もふもふ子狐のせいで、廃棄(ゴミ)の烙印を押されたハズレ男。あまりにも酷い扱いをされたので、異世界召喚をした国を爽快バトルにて滅ぼします

竹本蘭乃

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異世界の残酷な洗礼編

019:復活の漢

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「なんて酷い……ライオスさんもジョルジュ先生も、分かっていてこんな場所になぜ……」
「ここが一番安全だからだよ。だって自分がいるからね」
「フェリスさんが? いや確かにすごく強そうだけど」

 困惑する桜を優しく見つめると、フェリスはその理由を説明する。

「ここはね、城の監視者が入らないように自分がいるの。理由は色々あるけれど、今はそれが全て。変態さんはきっと勇者じゃない……だから本来なら即始末されるはずだったんだよね」
「そんな!? 人の命を何だと思っているんですか!!」
「人の命……か。現王になってからはゴミ以下の存在かな。変態さんはきっと何かあったんでしょう? だからまだ生かされて・・・・・・・いる」

 桜はステータスを表示した水晶体を思い出す。
 たしかにあの時、自分をふくめ勇者たちとは全く違う結果がでたのだから。

「確かにあの時、戦極さんはちょっと変わったステータスでした。しかも数値じゃなくて、言葉のような感じで意味が分からないものでしたね」
「え? 言葉のステータス? まさかあの時代・・・・と同じだと言うの?」

 フェリスは思わず考え込む。どうやら思い当たるフシがあり、それを思い出しているようだ。

「フェリスさん?」
「あぁ、ごめんごめん。ちょっと昔を思い出してね。それよりその袋の中身を早く食べさせてあげて。きっと変態さんもお腹をすかせているだろうし」
「そうでした! 戦極さん、戦極さん起きてください……だめだ、起きないよぅ。あ、そうだ!」

 両手を戦極の体、特に一番傷が深い場所へとそっと伸ばすと、意識を集中する。

「治れ……治れ……治れ……治れ……」
「ちょっとサクラちゃん、いくらなんでもそれじゃあ」
「――って思うじゃん? ところが治るんだなぁこれが」

 フェリスがいぶかしげに桜へと注意すると、その本人が目を覚まし口を開く。

「戦極さん! よかった気がついて」
「ウソでしょ、サクラちゃん貴女……」
「うん、なんとか起き上がれるようになったようだ。本当にありがとう桜。そして……三度か? 侵入者を撃退してくれたのは――フェリス」
「え、侵入者? 戦極さんそれっていったい」
「アハハ、良くわかったねぇ。そうだよ、三匹ほど悪い虫が舞い込んだからお引取りいただいたんだよね」
「お引取りねぇ。それはきっと楽しい、あの世ライフを楽しんでいることだろうさ」
「ちょっとぉ言い方! もぅ、変態さんを殺そうとやってきたんだから、仕方ないじゃない」

 命がかかった状態。しかも殺しに来たという事実に桜は目の前が真っ暗になる。
 だがこの二人は、それが何とも無いように軽口をたたく。
 そんな現実に背筋をブルリとふるわせ、戦極へと口を開く。

「どうして戦極さんの命を……おかしいですよこの国。さっきも一つの村の住民を、余興のために使い潰して――」

 桜は先程見聞きした内容を戦極とフェリスへと話す。
 フェリスは美しい顔を歪め、ギリリと奥歯を噛みしめると乱暴に話す。

「セルドのヤツ、なんて事を!! 上級冒険者を雇って狩らせればいいものを、それを一般人の村人を使うなんて許せないッ!!」
「落ち着けよフェリス。綺麗な顔が台無しだ」
「ちょ、またそういう事を言う! バカッ」
「戦極さんは、こんな時でも落ち着いているんですね。凄いです、私なんか色々な気持ちが重なって、涙しかでませんでした……」
「まぁ、こちとら創業三百年だから伊達じゃねぇのよ。さてと……まずは桜」

 戦極はこれまでにない真面目な表情で桜へと口を開く。
 そのあまりの真剣さに、桜もゴクリとつばを飲み込む。

「は、はい何でしょうか? 私に出来ることなら言ってください!」
「そう言ってくれると思っていた……ならその手に持っている美味そうな匂いの袋。それを俺にくださいいいいい! お願い桜ちゃん、俺もう腹減って死にそうなの!」
「え!? あ、ああそうでした! これを戦極さんへと渡すために来たのに、すっかり忘れていました。どうぞ食べてください。でも雷牛は持ってきてないですけど」

 おおおお!?
 これは美味そうだ! よくわからない肉だがいい香りだし、俺の体が肉を欲している!
 だがなんだこの携行食みたいのは? 
 ……まっず! だが、それがいい。硬いし味は最低だが、パンチェッタと一緒に食うと最高にいける。
 噛むほどに最高の味に変わっていくし、なんというかアレだな。

スルメを食べている気分だふぉるめをたふぇふぇいふきふんふぁ
「あ、あの。誰もとらないので、もう少し落ち着いて食べたらいいんじゃないかと……」

 無理! いつ、いかなる時も敵と遭遇する可能性を考慮し、飯は三分で食えと言うありがたいクソったれ習慣が身についているからな!
 にしても美味い! うますぎるぞこの料理!
 くそぅ……俺が糞尿にまみれていた頃、こんな美味いものを振る舞っていたのか。

 絶対にゆるさないからな、豚王のヤツ!!
 だがやっぱり気になるな。一体誰が俺を殺そうと?

「ふぅ~食べた食べた。桜ありがとう!」
「喜んでもらえてよかったです。ふふ、これで安心して寝れるかな。じゃあ私は帰りますね、また来るので必要なものがあったら、後で教えてください」
「あぁわかったよ。ありがとう、本当に感謝している」

 桜は嬉しそうに破顔すると、手を降って去っていく。
 そんな後ろ姿を見送った戦極は、隣りにいるフェリスへと顔を向けずに話す。

「……心当たりは?」
「そうねぇ、今日は生粋きっすい勇者をたおしたんでしょ? そうなると、その関係が一番たかいかな」
「なるほどね、ヴェネーノ貞夫さんのやつか」
「サダオ? なによそれは。まぁヴェネーノの手の者だと思うよ。飼い主に似て陰湿な格好だったし」

 陰湿な格好ねぇ? じつに貞夫さんらしい。
 俺が魔力も使えないのに、昇司を倒してヴェネーノの顔にドロを塗ったからってところか。
 で、その報復ってわけね。いやだねぇ、ホント。

 さて、問題はこれからだが、フェリスは何かを知っている感じがする。
 しかもこの国の中枢と深い関わりを感じるほど、さっきの豚王への怒りは自然だった。

「これからもよろしく頼みますぜ、美しき番猫さん」
「ふふ、頼まれましたとも。全てが変態さん」

 冗談を言い合いながらも、明日からの事に深い溜息が自然と出る戦極であった。
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