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異世界の残酷な洗礼編
031:決着と魔剣
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「まだ……立つのかよ……ばっけ物がああああああッ!!」
昇司のストレートが戦極の腹を狙い襲いかかる。
だが戦極は動かない。そう、最小の動きで魔剣の腹でガードしていたのだから。
この魔剣、戦極が攻撃をした時に限り、〝吸血で痛みを代償として〟強制的に体力をもっていかれるように作られている。
が、先程とっさにガードをした時に、なぜか昇司の攻撃を吸収するかのように緩和したのだ。
むろん完璧ではないが、強く殴られた程度のダメージだけですみ、体のあちこちへとそれが飛散するが、殺されるほどではない。
その特性を利用した戦極は、最小限の動きで魔剣の腹を昇司の攻撃に合わせて当てていたがために、いまだ健在というワケであった。
「ぐっぞがああああああ!! ハァハァ、ふざっけんな、ハァハァ……やってられっかよ……」
「…………満足してくれたようで結構」
「規格外のくせに、ハァハァ、生……意気な、ハァハァ……ペッ!」
昇司はツバを地面へと吐き捨てると、戦極へ背を向けて歩き出す。
その様子を油断なく見つめる戦極は、完全に気配が消えた後に崩れるように座り込む。
見ればすっかり夕暮れであり、赤き薔薇は朱色の月の光でその輝きを増す。
どうやら何とか戦極は、辛くも生き残れたようだ。
「しのげた……のか?」
「ふっ、らしいな。実にみっともなく、魔力が使えない規格外の如き戦いだった」
ヴェネーノか。いつから見ていた?
ここまでダメージがはいると、流石に全方位の気配を探るのは困難とはいえ、俺の背後を簡単にとるとは……やはり危険な男だ。
「らしいですね先生。では俺は今日は失礼します。あぁ、それと優秀な魔剣ありがとうございました、お陰で大変助かりましたよ」
「ふっ、そうか……。戻れ」
ヴェネーノのがそう言うと、戦極の右手にあった魔剣が消え失せた。
その事に背筋がゾっとするが、それは顔に出さないように立ち上がる。
もし昇司との戦いの最中、ヴェネーノが魔剣を回収したら死んでいたのだから。
「ふっ、今日は護衛なく安心して帰れよう。ではな、規格外の男センゴク」
そう言うとヴェネーノは薔薇園の中に消えていく。
見ている戦極ですら、その姿が緑に溶け込むようにかき消えるのが不気味と思う。
その開放感から、地面に大の字に転がり双子の月を見上げた。
朱と蒼の光が傷を癒やすように、優しく戦極をつつむ。
「なんとか生き残れたか……」
だが魔力の開放はならなかったか……。もっと瀕死じゃないとムリなのか?
骨折はしていないものの、打ち身のダメージと右手の肉がえぐれているのはキツイな……魔剣のヤツめ。
つか、あの魔剣のどれを使っても、トラップだったってワケかよ。酷い話だよな。
それにしても魔剣だ。あれは俺が魔力を通さなかったにもかかわらず、なぜアレだけの強度があったんだ?
