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093:黄昏れの皇魚
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◇
――時は少し戻り、堕天使が天界より堕ちて来たと同時刻。神釣島中心部・朽ちた社内。
社の奥に安置されている、高さニメートルほどの御神体。〝ゑびす像〟の周りに薄緑いろの半透明で長方形型の物が現れた。
そこには文字と共に、〝理〟と同じ無機質な声がひびく。
『【第壱位警報発令】神釣島周辺ニ。エンジェル・フォール現象ヲ。確認。神釣島上空。ニ。第七階位・プリンシパリティ級。ノ。存在。複数。確認』
すると、御神体たる〝ゑびす像〟の目が見開く。
表情は全く変わらないゑびす顔だが、瞳だけは高速で動き、次々と表示される透明なウインドー見てから口を開く。
「海王――大和様の様子はどうなっとる?」
『対象:島野大和。ヘ。堕天シタ。権天使。ト。同等ノ眷属ガ。ヘヴンズゲート。ヨリ出現。対象:島野大和。ヘ。攻撃後。尚モ増大中』
「了解や。ほな今からソイツらは大和様の敵認定や。便宜上、これよりあの阿呆共は〝神罰の贄〟と呼称するで?」
『中央管制室・司令官〝ゑびす〟ノ。命令ヲ。受理。此レヨリ。敵対勢力。ヲ〝神罰ノ贄〟ト呼称』
「よっしゃ。現在の神釣島の稼働率は?」
『対象:島野大和。ガ。LV99。ノ。限界値ニ達シタ事デ。稼働率。ハ。三割デス』
「ほぉ~ん。もう限界値までいきおったか。流石は大和様やで。ほんで……いつリミットブレイクするんや?」
『回答。を。文殊システム。へ。シュミレート。を。依頼…………回答アリ。神罰の贄。の。駆逐数。が。二千三百。で。リミットブレイク。予想時間。二千四百三十一秒後』
「四十分ちょいか……大和様は戦闘のドシロウトやからな……」
ゑびすは少し考えるが、すぐに次の指示へと移る。
「いや、大丈夫や。ロッドマンもおるし、何より海王の称号を持つお方や。白いハエ如きに負けるはずもないわ。よっしゃ、こっちはこっちで出来る事しとこか」
『了。現在。トレル。オプション。ハ。三種類デス』
「ふむ……よっしゃ! コイツがええな」
『了。ゑびす司令官。ノ。命令受諾。第七ハンガー。ヨリ。ガーディアンNo.3――〝黄昏れの皇魚〟ヲ。放チマス』
瞬間、神釣島に軽い地震が起こる。
それに満足しながら、ゑびすはつぶやく。
「海王に逆らう馬鹿共に見せたろうやないか。リミットブレイクした本物の神に逆らった末路ってやつをな?」
◇◇◇
◇
――時は現在。大和は死にものぐるいで天から止めどなく堕ちてくる、〝堕天〟と目を覆う、黒はちまきをした天使軍と戦っていた。
「あああくそ! これじゃきりがないぞ!?」
『耐えて、耐えてください主よ。それにしても、駄犬たちがいればもう少し楽になるものを』
「それを言うなって。あいつらは俺の意志を理解して、別の防衛戦をしてるんだからな」
海上を尻目に相棒へそう話す。
そこにはエマージェに乗った、わん太郎が堕天使軍から遭難者を守っていた。
まったくいい仕事をすると満足しながらも、正直こっちもヤバイ。
このままなら確実に俺のMP釣が尽き果て、その瞬間あっという間に押しつぶされるだろう。
焦りがミスを生み、それが形となって現れ――
「――ぐぁぁッ!?」
『あ、主!? ここは私がッ!』
相棒は基本自分から攻撃はできない。
が、釣り糸だけは動かすことができるが、俺からすれば非力そのものだ。
しかし今、俺が堕天使の一撃を受け、左腕に激痛が走ったことで、天使の一撃を糸を丸めてガードしてくれた。
「助かった! 油断しちまった」
『いえ、ですがこのままでは……』
「チィ。どのみちこのままでは殺られる。なら一か八か、あの門自体に攻撃するぞ!!」
『座して死を待つより……ですか。いいでしょう、どこまでもお供いたしますぞ!!』
「そうこなくちゃな! ゴッド・ルアー頼むぜぇ~行ってこおおおおおおおおいッ!!」
思い切り振りかぶり、黄金のルアーをぶっ放す。
夜空に金色の一筋の閃光が昇り、直線上にいた堕天共が光の粒子となり消え去り、ルアーが堕天使が出てくる門へとぶち当たった瞬間。
「やったか!?」
『クッ……残念ながら……』
弾き返された黄金のルアーが、無惨に天から落ちてくる。
その光景に歯ぎしりをした瞬間、海面が突如盛り上がり化け物が現れた。
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