにイドリアルは顎を引くだけの頷きをした。
警戒を解かないのは互いに分かっていた事であったが、ロクはこのチャンスを逃せないとイドリアルに頼み込んだ。
「実は、デザリアに向かう旅の中に魔獣に囲まれて身動きが取れなくなっていたんッス。
厚顔無恥な願い事をしているのは分かっているッス。
ルーシュピケで助成を願う事は出来ませんか?」
ロクの話をイドリアルはただ黙って聞いてた。
問題のある輩を・・・人族をルーシュピケの砦に匿えば、住人達が荒ぶる事を理解しているのだ。
「とりあえず、洞窟から出てきませんか?
魔獣の川もいつまで開いてくれているか分かりませんよ。」
緊迫した中、優しい声がした。
ロクとソウスケが視線を向ければ、真っ黒な青年がニッコリとしていた。
「あちらでは、ルーシュピケのガーディアンが集まっています。
この魔獣達の異常行動を心配しての事です。
まずは、この場所から離れましょう。
続きは、その次です。」
どう見ても人族である真っ黒な青年の出現にロクとソウスケは驚いた。
「その話をお受けしよう。」
それは、洞窟から出来てきたムネタカの声だった。
その瞬間、イオリとムネタカの目が引き寄せられるように合ったのだった。
それは洞窟というよりかは、洞穴と呼ばれる類のものだろうとイオリは考えた。
下からは中の様子を伺う事は出来ないようだ。
手始めは岩など荒れた道であったが、徐々に歩きやすい坂道に変わっていった。
「イオリ様。」
何処からか鳥獣人のコナーが飛んでくると、イオリに跪く。
「洞窟に変化はありませんが、どうやら1人が様子を見に外に出て来そうです。」
「そうですか・・・。
面倒な事じゃないと良いんですけどね。」
「そんな事、あるわけないだろう。
確実に面倒事だ。
諦めろ。」
溜息混じりに呟くイオリをヒューゴが小突いた。
「・・・ですよね。」
落胆するイオリをイドリアルとタイソンが気まずそうに見つめる中、リルラとコナーはクスクスと笑う。
「何者だっ!!
止まれ!」
コナーの報告にあった通り、外の様子を見に来た1人・・・男の声に緊張が走った。
イオリ達に気づいた時にギョッとした顔しながら、男は刀に手をかけた。
「何者だ!」
再び、男が叫ぶと、今度はルーシュピケのガーディアンであるイドリアルの怒号が飛ぶ。
「何者だとはこっちのセリフだ!
ここは我らルーシュピケの民が愛するパライソの森、余所者であるはずのお前らこそが何者だ!」
今にも刀を抜きそうな男を、洞窟から飛び出てきた男が止めた。
「ソウスケ殿!
おやめください。
ここは、我らの国ではないッス。」
必死に止める仲間に男は不満そうながら、握っていた柄から手を離した。
「我らは“グランヌス”からの旅人ッス。
争う気はありません。
魔獣の群れで身動きが出来なかったッスよ。
あんた達は、どうやってここ迄?」
イドリアルはイオリと視線を交わすと魔獣達を指し示した。
「今なら、魔獣の川を渡れる。」
男達・・・ソウスケとロクが目にしたのは魔獣の群れが真っ二つに割れ、道ができている光景だった。
「・・・なんで?」
「・・・。」
唖然とするロクとソウスケは互いに顔を見合わせた。
イドリアル達に睨まれているのに気づいたのだろう。
2人はルーシュピケの民を頭を下げた。
「騒がせて、すまないッス。」
「見れば、エルフや獣人達だった。
気が張っていたとは言え、失礼を平に謝罪する。
申し訳ない。」
素直に謝るソウスケにイドリアルは顎を引くだけの頷きをした。
警戒を解かないのは互いに分かっていた事であったが、ロクはこのチャンスを逃せないとイドリアルに頼み込んだ。
「実は、デザリアに向かう旅の中に魔獣に囲まれて身動きが取れなくなっていたんッス。
厚顔無恥な願い事をしているのは分かっているッス。
ルーシュピケで助成を願う事は出来ませんか?」
ロクの話をイドリアルはただ黙って聞いてた。
問題のある輩を・・・人族をルーシュピケの砦に匿えば、住人達が荒ぶる事を理解しているのだ。
「とりあえず、洞窟から出てきませんか?
魔獣の川もいつまで開いてくれているか分かりませんよ。」
緊迫した中、優しい声がした。
ロクとソウスケが視線を向ければ、真っ黒な青年がニッコリとしていた。
「あちらでは、ルーシュピケのガーディアンが集まっています。
この魔獣達の異常行動を心配しての事です。
まずは、この場所から離れましょう。
続きは、その次です。」
どう見ても人族である真っ黒な青年の出現にロクとソウスケは驚いた。
「その話をお受けしよう。」
それは、洞窟から出来てきたムネタカの声だった。
その瞬間、イオリとムネタカの目が引き寄せられるように合ったのだった。
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2025/9/29
追記開始しました。毎日更新は難しいですが気長にお待ちください。
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