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旅路〜パライソの森⒉〜
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ーーー侍と忍者だ。
彼らを観察していたイオリは、多少の違いはあれど、やっぱり侍と忍者のような2人の装束に心の中で笑っていた。
火の国の“グランヌス”は嘗ての“神の愛し子”である十蔵の影響を色濃く受けた者達の国だと聞いた。
服装からも、侍である十蔵の姿が反映されているのだろう。
それは、イオリの知っている着物とはちょっと違い、洋装がミックスされた様なアンバランスでもあった。
「その話をお受けしよう。」
現れた男に2人は頭を下げた。
「ルーシュピケの民よ。
迷惑をかけた。
我らは、ここを引き払う。
申し訳ない事だが、魔獣の群れを抜けるのに手を貸しては貰えぬか。」
先の2人の反応から見て、彼こそが主人であると誰もが分かった。
イオリにチラリと視線を向けたイドリアルは頷いた。
「・・・ついて来い。」
「感謝する。」
礼を口にした、男はスッとイオリに視線を移すとジッと見つめるのだった。
「ロク。
あの者達は何者だと思う?」
「・・・人族の2人ッスね?
エルフと獣人の国であるルーシュピケも認められれば人族も住む事が出来ると聞いた事があります。
普通に考えれば、仲間であると考えますが・・・。」
「そうか・・・。」
腑に落ちない頷きをしたムネタカは真っ黒な髪を持った青年の事を考えていた。
右の目がサファイヤのような透き通った美しい青い瞳だった。
「ムネタカ様。
本当に彼らと共に洞窟を下るのですか?」
出立の準備を終えたキクが眉を下げていた。
心配している幼馴染の気持ちも分かるムネタカは微笑んだ。
「この地は彼らの物だ。
彼らからすれば、我らの方が怪しげな輩だろう。
この機を逃せば、洞窟から出る事は難しそうだ。
一先ず、彼らの力を借りてデザリアへ向かうとしよう。
ルーシュピケで身を整える準備をさせて貰えれば幸いだが・・・。」
「キク、主の考えは変わらない。
我らの使命は、まだ終わらないぞ。」
ソウスケに優しく肩を叩かれ、キクは迷いを晴らすように深く頷いた。
「準備は良いかい?
焚き火の火種の始末はしっかりしておくれよ。」
洞窟から出ると、エルフの女性でありガーディアンであるイドリアルが声をかけた。
「問題ない。
世話になる。」
4人の姿を確認すると、イドリアルが仲間達に声をかけた。
「出発するよ。」
先導するのは、あの人族の真っ黒な青年だった。
「渡りますよー。」
洞窟があった岩山の坂を下っていけば、嘘のように魔獣達が道を作っていた。
「一体何だったんだ?
ルーシュピケでは、よくある光景なのだろうか?」
ムネタカが質問するとイドリアルは肩をすくめた。
「さぁね。
私らにも分からないから、異常事態なのさ。」
ムネタカを守ように歩くロクとソウスケは、自分達が囲まれている事に気づいていた。
いつの間にか、背後にエルフの女と鳥の獣人の男が自分達を観察するようについて来ていて、居心地が悪い。
恐る恐る魔獣の群れの中に足を踏み入れて見ても、魔獣達が自分達に視線を向ける事はなかった。
驚くべき事だが、足早に抜けてしまえば呆気ないものだった。
「はぁ・・・。
通り抜けたか・・・。」
緊張から解き放たれ、一息ついたムネタカが見たのは、自分達を訝しげに見つめるエルフと獣人達の姿だった。
彼らを観察していたイオリは、多少の違いはあれど、やっぱり侍と忍者のような2人の装束に心の中で笑っていた。
火の国の“グランヌス”は嘗ての“神の愛し子”である十蔵の影響を色濃く受けた者達の国だと聞いた。
服装からも、侍である十蔵の姿が反映されているのだろう。
それは、イオリの知っている着物とはちょっと違い、洋装がミックスされた様なアンバランスでもあった。
「その話をお受けしよう。」
現れた男に2人は頭を下げた。
「ルーシュピケの民よ。
迷惑をかけた。
我らは、ここを引き払う。
申し訳ない事だが、魔獣の群れを抜けるのに手を貸しては貰えぬか。」
先の2人の反応から見て、彼こそが主人であると誰もが分かった。
イオリにチラリと視線を向けたイドリアルは頷いた。
「・・・ついて来い。」
「感謝する。」
礼を口にした、男はスッとイオリに視線を移すとジッと見つめるのだった。
「ロク。
あの者達は何者だと思う?」
「・・・人族の2人ッスね?
エルフと獣人の国であるルーシュピケも認められれば人族も住む事が出来ると聞いた事があります。
普通に考えれば、仲間であると考えますが・・・。」
「そうか・・・。」
腑に落ちない頷きをしたムネタカは真っ黒な髪を持った青年の事を考えていた。
右の目がサファイヤのような透き通った美しい青い瞳だった。
「ムネタカ様。
本当に彼らと共に洞窟を下るのですか?」
出立の準備を終えたキクが眉を下げていた。
心配している幼馴染の気持ちも分かるムネタカは微笑んだ。
「この地は彼らの物だ。
彼らからすれば、我らの方が怪しげな輩だろう。
この機を逃せば、洞窟から出る事は難しそうだ。
一先ず、彼らの力を借りてデザリアへ向かうとしよう。
ルーシュピケで身を整える準備をさせて貰えれば幸いだが・・・。」
「キク、主の考えは変わらない。
我らの使命は、まだ終わらないぞ。」
ソウスケに優しく肩を叩かれ、キクは迷いを晴らすように深く頷いた。
「準備は良いかい?
焚き火の火種の始末はしっかりしておくれよ。」
洞窟から出ると、エルフの女性でありガーディアンであるイドリアルが声をかけた。
「問題ない。
世話になる。」
4人の姿を確認すると、イドリアルが仲間達に声をかけた。
「出発するよ。」
先導するのは、あの人族の真っ黒な青年だった。
「渡りますよー。」
洞窟があった岩山の坂を下っていけば、嘘のように魔獣達が道を作っていた。
「一体何だったんだ?
ルーシュピケでは、よくある光景なのだろうか?」
ムネタカが質問するとイドリアルは肩をすくめた。
「さぁね。
私らにも分からないから、異常事態なのさ。」
ムネタカを守ように歩くロクとソウスケは、自分達が囲まれている事に気づいていた。
いつの間にか、背後にエルフの女と鳥の獣人の男が自分達を観察するようについて来ていて、居心地が悪い。
恐る恐る魔獣の群れの中に足を踏み入れて見ても、魔獣達が自分達に視線を向ける事はなかった。
驚くべき事だが、足早に抜けてしまえば呆気ないものだった。
「はぁ・・・。
通り抜けたか・・・。」
緊張から解き放たれ、一息ついたムネタカが見たのは、自分達を訝しげに見つめるエルフと獣人達の姿だった。
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