通常の金属なら、もろくて使えないが、やはり魔剣だからと言うことなのかも。
魔剣の類が俺でも使えるなら、悲恋美琴を取り戻したら力が戻る可能性が大きい。
「魔剣……か」
そう言うと戦極はその場で寝てしまう。
敵地のど真ん中とは言え、それだけのダメージを負っていた戦極は、深い眠りへと落ちる。
すっかり日が落ち周囲が闇に沈むころ、上空から巨大な物体が舞い降りてきた。
「あ、いた! ちょっと変態さん起きて! ねぇ変態さん! だめだ起きない。仕方ないなぁ」
フェリスは戦極をくわえると、背中へと放り上げる。
そのまま落ちないように体を動かしてから、夜空へと静かに飛び去るのだった。
だがその様子を見ていた一人の男が、ツル薔薇の影から現れると、右手を差し出し「魔剣招来」とつぶやく。
「ふっ、忌々しいマンティコアめ。だがこの魔剣・メイツにあんな効果があったとはな。ただの苦痛を与えるだけの駄剣だと思っていたが……ん、なんだこの感じ」
ヴェネーノは右手に持った魔剣・メイツを持った時から違和感があった。
その原因が何なのかが気になり、何気なしにヴェネーノは魔剣・メイツを横薙ぎに一閃。
「――ッ!? な、なんだこれは……」
何気ない一閃だったが、驚くほどの鋭い斬撃が飛び、薔薇の茂みを綺麗に両断してしまう。
一瞬呆然としたが、その特性に気がついたヴェネーノは口角を上げる。
「ふっ……クククク。そうか、そうだったのか。其がしはどうやら勘違いをしていたようだ。しかし」
ヴェネーノは魔剣・メイツをジトリと見つめながら戦極を思い出す。
あの極限的な状況でも折れず、さらに生還したという事実。
むろん昇司が殺しそうになれば、即座に止めるつもりではあったが、その瞬間は来なかった。
そしてこの魔剣・メイツの真の力を引き出した手腕を思うと、ヴェネーノは思わず口から本音がこぼれる。
「ふっ、やはりあの男は危険かもしれぬ。早々に殺しておくべきだろう」
そう言うと落ちた赤い薔薇を拾い胸に飾ると、静かに去っていくのだった。
◇◇◇
その頃、馬小屋では桜と剛流が落ち着かない様子で待っていた。
戦極を探しにいったフェリスも戻らず、当然戦極もいない。
もしかしたら……と悪い考えばかりが二人を支配しようとするが、戦極を信じる事でそれも乗り越えた。
やがて月を背景に、大きな影が夜空を進むのが見える。
だんだんと近づくそれは、マンティコアのフェリスだと分かったことで二人は安心してため息を吐く。
「フェリスさん! 戦極さんは無事ですか!?」
「サクラちゃん安心して、ひどいケガだけど生きてはいるから」
「ひ、酷いケガってそんなにですか!?」
「タケルくんも安心して、これならサクラちゃんが直せるから、ね?」
ゆっくりと地面へと降りるフェリス。
そのまま静かに馬小屋へと入ると、戦極の愛用の藁の山へとおろすのだった。
昇司のストレートが戦極の腹を狙い襲いかかる。
だが戦極は動かない。そう、最小の動きで魔剣の腹でガードしていたのだから。
この魔剣、戦極が攻撃をした時に限り、〝吸血で痛みを代償として〟強制的に体力をもっていかれるように作られている。
が、先程とっさにガードをした時に、なぜか昇司の攻撃を吸収するかのように緩和したのだ。
むろん完璧ではないが、強く殴られた程度のダメージだけですみ、体のあちこちへとそれが飛散するが、殺されるほどではない。
その特性を利用した戦極は、最小限の動きで魔剣の腹を昇司の攻撃に合わせて当てていたがために、いまだ健在というワケであった。
「ぐっぞがああああああ!! ハァハァ、ふざっけんな、ハァハァ……やってられっかよ……」
「…………満足してくれたようで結構」
「規格外のくせに、ハァハァ、生……意気な、ハァハァ……ペッ!」
昇司はツバを地面へと吐き捨てると、戦極へ背を向けて歩き出す。
その様子を油断なく見つめる戦極は、完全に気配が消えた後に崩れるように座り込む。
見ればすっかり夕暮れであり、赤き薔薇は朱色の月の光でその輝きを増す。
どうやら何とか戦極は、辛くも生き残れたようだ。
「しのげた……のか?」
「ふっ、らしいな。実にみっともなく、魔力が使えない規格外の如き戦いだった」
ヴェネーノか。いつから見ていた?
