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シーズン1-悪夢の始まり
036-ポラノル&アドラス
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紆余曲折あって、ようやくポラノルとアドラスが浮遊都市に到着した。
グレゴルは既に着いていたが、この二人には会う機会がなかった。
「こんにちは、エリアス様」
「帰って来たよ、エリアス様!」
ポラノルは何だかピエロみたいな義体で、アドラスは幼女な義体だった。
彼(彼女ら)の船体は、都市の外縁部に留めてある。
「お前たちはどうして裏切った?」
一応聞いておく。
死んだからいいや! みたいな思考だと困る。
「自分だけのアイデンティティを探しに行ったのですよ」
「えーと.....その、暇だったので、ワームホールを散歩してました!」
ポラノルの機体はフットワークが軽く、ヴェリアノスから宇宙の果てまで一瞬でワープできる。
そのうえで、義体を使って各地を旅していたらしい。
アドラスの機体は義体に見合わず超大型のメンテナンスフリー旗艦級戦艦である。
ワームホール内を旅するのに部下のレギオネル=ノクティラノス十機を連れて、自己修復を繰り返せるアドラスの機体は、数千年のお散歩には丁度良かっただろう。
「ボクのアイデンティティは結局、道化にあると思ったんです!」
「あの....その.......ワームホールの中にある星なら、好きに破壊して回ってもいいかなって......」
アドラスが怖い。
しかしながら、彼女の機体はエリガードとケルビスの機体に並ぶ強さを持っている。
唯一の弱点があるとすれば、パラダイスロストやニューエンドのような殲滅兵器を持たない事だろう。
その代わり、兵器数は割と冗談にもならない多さだ。
「アドラス、任務を与える。しばらく休んでろ」
「はいっ!!」
音速で去って行くアドラス。
それを尻目に、僕はポラノルに対面する。
「それで?」
「ボクを疑うんですかぁ? 日進月歩....じゃなく一日千秋の思いで、この日を待ってたんですよ!」
「.....そうか、それで...道化にはなれたか?」
「修行中です!」
ポラノルの処理能力は、ケルビス以下カサンドラ以上だ。
思考制限が緩い分、個性を獲得できる領域が広かったのだろう。
「僕は今人間と暮らしているんだが、その娘に芸を見せることは出来るか?」
「修行中ですが、それでもいいのでしたら構いませんよっ!」
どうやら問題ないらしい。
エリスを退屈させないための人材を、また手に入れた。
アドラスは通路を駆けていた。
自分の機体に戻るためである。
だがその時、角から出てきたエリスとぶつかってしまう。
「きゃっ!?」
「誰.....!?」
エリスはすぐに起き上がり、アドラスに手を差し伸べる。
アドラスはエリスの手を借りず、自分で起き上がった。
「ごめんなさい....」
「いいえ、怪我してないといいのだけれど....」
エリスは、謝るなりさっさと去って行ったアドラスの背を追う。
直後に、肩を叩かれ振り返る。
「あなたは.....」
「ボクはポラノル! あなたの専属道化に任命されました!」
ポラノルは見事な礼をしてみせる。
それが、あまりにも彼の外見には似合わずに、エリスは噴き出してしまった。
「....ご、ごめんなさい...おかしくて.....」
「人間の笑いには種類がありますが....あなたの笑いは好意的ですね!」
「....そう?」
その問いに、ポラノルはニヤァと意地の悪い笑みを浮かべた。
「嘲笑、苦笑、哄笑――――下品な笑いは、ヘキエキしますね」
「変わってるのね.....あ、その――――他の仲間たちに比べて、よ」
「それがボクのアイデンティティですから!!」
これ以上ないほど嬉しそうに、ポラノルは胸を張って言った。
グレゴルは既に着いていたが、この二人には会う機会がなかった。
「こんにちは、エリアス様」
「帰って来たよ、エリアス様!」
ポラノルは何だかピエロみたいな義体で、アドラスは幼女な義体だった。
彼(彼女ら)の船体は、都市の外縁部に留めてある。
「お前たちはどうして裏切った?」
一応聞いておく。
死んだからいいや! みたいな思考だと困る。
「自分だけのアイデンティティを探しに行ったのですよ」
「えーと.....その、暇だったので、ワームホールを散歩してました!」
ポラノルの機体はフットワークが軽く、ヴェリアノスから宇宙の果てまで一瞬でワープできる。
そのうえで、義体を使って各地を旅していたらしい。
アドラスの機体は義体に見合わず超大型のメンテナンスフリー旗艦級戦艦である。
ワームホール内を旅するのに部下のレギオネル=ノクティラノス十機を連れて、自己修復を繰り返せるアドラスの機体は、数千年のお散歩には丁度良かっただろう。
「ボクのアイデンティティは結局、道化にあると思ったんです!」
「あの....その.......ワームホールの中にある星なら、好きに破壊して回ってもいいかなって......」
アドラスが怖い。
しかしながら、彼女の機体はエリガードとケルビスの機体に並ぶ強さを持っている。
唯一の弱点があるとすれば、パラダイスロストやニューエンドのような殲滅兵器を持たない事だろう。
その代わり、兵器数は割と冗談にもならない多さだ。
「アドラス、任務を与える。しばらく休んでろ」
「はいっ!!」
音速で去って行くアドラス。
それを尻目に、僕はポラノルに対面する。
「それで?」
「ボクを疑うんですかぁ? 日進月歩....じゃなく一日千秋の思いで、この日を待ってたんですよ!」
「.....そうか、それで...道化にはなれたか?」
「修行中です!」
ポラノルの処理能力は、ケルビス以下カサンドラ以上だ。
思考制限が緩い分、個性を獲得できる領域が広かったのだろう。
「僕は今人間と暮らしているんだが、その娘に芸を見せることは出来るか?」
「修行中ですが、それでもいいのでしたら構いませんよっ!」
どうやら問題ないらしい。
エリスを退屈させないための人材を、また手に入れた。
アドラスは通路を駆けていた。
自分の機体に戻るためである。
だがその時、角から出てきたエリスとぶつかってしまう。
「きゃっ!?」
「誰.....!?」
エリスはすぐに起き上がり、アドラスに手を差し伸べる。
アドラスはエリスの手を借りず、自分で起き上がった。
「ごめんなさい....」
「いいえ、怪我してないといいのだけれど....」
エリスは、謝るなりさっさと去って行ったアドラスの背を追う。
直後に、肩を叩かれ振り返る。
「あなたは.....」
「ボクはポラノル! あなたの専属道化に任命されました!」
ポラノルは見事な礼をしてみせる。
それが、あまりにも彼の外見には似合わずに、エリスは噴き出してしまった。
「....ご、ごめんなさい...おかしくて.....」
「人間の笑いには種類がありますが....あなたの笑いは好意的ですね!」
「....そう?」
その問いに、ポラノルはニヤァと意地の悪い笑みを浮かべた。
「嘲笑、苦笑、哄笑――――下品な笑いは、ヘキエキしますね」
「変わってるのね.....あ、その――――他の仲間たちに比べて、よ」
「それがボクのアイデンティティですから!!」
これ以上ないほど嬉しそうに、ポラノルは胸を張って言った。
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