家族に辺境追放された貴族少年、実は天職が《チート魔道具師》で内政無双をしていたら、有能な家臣領民が続々と移住してきて本家を超える国力に急成長

ハーーナ殿下

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第9話:記念日

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し――――ん。

気がつくと、広場が静寂に包まれている。誰もが下を向いて、口を閉じていた。
ボクは熱くなりすぎて、場違いな話をしてしまったのかもしれない。

食事の挨拶をする時に、ボクは場違いな演説を長々としてしまったのだ。みんな呆れて無言になるのも無理もない。

――――だが直後、広場に異変が起きていた。

「うっ……うっ……」
「ライル様の……有りがたいお言葉……」
「本当に……この村に来てよかった……」

広場中から、すすり泣きが聞こえてくる。領民は呆れて無言だったのではなかった。
感極まって涙を流していたのだ。

「ライル様……バンザイ!」
「ライル様の開拓村……“ライル村”バンザイ!」
「バンザイ、ライル村!」

そしてボクの名前を連呼しながら、万歳三唱をしていく。
その中で“ライル村”という、聞きなれない単語も出てきた。これはいったいどういうことだ?

「うっ……ライル様、こちらにサインをお願いいたします」

そんな疑問に思っていた時、背後から老練な執事セバスチャンが声をかけてくる。
セバスチャンも大粒の涙を流していた。流れ落ちる涙も拭かずに、ボクに渡してきたのは一枚の書類だ。

「えっ? これはなんの書類?」
「こちらは領地の命名の決定書類です、ライル様」

どうやらボクのいない時、セバスチャンは村の名前の候補を調べていたという。
確認すると、書類に書かれていたのは一つの候補名だけだ。他の候補名は何故かなかった。

「えっ、“この名前”でいいの、みんなは?」
「はい、もちろんでございます。領民にアンケート調査をして、こちらが満場一致で候補となりました。この領民たちの声援が、その証拠でございます」

書類に書いてある候補名を見て、ボクは驚く。でも全員が賛成してくれたのなら、却下する理由はない。
書類に許可のサインを書き入れる。

「広い心遣い、まことにありがとうございます、ライル様。それでは僭越ながら、家臣代表として、私の方から領民へ発表しておきます」

セバスチャンは壇上に上がり、書類を高々と天に掲げる。

「この声が届く場にいる全ての者よ、よく聞け! この瞬間から開拓村は“ライル村”となった。そして四方に広がる土地を“ライル領”と制定する! ライル領民として恥ずかしくないように、領地の繁栄のために命を尽くすのである、領民たちよ!」

「「「うぉおおおお!」」」

宣誓の直後、領民から更に大歓声が上がる。女子ども老若男女の関係なく、誰もが顔を高揚させて拳を突き上げていた。

「ライル様のために、この命を捧げます!」
「ライル領を大陸一の領地にぃい!」

「「「ライル様! ライル様!」」」

地響きが起きるほどの、凄まじいライルコールが響き渡る。
領民の誰もがボクに向かって、熱い眼差しを向けてきた。
羨望と情熱と熱意と狂気、信仰心……そんなとてつもないエネルギーをボクは感じていた。熱狂的すぎてちょっと怖いけど、悪い気はしない。

「みんな……ありがとう。改めてライル領のために、みんなで頑張っていこう!」

――――この後、広場は宴の会場となった。

宴と言っても、誰もが着の身着のままで移住してきたために、酒は村にはない。

「はっはっは……かんぱーい!」
「ライル領の未来に、かんぱーい!」

だが水を飲みながら、誰もが酔いしれていた。
希望に満ちたライル領の設立に、立ち合えた感動と興奮。領民たちは心頭しながら魂が酔いしれていたのだ。

「ふっふっふ……本当に素敵な雰囲気だな、このライル領の領民は……」

そして幸せな空気に包まれて、ボクも宴を楽しんでいくのであった。











後の歴史家はたびたび論議する。
大陸の歴史の中で多くの分岐点があるが、一番大きな分岐点はいつか?

多くの歴史は即座に答える。『それは間違いなく“ライル領が設立された日”だ』と。

何故なら最初は数十人しかいなかった辺境の村がその後、大陸の歴史と発展に多大なる影響を与えていくのだ。

数千年の大陸の歴史の中でも、これ以上の分岐点はない、と後の歴史家の誰もが熱意を込めてライル領設立について語るのだ。









「よし、明日も早起きして、頑張るぞ!」

そんな後年の歴史家に騒がれることも知らずに、ライルは明日の辺境開拓を考えながら夢に落ちていくのであった。












《序章:完》

次話から本章が開幕

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