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第5章 お茶会への招待状
第66話 一人ではない強さ
しおりを挟む(阿呆じゃ。阿呆がおる。こんなのから守れなかったのか?)
何もしなくても墓穴をせっせと掘っていくアザレアに、イザベルは自身の不甲斐なさを悔いる。
(あとは、やるだけじゃ。大丈夫、大丈夫じゃ。われは、できる。大丈夫──)
自身を懸命に励ますが、決心したはずなのに、手が震えて上手く動かない。どうにか触れたそれは、いつもより冷たく感じる。
その行動を勘違いしたのだろう。アザレアは吹き出して笑いだした。
「皆さん、ご覧になって! 懸命に面を押さえてますわよ。
なんて、滑稽なのかしら。キャハハハハハハ……」
その笑い声につられて、くすくすと笑う者、大声で笑う者、様々だ。
ルイスから味方がいると聞いていなければ、イザベルはジュリアとメイルードを除いた皆が本気で笑っているのだと思っただろう。
味方はいる。そう分かっていても、イザベルは自然と下を向いてしまった。すると、ドレスが瞳に映る。
(ルイス様──)
濃い藤色にルイスが思い浮かんだ。このドレスは、素顔でもオカメでも変わらずに愛を囁き、いつでもイザベルを見詰めているルイスの瞳の色。
イザベルは、今だって婚約解消を願っている。それでも、励まされてしまった。勇気をもらってしまった。心強さを感じてしまった。
(怖い。……見られるのが怖い。じゃが、それで失うものはない。大切な者は離れてなどいかぬ)
イザベルはオカメの下で瞳を閉じる。
リリアンヌ、ミーア、ローゼン、シュナイ、ヒューラック、メイス、カミン、メイルード、ジュリア。
皆の顔を順々に思い出し、最後にもう一度ルイスの顔を脳内で描く。
(ルイス様。大切な人が、大切にしてくれる人が、たくさんできました)
その心の声は今の彼女のものか、はたまた悪役令嬢と呼ばれた頃の彼女のものなのか──。
震えは止まらないが、動くようになった指先に力を込めた。明るくなった視界に怯んだものの、イザベルは負けなかった。
このために、苦手な鏡を見て練習をしてきたのだ。口角を意識的に上げて、気持ちを悟られないように、少しでも自信があるように見えるようにと。
「私が偽物……でしたっけ。ねぇ、アザレアさん?」
大切にテーブルに置いた後、閉じた扇子でパシッと手を打って音を出しながらイザベルは言った。だが、アザレアからの返事はない。
(……やはり、鬼のような見目じゃ。声も出ぬほどか。じゃが、これが今のわれなのじゃ)
目を見開き、口を半開きにするというご令嬢としては残念な表情をするアザレアに、イザベルの心は痛みを訴えてくる。
だが、イザベルはその痛みを受け入れた。
マッカート公爵家の中、という守られた環境ではない。ルイスやリリアンヌ、ミーアの支えもない。
それでも、オカメを外して真っ直ぐに、イザベルはアザレアを見た。
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