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完全開放!! 爽快バトル編
095:残骸のゆくえ
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「……美琴さん、説明ぷり~ず」
「えっと、ね。怒らないで聞いてほしいんだよ? 実は――」
美琴の説明を聞く戦極。
しだいに顔色が悪くなり、徐々に顔面から血の気が失せる。
そして死んだ冷凍サンマのような目になったかと思うと、戦極は背後へと卒倒。
後頭部にくっついていた元凶のわん太郎は、そのまま戦極の頭に押しつぶされて「ふぷっぅう」とおかしな悲鳴をあげた。
「戦極様ああああ!?」
「はぁ~びっくりしたぁ。ワレのお腹が潰れるかと思ったワンよ~」
「びっくりしたのは俺のほうだ!! ったく、まさかお前がぶち当たって来たから美琴とはなれたばかりか、その後は異世界食べ歩き紀行をしていただとぅ?」
戦極の顔が怒りで、フツフツと右のこめかみがヒクつく。
それを見たわん太郎と美琴は、「ひぃ」と短く悲鳴をあげると、転がるわん太郎を拾い上げて戦極へと説明。
「せ、戦極様。あのね、あのね。その――ごめんなんだよッ」
「ちょおおお!! 女幽霊! ワレを盾にして顔を隠すのをやめるんだワン!! あ、あるじぃ。そ、そのねぇ」
こめかみを激ピクしながら二人をにらむ戦極。
ゆっくりと震える右手をかざし、わん太郎の顔の前にすすめ……。
「「ごめんなさーい!!」」
「許さんッ!!」
「「ひゃあああああああ!? ……って、あれぇ?」」
思わず目を閉じる美琴とわん太郎。
だが何事も起こらないことを不思議に思いつつ、ゆっくりと目を開く。
瞬間、わん太郎のまんまる黒いお鼻にピンと軽く衝撃があり、それが何かと気がつき見る。
そこには戦極の右人差し指があり、わん太郎の鼻を軽く弾いていた。
「ぁぅ……あるじぃ?」
「で、連れて行ってくれるんだろう? その絶品ナマズっぽい料理を食べにさ?」
美琴とわん太郎は顔を見合わせ、そくざに頷く。
「「もちろん!!」」
「じゃあ決まりだ。そうとなれば、こんな場所から早く帰ろうぜ。ソイツを片付けたらな」
戦極の視線の先にあるもの。
それは〝王の残骸と呼ばれたモノ〟の頭蓋骨が転がっていた。
どうやらエカテリーナの魔法に吹き飛ばされ、ここまで転がって来たようであった……が。
「いい加減姿を見せたらどうだ? まだそこにいるんだろう、性悪の〝付喪神〟め」
戦極がそう言った瞬間、暴風が吹き荒れ散乱した骨が集まりだす。
それは王の残骸を形成する部位であり、時間を巻き戻したように集まり組み上がる。
「……いつから分かっていた?」
「最初にあった時からだよ」
コキリと首を鳴らし、不思議そうに話し始める付喪神。
「ほぉ、すると古廻。俺が何を願い、何を成そうとしているかも理解している、と?」
「当然だ。こちとら伊達に三百年、おまえらと付き合ってきたわけじゃない。そのストレートな行動原理は理解しているつもりさ」
付喪神は不気味に「ぐっぐっぐ」と笑うと、楽しげに話を続ける。
「すると俺を討滅するか、古廻の者よ?」
「して欲しいならするが? 今ならオマエ程度、骨すら残らず討滅してやろう」
不思議なことに骨の口元が歪み、戦極の言葉を楽しみながら口を開く。
「ぐっぐっぐ! 怖や怖や。これは失礼をした、古廻の当主よ。して、俺がなぜこのような事をしたかも理解を?」
「ある程度はな。オマエは食えないヤツだが、俺の先祖との約束を律儀に果たそうとした。その身をソイツに食わせても……な」
戦極はジッと王の残骸全体を見る。
その意味を理解した付喪神は、頷きその先を話す。
「そうだ。俺は賭けたのだ……三百年後に現れるであろう、おまえの存在に」
「随分と信頼されたものだな」
「当然だ、古廻という存在はその価値がある。だからこの素体ともいえる、アンデットの王を〝魂から腐らせる〟のに時間をかける事もできた」
なるほどな。
どうりで王と名乗るクセに、馬鹿だと思った。
攻撃も単調だったし、二度も口内に侵入させるとか、頭が腐っているんじゃないかと思っていたからな。
まぁマジで腐ってはいたが……つまり。
「そいつを乗っ取るだけじゃ、本来の目的。ここの土地の浄化が不十分だったわけだな?」
「ぐっぐっぐ、流石は古廻。そのとおりよ、コヤツより完全に主導権を奪取するには、相応の隙が必要だった」
「だから極限まで頭を馬鹿にして、俺にコイツの魂を完全に討滅するように仕向けたか」
「そうだ。俺の力ではコヤツの力を削ぐのは、そこまでが限界だったからな」
「それでここまで俺、古廻戦極をコケにしたんだ。成果はあるんだろう?」
付喪神は「無論だ」と言うと、白い風に包まれた。
風の勢いは激しさを増し、それが徐々におさまり始めると、内部より白い巨体が現れる。
現れた巨体。そのあまりの見事さに戦極をはじめ、美琴もわん太郎も息を呑む。
そこに現れた巨体。その姿は……。
「白竜、か」
「ぐっぐっぐ。そのような高等なものとは違う。俺は元のコヤツの力を奪い、不死の竜として君臨せし存在となっただけよ」
「……それで、その不死を使いどうするつもりだ?」
