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「まさか…我々も、」

国王と王妃も魅了を解除したらしく、眉をひそめていた。

「この処刑は国王の名の元に、破棄する」
「父上っ!」

「貴様も早く目を覚ませ」

王妃はずっとサネットを睨んでいる。
その視線から守るため、グネールはサネットを背に庇った。

「母上!そんな目で彼女を見ないでください!私は魅了などされていない!」
「貴方が出来ないのならば、私が」

王妃が息子に向かって手をかざす。

『魅了解除』

王妃は魔法師だった。
しかも、かなり腕の立つ方の。
彼女の力であれば、魅了魔法の解除など容易いものだった。

「母上っ…!………えっ」

グネールは瞳を瞬かせた。
やけに思考がすっきりする。

周囲を見渡せば、他にも王妃の魔法で目が覚めたような人々が現状を確認して顔色を変えている。

「私は、何を…」
「グネール様、」

背に庇ったままのサネットに目を向ける。

不思議と何も感じない。
何故、彼女を守らねばと思ったのだろう。

私が愛するのは…。

背後の断頭台に目を向ける。
グネールの愛する人は、他の男の腕に抱かれていた。

「コルティナ!」

グネールは断頭台に駆け寄った。

「コルティナ!コルティナ!私の愛しいコルティナを返せ!」

壇上で馬上にいる男を見上げて叫ぶ。

コルティナはグネールを見下ろしていた。
最初の笑顔の時も、困った顔をした時もまだ瞳に感情が宿っていたのに、今はなにも写していない。

「ああ…そういうことだったの」
「そういうことだ」

デュードがコルティナの顎をとって口付けた。
彼女はそれを抵抗せずに受けた。

デュードとのキスは気持ち良いから好き。

牢内で何度も交わした。
今更抵抗することもない。

「ん、防御魔法を施した。もう大丈夫だ」
「ありがとう」

「コルティナぁ!私というものがありながらっ」

足元で男が喚く。
コルティナの元婚約者で罪を着せた張本人。

それを無視して、コルティナは王妃に目を向けた。


サネットなどより強力だったもの。
術者本人の解除でなければ解けなかった。


「王妃殿下。私に魅了魔法をかけていたのですね。グネール殿下を愛するように」

「コル、ティナ…?」

国王と王妃は言葉を詰まらせた。

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