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第2章 領地編1~新たな出会い~
第24話 ラッキースケベ再び?
しおりを挟むジンのあからさまなため息に思わず震えた。
本当に面倒くさいだけのことを言ってしまった。だが、後悔してももう遅い。
「俺は、一度もアリアを女の子らしくないと思ったことはないよ」
「でも……」
あぁ。こんなのはダメだ。いつもみたいに「またまたー」とか、「まぁ、私こそがベストオブ女子だしね」とか言わないと。
こんなの私らしくない。……私じゃないよ。
好きになるって、自分のことがこんなにも上手く制御できないものなのだろうか。
私はずっとこの気持ちと付き合っていかなきゃならないの? 好きってもっとほわほわして、幸せで楽しいものなんじゃないの?
はじめての気持ちに翻弄されてしまう。恋をすると自分が自分じゃなくなる、そう言っていたのは誰だっただろうか。
「アリアはさ、自己評価が低すぎる」
「えっ?」
「まず見た目だけを言うなら、1,000人に聞いたら999人が可愛い、美しいと答えるのに、自分の見た目をきちんと理解できていない」
ジンは一体、何を言ってるの? ちゃんと自分が美少女だってことは理解してるし、自己評価だって低くないと思うんだけど。
「それに、高位貴族なのに俺みたいなのにも優しい」
「俺みたいなのって──」
「別に俺自身を悪く言ってるわけじゃないから。高位な者が自分より身分の低いものを人として扱わないなんてことは、よくある話……らしい」
「らしい?」
「じいちゃんが言ってた。俺は実際には知らない」
おじいちゃんの話を、そんなに堂々と言うの?
そのことがおかしくて笑ってしまう。
「ほら、その笑い方も声も女の子だよ。なんで、急にそんな風に思ったんだ?」
静かに問われ、何て答えていいのか分からない。好きだからだと言ってしまいたい。だけど、ふられたらと思うと言葉が出ない。
少しでも伝われば……、そう思っておんぶしてくれていたジンの背中にピッタリと身体をつけた。すると、私の身体を支えていたジンの手が離れ、地面へと降ろされる。
あぁ。やっぱり迷惑だったんだ。早く謝らないと……。
泣きたい気持ちを我慢して視線を上げれば──。
口をはくはくとさせ、何かを言いたげなジンがいた。
「えっ!? なんでそんなに真っ赤なの?」
「……胸が」
「胸?」
「胸があたるから、ぴったりとくっつくのはやめてくれ」
……胸があたるから、ぴったりとくっつくのはやめてくれ? えっ? 胸があたるから?
「ごっごごごごめっっ!!」
どっ、どうしよう! これじゃただの痴女だよ。うわぁぁぁあ!! やってしまった!
「イヤだったよね。どっ、どうしよう。なんて、謝れば……。こういう時はお見舞い品を送ればいいんだっけ? でもでも、そういう場合じゃないっていうか。心の傷はそんなんじゃどうにもならないわけだし」
「アリア?」
「うぁぁぁあ! どうしよう。ジンのトラウマになってたら!!」
「アリア、落ち着けよ!」
ジンの顔が近い。それに、何かすごい困った顔して……る?
「ごめん……」
「いや、俺の方こそごめん」
そのあとの沈黙が痛い。私が取り乱したばっかりに被害者のジンに謝らせてしまった。
「本当にごめんね。折角おんぶしてもらったのに、胸を押し付けるなんて痴女だった……」
「痴女って……。俺の方こそ女の子を気軽におぶっちゃいけなかったんだ。ごめんな。嫌だったろ?」
嫌だった? うーん、別に嫌じゃなかった。もし、これが別の人だったら嫌だったけど……。
「私は……ジンなら嫌じゃない。だけど、ジンには嫌な思いをさせちゃった。本当にごめんね」
「いや、そうじゃなくて……」
口ごもるジンは一体何が言いたいのだろう? 何だか、顔がみるみる赤くなっていくような……。
『うむ。これが世にいうラッキースケベってやつだな。アリア、ジンは嫌がってなどない。夜眠れなくなるくらいには、興奮しているかもしれんがな』
「オロチ様っっ!!」
珍しくジンが慌てている。つまり、単純に胸が当たってドキドキしちゃったってこと? なんだ、そういうことか。嫌われなくて良かった。
まだささやかな胸を私は撫で下ろしたのだった。
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