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092:千の懲罰

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「ひぃぃぃ!? な、なんなのだあれは一体!?」
「何って? 愚帝候補のアナタを無惨に何度も何度も何度でも、皮をはぎ、爪を剥がし、目玉をくり抜き、舌を引き抜き、楽しみ、絶好調に回復させながらコロス天の使いですが……モチロン神に楯突くクソガキも同様です。さぁぁぁぁ~どうするのですクソガキィィィ!?」

 その言葉がよほど恐怖だったのか、玉座にしがみつきながらヴァルマークは悪臭漂う体液で、最上の布で作られたボトムスが濡れる。

『主よ……このままでは……』
「なんだよ、この世紀末大戦な冗談みてぇな光景はさ。天が羽が生えた筋肉で埋まってるぞ……」

 次々と天を埋める堕天使の群れは、あっという間に夜空を、エンジェルリングの光で白く輝かせる。

 その数、もはや数えるのも馬鹿馬鹿しいほどに、次々と円形の門をくぐり抜けてきた。
 
「ハッ~ハッハ! さぁどうするぅぅぅクソガキぃぃぃ? まずは第一小隊……逝ってみるぅ?」

 瞬間、天使軍のごく一部から天使が五十ほど抜け出て、頭に十字架がついた杖で襲いかかってきた。
 そもそもスピードがおかしい。

 上空と船の上で、これだけ離れていたはずだが、あっという間に距離を詰められてしまう。

『そこまで操れる? そうか、聖女たるアリシアの――来ますぞ主!!』
「チィ、頼むぞゴッズ・トリオ!!」

 神の釣竿――七色天空の破片ゴッド・ロッド
 黄金の小魚――ゴッド・ルアー。
 二十三式・漆黒の蠍座さそりざ――ゴッド・リール。

 そして、これら三つの神の釣具を最適化しつつ、俺のイメージ通りに動かしてくれる俺の相棒――ワーレン・シャール・ロッドマン。

 それらが俺の意思を毛ほどのミスも許さず、的確・正確・精密は無論、それらを上回り俺の足りない部分を補完してくれる。

 漆黒の星座のルアーにし、先頭を飛ぶ堕天使へ向けて喰らいつかせる。
 が、手に持つ杖で弾き飛ばされてしまう、が。

「何を勝ち誇った口元している? 俺はまだ毛ほどの傷もついてねぇぞ!!」

 ゴッズ・トリオのポテンシャルを最大限に発揮し、ルアーを弾かれてもゴッド・ルアーが引くラインで真っ二つに切断。
 
 が、別の天使にルアーを鷲掴みされてしまう。が、「気安く触るんぢやねえええ!!」とゴッド・ロッドを真下へと振り下げる。

 その衝撃で堕天使は斜めに切り裂かれ、背後の天使までがそれに巻き込まれて落ちる。

 さらに勢いそのままに、ゴッド・ロッドを螺旋状らせんじょうに巻き取り、そこへ次々と堕天使を巻き込む。

 細切れになった堕天使は、青白い粒子となって天へと還る。
 気がつけば全ての堕天使を消し去っていた……が。

「すごい! すご~~~~い! いや、すばらすぅ~ですよ、クソガキイぃ~。よくもまぁ神の使徒を無傷で倒せました。だ・が・し・か・し? おっと、また追加で五百ほど・・・・召喚してしまいましたねぇ」

 空中の丸い扉から湧き出てくる堕天使。
 その数は今倒した十倍の数が出てきた。冗談だろう?

「良き! 良き良き良き! その絶望に染まった表情は恍惚こうこつとしますね。ハァ~良いものは良い。まさに私好み!」
「おいおい。元の体だった頃は、もう少しキモさに慎みがあったが、今は見る影もないが?」

 ゲス天使は両手を広げると、大げさに言い放つ。

「キモい? 意味は分かりませんが、侮辱と受け取っておきましょう。な・れ・ば? なればあああ! その返礼は十……? いや百? ノンノン、ここは千倍で返礼いたしましょ?」

 そう言うと、ヤツは大きく手を振り五万の堕天使を俺に堕とす。クソ、ここまでなのか!?
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