誰も口を開かず、誰もその先を言おうとしない。
が、そこに小狐のわん太郎が口を開くのだった。
「えっと、ね。怒らないで聞いてほしいんだよ? 実は――」
美琴の説明を聞く戦極。
しだいに顔色が悪くなり、徐々に顔面から血の気が失せる。
そして死んだ冷凍サンマのような目になったかと思うと、戦極は背後へと卒倒。
後頭部にくっついていた元凶のわん太郎は、そのまま戦極の頭に押しつぶされて「ふぷっぅう」とおかしな悲鳴をあげた。
「戦極様ああああ!?」
「はぁ~びっくりしたぁ。ワレのお腹が潰れるかと思ったワンよ~」
「びっくりしたのは俺のほうだ!! ったく、まさかお前がぶち当たって来たから美琴とはなれたばかりか、その後は異世界食べ歩き紀行をしていただとぅ?」
戦極の顔が怒りで、フツフツと右のこめかみがヒクつく。
それを見たわん太郎と美琴は、「ひぃ」と短く悲鳴をあげると、転がるわん太郎を拾い上げて戦極へと説明。
「せ、戦極様。あのね、あのね。その――ごめんなんだよッ」
「ちょおおお!! 女幽霊! ワレを盾にして顔を隠すのをやめるんだワン!! あ、あるじぃ。そ、そのねぇ」
こめかみを激ピクしながら二人をにらむ戦極。
ゆっくりと震える右手をかざし、わん太郎の顔の前にすすめ……。
「「ごめんなさーい!!」」
「許さんッ!!」
「「ひゃあああああああ!? ……って、あれぇ?」」
思わず目を閉じる美琴とわん太郎。
だが何事も起こらないことを不思議に思いつつ、ゆっくりと目を開く。
瞬間、わん太郎のまんまる黒いお鼻にピンと軽く衝撃があり、それが何かと気がつき見る。
そこには戦極の右人差し指があり、わん太郎の鼻を軽く弾いていた。
「ぁぅ……あるじぃ?」
「で、連れて行ってくれるんだろう? その絶品ナマズっぽい料理を食べにさ?」
美琴とわん太郎は顔を見合わせ、そくざに頷く。
「「もちろん!!」」
「じゃあ決まりだ。そうとなれば、こんな場所から早く帰ろうぜ。ソイツを片付けたらな」
戦極の視線の先にあるもの。
それは〝王の残骸と呼ばれたモノ〟の頭蓋骨が転がっていた。
どうやらエカテリーナの魔法に吹き飛ばされ、ここまで転がって来たようであった……が。
「いい加減姿を見せたらどうだ? まだそこにいるんだろう、性悪の〝付喪神〟め」
戦極がそう言った瞬間、暴風が吹き荒れ散乱した骨が集まりだす。
それは王の残骸を形成する部位であり、時間を巻き戻したように集まり組み上がる。
「……いつから分かっていた?」
「最初にあった時からだよ」
コキリと首を鳴らし、不思議そうに話し始める付喪神。
「ほぉ、すると古廻。俺が何を願い、何を成そうとしているかも理解している、と?」
「当然だ。こちとら伊達に三百年、おまえらと付き合ってきたわけじゃない。そのストレートな行動原理は理解しているつもりさ」
付喪神は不気味に「ぐっぐっぐ」と笑うと、楽しげに話を続ける。
「すると俺を討滅するか、古廻の者よ?」
「して欲しいならするが? 今ならオマエ程度、骨すら残らず討滅してやろう」
不思議なことに骨の口元が歪み、戦極の言葉を楽しみながら口を開く。
「ぐっぐっぐ! 怖や怖や。これは失礼をした、古廻の当主よ。して、俺がなぜこのような事をしたかも理解を?」
「ある程度はな。オマエは食えないヤツだが、俺の先祖との約束を律儀に果たそうとした。その身をソイツに食わせても……な」
戦極はジッと王の残骸全体を見る。
その意味を理解した付喪神は、頷きその先を話す。
「そうだ。俺は賭けたのだ……三百年後に現れるであろう、おまえの存在に」
「随分と信頼されたものだな」
「当然だ、古廻という存在はその価値がある。だからこの素体ともいえる、アンデットの王を〝魂から腐らせる〟のに時間をかける事もできた」
なるほどな。
どうりで王と名乗るクセに、馬鹿だと思った。
攻撃も単調だったし、二度も口内に侵入させるとか、頭が腐っているんじゃないかと思っていたからな。
まぁマジで腐ってはいたが……つまり。
「そいつを乗っ取るだけじゃ、本来の目的。ここの土地の浄化が不十分だったわけだな?」
「ぐっぐっぐ、流石は古廻。そのとおりよ、コヤツより完全に主導権を奪取するには、相応の隙が必要だった」
「だから極限まで頭を馬鹿にして、俺にコイツの魂を完全に討滅するように仕向けたか」
「そうだ。俺の力ではコヤツの力を削ぐのは、そこまでが限界だったからな」
「それでここまで俺、古廻戦極をコケにしたんだ。成果はあるんだろう?」
付喪神は「無論だ」と言うと、白い風に包まれた。
風の勢いは激しさを増し、それが徐々におさまり始めると、内部より白い巨体が現れる。
現れた巨体。そのあまりの見事さに戦極をはじめ、美琴もわん太郎も息を呑む。
そこに現れた巨体。その姿は……。
「白竜、か」
「ぐっぐっぐ。そのような高等なものとは違う。俺は元のコヤツの力を奪い、不死の竜として君臨せし存在となっただけよ」
「……それで、その不死を使いどうするつもりだ?」
誰も口を開かず、誰もその先を言おうとしない。
が、そこに小狐のわん太郎が口を開くのだった。
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