ここまでダメージがはいると、流石に全方位の気配を探るのは困難とはいえ、俺の背後を簡単にとるとは……やはり危険な男だ。
「らしいですね先生。では俺は今日は失礼します。あぁ、それと優秀な魔剣ありがとうございました、お陰で大変助かりましたよ」
「ふっ、そうか……。戻れ」
ヴェネーノのがそう言うと、戦極の右手にあった魔剣が消え失せた。
その事に背筋がゾっとするが、それは顔に出さないように立ち上がる。
もし昇司との戦いの最中、ヴェネーノが魔剣を回収したら死んでいたのだから。
「ふっ、今日は護衛なく安心して帰れよう。ではな、規格外の男センゴク」
そう言うとヴェネーノは薔薇園の中に消えていく。
見ている戦極ですら、その姿が緑に溶け込むようにかき消えるのが不気味と思う。
その開放感から、地面に大の字に転がり双子の月を見上げた。
朱と蒼の光が傷を癒やすように、優しく戦極をつつむ。
「なんとか生き残れたか……」
だが魔力の開放はならなかったか……。もっと瀕死じゃないとムリなのか?
骨折はしていないものの、打ち身のダメージと右手の肉がえぐれているのはキツイな……魔剣のヤツめ。
つか、あの魔剣のどれを使っても、トラップだったってワケかよ。酷い話だよな。
それにしても魔剣だ。あれは俺が魔力を通さなかったにもかかわらず、なぜアレだけの強度があったんだ?
通常の金属なら、もろくて使えないが、やはり魔剣だからと言うことなのかも。
魔剣の類が俺でも使えるなら、悲恋美琴を取り戻したら力が戻る可能性が大きい。
「魔剣……か」
そう言うと戦極はその場で寝てしまう。
敵地のど真ん中とは言え、それだけのダメージを負っていた戦極は、深い眠りへと落ちる。
すっかり日が落ち周囲が闇に沈むころ、上空から巨大な物体が舞い降りてきた。
「あ、いた! ちょっと変態さん起きて! ねぇ変態さん! だめだ起きない。仕方ないなぁ」
フェリスは戦極をくわえると、背中へと放り上げる。
そのまま落ちないように体を動かしてから、夜空へと静かに飛び去るのだった。
だがその様子を見ていた一人の男が、ツル薔薇の影から現れると、右手を差し出し「魔剣招来」とつぶやく。
「ふっ、忌々しいマンティコアめ。だがこの魔剣・メイツにあんな効果があったとはな。ただの苦痛を与えるだけの駄剣だと思っていたが……ん、なんだこの感じ」
ヴェネーノは右手に持った魔剣・メイツを持った時から違和感があった。
その原因が何なのかが気になり、何気なしにヴェネーノは魔剣・メイツを横薙ぎに一閃。
「――ッ!? な、なんだこれは……」
何気ない一閃だったが、驚くほどの鋭い斬撃が飛び、薔薇の茂みを綺麗に両断してしまう。
一瞬呆然としたが、その特性に気がついたヴェネーノは口角を上げる。
「ふっ……クククク。そうか、そうだったのか。其がしはどうやら勘違いをしていたようだ。しかし」
ヴェネーノは魔剣・メイツをジトリと見つめながら戦極を思い出す。
あの極限的な状況でも折れず、さらに生還したという事実。
むろん昇司が殺しそうになれば、即座に止めるつもりではあったが、その瞬間は来なかった。
そしてこの魔剣・メイツの真の力を引き出した手腕を思うと、ヴェネーノは思わず口から本音がこぼれる。
「ふっ、やはりあの男は危険かもしれぬ。早々に殺しておくべきだろう」
そう言うと落ちた赤い薔薇を拾い胸に飾ると、静かに去っていくのだった。
◇◇◇
その頃、馬小屋では桜と剛流が落ち着かない様子で待っていた。
戦極を探しにいったフェリスも戻らず、当然戦極もいない。
もしかしたら……と悪い考えばかりが二人を支配しようとするが、戦極を信じる事でそれも乗り越えた。
やがて月を背景に、大きな影が夜空を進むのが見える。
だんだんと近づくそれは、マンティコアのフェリスだと分かったことで二人は安心してため息を吐く。
「フェリスさん! 戦極さんは無事ですか!?」
「サクラちゃん安心して、ひどいケガだけど生きてはいるから」
「ひ、酷いケガってそんなにですか!?」
「タケルくんも安心して、これならサクラちゃんが直せるから、ね?」
ゆっくりと地面へと降りるフェリス。
そのまま静かに馬小屋へと入ると、戦極の愛用の藁の山へとおろすのだった。
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