忌み嫌われる夜の令嬢ですが国家の中枢を担っています

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ライラックの舞闘

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異国連合に訪問した日の翌日の午後。
私とハオルは孤児院隣にある武道館へと訪れていた。
ここは幼い内から自分の身を守る為に、レミゼラルムーン家が管理運営している。
そんな武道館の館長と私は対峙していた。
静かに佇む白い道着に身を包み、黒の帯を巻く館長の目は鋭い。
流石歳を重ねた老武闘家である。
ただ立っているだけのように見えるが、一切の隙がない。

私も黒い道着を身にまとい、ただ立っているだけではなく視線や足さばきで相手を誘う。
素足に木の床が心地良いが、そんなことを一瞬でも思った瞬間、

「はぁ!」

館長の拳が私の胸に狙いを定めて飛んでくる。
だけど私も黙って受けるほど未熟ではない。
館長の伸びてくる腕を掴み、そのまま投げ飛ばそうと試みる。
流れる館長の身体がそのまま、床に叩きつけられると私は思った。
しかし、私の身体は宙を舞っていた。

バタァァァン!

「いたたた……」

背中から思いっきり床に投げ飛ばされた私は、武道館の天井を見上げる。
すると白く光る光魔灯が眩しかった。

「まだまだ未熟じゃの」

「館長が強すぎるのですよ」

横たわる私に声をかけてくる館長。
髪は白く、皺が深いながらもどこか若々しい彼の名はタツ・カズシマ。
東洋の武闘家である彼がこの大陸にやってきて、様々な武勇伝とともにこの街を訪れた。
武闘家としては一流な彼だが……

「にょほほほ……ライラック嬢ちゃんもすっかりと育ってきたのぉ……」

館長は私の胸を見てふにゃっと顔を緩ませる。
どうも女好きなのが玉に瑕ね。

「このスケベ爺!姉様をそんな目で見るな!」

「坊っちゃんは相変わらずじゃのぉ。そう言うのをしすこんというのじゃろう?」

「誰がシスコンだ!てぇい!」

「ほいっと」

ハオルも同じ黒の道着を着ていて、そのまま館長に拳を繰り出したのだけど……
私と同じく綺麗に空を舞った。
なるほど、ああいう風にするのね。
私がしたかったことを綺麗に見せてくれた館長。
流石ね。

「嬢ちゃんも坊っちゃんもまだまだ青いのぉ……それじゃあ子ども相手の稽古でもお願いするわい。ほれ子どもたち!稽古の時間じゃぞ」

「「「わぁい!」」」

館長が館の隅で見学していた子どもたちに向かって言うと、白い道着を着た子どもたちが私たちに殺到してきた。
このときばかりは私に女の子が、ハオルには男の子がやってくる。
どちらも稽古とはいえ身体を密着させるのが恥ずかしい。
そんなお年頃なの。



「はい、みんな。そろそろ休憩よ」

「「「はい!」」」

半刻ほどの女の子との稽古を終えて、一足先に休憩を迎える。
そして男の子たちの方を見てみると、サリーナさんの息子のリアット君も汗を流しながら、拳を振るっていた。
キラキラと輝くような銀髪に幼いながらも整った顔。

「がんばれ!リアット君!」

女の子たちからも応援の声が飛んでいる。
そんな声援に少し照れながらも、リアット君は動きを止めないでいた。
周囲の男の子たちに比べればまだ小さい彼だが、武道を習いたいという熱心な想いからここで学んでいる。
私はその理由を聞いてみたことがあった。

「お父さんの代わりにお母さんをボクが守るんだ」

幼くても男の子なんだと私は微笑んだ。

「……お姉ちゃんも守りたいから」

「うふふ、ありがとう。リアット君」

はぁ……可愛かったなぁ……

「姉様!」

「あ、あら?何かしらハオル?」

「さっきから見てましたが、姉様は小さな男の子が好きなんですか!?」

なんてことを言うのかしら、この子は?

「あんなにうっとりとした表情を浮かべて……ボクは、ボクは許しませんから!」

「はいはい。静かになさいね」

私は興奮する弟の腕を掴み、先ほど館長が見せてくれた通りに背負投げをしてみせる。

ドシィィィン!

「うむ。綺麗に決まったのぉ」

「ありがとうございます」

「きゅぅぅぅ……」

館長からのお褒めの言葉をもらえた私はご満悦でした♪
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