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第5章 お茶会への招待状
第65話 アザレア劇場
しおりを挟む「イザベル様は、レインボーローズを見たことがありますのね。流石、ルイス様の婚約者ですわ」
「そうですわね。ですが、それは本当に貴女への贈り物なのかしら?」
「確かに、別の方への贈り物かもしれませんわね」
クスクスと嫌な笑い方をしながら、3人の令嬢はイザベルを見る。
「ローレルさん、アイリーンさん、レバンテさん、折角いらしてくださったのに、そのようなことを言ってはいけませんわよ」
アザレアは困ったような表情を作ってはいるものの、それは表情だけ。まるで、見る価値もない芝居を無理矢理見せられているような気持ちにイザベルはなった。
(一応、止める体はとったが、われへの批判は止めぬと。馬鹿馬鹿しい。
たかだか侯爵家で、何を思い上がったか。家格の違いも理解できず、礼儀も知らぬ、たわけ者が)
「ふふっ。一体、どういう意味でおっしゃられたのか興味がありますわ。是非とも、詳しく聞かせて頂きたいですわね」
サッと扇を出してイザベルは顔の半分を隠す。そう、ここからがイザベルの一番の正念場だ。例え、自身が辛い思いをしようとも目的は果たす。
決意をしてきたはずなのに小さく手が震える。だが、気付かせては有利な立場には立てない。
(恐れることはない。今更じゃ。アザレア、今日でそなたの天下は終わりじゃ。反リリアンヌ派は必ず解体させる。二度と楯突けぬようにしてやるわ)
心配そうにこちらを見ているメイルードとジュリアの視線にイザベルは励まされる。
「ねぇ、アザレアさん? 貴女は礼儀作法と教養が足りてないようですわね。もう少し、お勉強をなさいませんと。
あぁ、だからBクラスでしたのね。良い家庭教師をお教えしますわ。きっと、貴女でもきちんと分かるように教えてくださいますわよ」
小首を傾げて言えば、アザレアは顔を引きつらせた。それを見て、心に少し余裕ができたイザベルは、言葉を重ねる。
「それに、主催者がゲストを貶めることに加わるだなんて、驚くほど良い性格をなさっていますのね」
「私はイザベル様を貶めてなどおりませんわ。勘違いなさるのは、止めてくださいませ」
「……私のことだとは言ってなくてよ」
顔色を変えたアザレアを、イザベルはオカメの下で冷めた瞳で見た。その瞳の中には憐れみも混じっている。
(いとも簡単に引っかかったのう。権力にものを言わせておったということか。そのようなことをしても虚しいだけだと、気がつけぬか。以前のわれのように……)
イザベルは瞬き一つで憐れむ心に蓋をする。
「アザレアさんが、私のことを、スコルピウス公爵家を、軽んじていらっしゃることはよく分かりましたわ」
「そういう貴女こそ、ミルミッド侯爵家に奇妙な面を着けてくるなんて、どういうおつもり? 噂はやはり本当なのかも知れませんわね」
負けじと言い返してくるアザレアに噂とは何かを聞くべきだろう。だが、イザベルはその前にどうしても言わなければ気が済まなかった。
「奇妙な面……とは、何のことをおっしゃっているのかしら?」
「その貴女がオカメと呼んでいるものよ! そんな気味の悪いものをつけて、よく人前に出られますわね」
「気味の悪い? 貴女、頭がおかしいのではなくて? この素晴らしさを理解できないだなんて、信じられませんわ」
鼻で笑いながら言ったイザベルに対し、アザレアは気持ちにゆとりができたように侮蔑の視線を向ける。
「そんなものを素晴らしい? 笑わせないでくださる? イザベル様は美に煩い方よ。そんなものをつける時点でおかしかったのよ。
でも、誰もがもしもを連想して言えなかったわ。だから、今日、私が皆さんの代わりに言いますわ!!」
演説するかのように立ち上がったアザレアに、彼女の取り巻き達は拍手をし、「流石、アザレア様!!」「なんて、勇気がおありなのかしら!!」と次々と口にした。
それに気を良くしたアザレアは、口元に笑みを描く。瞳には自信が溢れている。
「貴女、偽者でしょう? あまりにも悪事を働きすぎたからと、別人を学園に送り込むなんて、マッカート公爵家も落ちたものですわね!!」
ビシッとイザベルを指差して、アザレアは高らかに言い放った。
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