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銀の瞳の辺境伯は、捨てられた薬師令嬢を離さない
最終章:陽だまりの温室で
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カイエン・ヴェインベルク辺境伯が、クラインフェルター伯爵令嬢セレスティンを溺愛しているという噂は、あっという間に社交界に広まった。そして、二人の正式な婚約が発表されると、誰もが驚き、そして祝福した。
かつてセレスティンを捨てたジュリアンと、彼をそそのかしたイザベラは、社交界での居場所を完全に失った。ヴァロワ公爵家からも見放され、惨めな末路を辿ったと風の噂で聞いたが、わたくしの心は、もう何も動かなかった。
わたくしは、カイエン様と共に、彼の領地である北の辺境へと旅立った。
そこは、王都とは比べ物にならないほど、厳しくも美しい自然が広がる場所だった。
「ここにも、お前のための温室を作らせた」
カイエン様が指し示した先には、クラインフェルターの屋敷にあったものよりも、さらに大きく、立派なガラスの温室がそびえ立っていた。
「まあ……!」
「ここなら、王都では育たないような、北の薬草も育てられるはずだ。お前の知識が、この領地の役に立つだろう」
彼は相変わらずぶっきらぼうに言うけれど、その言葉の中に、わたくしへの絶対的な信頼と愛情がこもっているのが分かる。
わたくしは、辺境伯妃として、そして薬師として、領地の医療の改善に努めた。カイエン様は、そんなわたくしの活動を、全面的に支援してくれた。最初は「冷酷非情の辺境伯」を恐れていた領民たちも、わたくしたちの姿を見るうちに、次第に心を開いてくれるようになった。
ある晴れた日の午後。
わたくしは、新しい薬草の苗を植えようと、温室で作業をしていた。
そこへ、執務を終えたカイエン様がやってきた。
「セレスティン」
「カイエン様、お疲れ様です」
彼はわたくしの隣にしゃがみ込むと、その大きな手で、優しくわたくしの頬を撫でた。
「……幸せか?」
「はい。とても」
わたくしが微笑むと、彼もまた、柔らかな笑みを浮かべた。彼のこんな表情を見られるのは、世界でわたくしだけだ。
「俺もだ。お前という光を見つけてから、俺の世界は色を取り戻した。……愛している、セレスティン。俺だけの、かけがえのない薬師」
「わたくしもです、カイエン様。世界で一番、愛しております」
陽光が降り注ぐ温室の中で、わたくしたちは、再び唇を重ねた。
薬草の甘い香りと、愛する人の温もりに包まれて。
偽りの婚約が終わりを告げたあの夜会の日から、わたくしの本当の人生が始まった。
そして、その隣には、いつだってこの人がいる。
不器用で、独占欲が強くて、でも、誰よりも優しい、わたくしだけの辺境伯様が。
この幸せが、永遠に続きますように。
わたくしは、陽だまりの中で、そっと祈りを捧げた。
かつてセレスティンを捨てたジュリアンと、彼をそそのかしたイザベラは、社交界での居場所を完全に失った。ヴァロワ公爵家からも見放され、惨めな末路を辿ったと風の噂で聞いたが、わたくしの心は、もう何も動かなかった。
わたくしは、カイエン様と共に、彼の領地である北の辺境へと旅立った。
そこは、王都とは比べ物にならないほど、厳しくも美しい自然が広がる場所だった。
「ここにも、お前のための温室を作らせた」
カイエン様が指し示した先には、クラインフェルターの屋敷にあったものよりも、さらに大きく、立派なガラスの温室がそびえ立っていた。
「まあ……!」
「ここなら、王都では育たないような、北の薬草も育てられるはずだ。お前の知識が、この領地の役に立つだろう」
彼は相変わらずぶっきらぼうに言うけれど、その言葉の中に、わたくしへの絶対的な信頼と愛情がこもっているのが分かる。
わたくしは、辺境伯妃として、そして薬師として、領地の医療の改善に努めた。カイエン様は、そんなわたくしの活動を、全面的に支援してくれた。最初は「冷酷非情の辺境伯」を恐れていた領民たちも、わたくしたちの姿を見るうちに、次第に心を開いてくれるようになった。
ある晴れた日の午後。
わたくしは、新しい薬草の苗を植えようと、温室で作業をしていた。
そこへ、執務を終えたカイエン様がやってきた。
「セレスティン」
「カイエン様、お疲れ様です」
彼はわたくしの隣にしゃがみ込むと、その大きな手で、優しくわたくしの頬を撫でた。
「……幸せか?」
「はい。とても」
わたくしが微笑むと、彼もまた、柔らかな笑みを浮かべた。彼のこんな表情を見られるのは、世界でわたくしだけだ。
「俺もだ。お前という光を見つけてから、俺の世界は色を取り戻した。……愛している、セレスティン。俺だけの、かけがえのない薬師」
「わたくしもです、カイエン様。世界で一番、愛しております」
陽光が降り注ぐ温室の中で、わたくしたちは、再び唇を重ねた。
薬草の甘い香りと、愛する人の温もりに包まれて。
偽りの婚約が終わりを告げたあの夜会の日から、わたくしの本当の人生が始まった。
そして、その隣には、いつだってこの人がいる。
不器用で、独占欲が強くて、でも、誰よりも優しい、わたくしだけの辺境伯様が。
この幸せが、永遠に続きますように。
わたくしは、陽だまりの中で、そっと祈りを捧げた。
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