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第23話 勇者の最期
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『魔王様、勇者を発見したとの連絡が入りました!』
「ご苦労!して、勇者は一体どこに居たのだ?」
『それが、サーラ様の生まれ故郷にあります無人の教会の中におりました』
「なんでそのような場所に?」
「多分、そこはわたしがヨシムネ様と初めて出会った場所です」
リィナはゆっくりと、ヨシムネと出会った経緯を教えてくれた。
長谷川はまずサーラの生まれ故郷の国の王宮内にある神聖の間に降り立ったそうだ、そしてそこで王と后の出迎えを受けて皇子でありながら騎士でもあるコンラートを紹介されパーティーの一員に迎え入れたらしい。そして次に、冒険者ギルドの紹介で女拳闘士のミオンと男戦士の***の2人も紹介のまま仲間に入れた。リィナはパーティー内の回復役として教会から依頼を受け、本来マリアと2人で守る筈だった教会でヨシムネと出会い旅を始めたそうだ。
「デウス、これはどういう訳だ?フローディアが長谷川を連れて逃げているんじゃなかったのか!?」
『わたしにも分かりません、もしかしてフローディアはミツクニ様に対抗出来るだけの武器を用意する事が出来ず焦っていたところに、わたしがミツクニ様の元を訪れる事を知って見捨てたのかもしれません』
(あいつも哀れだな、最初は勇者として持て囃されたのに捨て駒にもされずゴミ同然に捨てられてお終いだからな)
「デウス、すまないがあいつの居る教会まで運んでもらう事は出来るか?あいつに屑呼ばわりされた事は今でも気に入らない、だがその原因を作ったのはフローディアとヴェルドだ。あの2人にそれに見合うだけの罰を与えるのに協力してくれるのなら、俺はあいつを許そうと思う」
『誰を連れていきますか?』
「その口ぶりだと、人数に限度が有る様だな。まずは俺とターニャだが後何人くらい大丈夫だ?」
『ターニャ様もご一緒となりますと、お腹の子に響かない様に運ぶ必要があります。それですと申し訳無いのですがあと1人が限界ですね』
「誰か一緒に行きたい奴は居るか?」
「わたしも連れて行ってください!」
リィナが前に出て名乗りをあげる、それに反対する者は居なかった。
『それでは、これより移動を始めますが外の景色が目まぐるしく変わるので気分が悪くなるかもしれません。10秒ほど目を瞑って戴けますか?』
デウスの言葉に従い、俺達3人は目を瞑った。すると、皆が見ていないタイミングを狙っていたのかデウスはそのどさくさに紛れて唇を重ね舌を絡ませてきやがった。ターニャとリィナが目を開けると、デウスを睨みつける俺と舌を出しながら頬を少し赤く染めて照れているデウスを交互に見て(?)と首を傾げる事となる。
リィナが居たという教会は、もはや廃墟同然と化していた。建物は草が生い茂り崩れかけている場所さえ有る。リィナが出て行った後は本当に誰も来なかった様だ、こんな場所で長谷川は隠れていたのか?いや、誰かを待っていたのか?
俺は教会の扉をゆっくりと開ける、すると1番奥の祭壇の前に久しぶりに見る男の姿が有った。
「よお、長谷川。元気にしていたか?」
『・・・・・?』
もはや名ばかりの勇者となった男が力無く俺の方を向く、髪は伸び放題の上にぼさぼさ状態。ヒゲも伸ばしたままでホームレスに近い有様だ。後日、魔王の部下から聞いた話によると勇者と名乗っても誰からも相手にされず残飯を漁ったり店先から食べ物を盗んだりして飢えをしのいでいた事を知った。
「ヨシムネ様・・・・」
『!? リィナ、リィナなのか!?」
長谷川は、俺に寄り添っているリィナの姿を見て悟った様だった。
『そうか、リィナ。おまえは俺よりもその男の方を選んだんだな』
「ごめんなさい・・・けれど、あの時の私は確かにあなたを愛しておりました!」
『俺は今でもお前を愛している、だがそれももう手遅れの様だ。何でこうなってしまったのかな?何が間違っていたのだろう?女神にすら見捨てられた俺は人の価値も持たない存在なのかもしれないな』
「お前は俺という人間を見誤った、それが全てだ。だがな、俺もお前もフローディアとヴェルドにいい様に利用されてきた。あの2人にはそれ相応の報いを与えてやらないとならない、だから俺に手を貸すんだ。そうすれば、俺を屑呼ばわりした事は水に流してやってもいい。こっちにはリィナはもちろんだが魔王のターニャに主神のデウスまでいるんだ!あいつらに目に物見せてやらないか!?」
『ふ、それも面白いかもしれないな』
長谷川はゆっくりと立ち上がった、俺も少しずつ祭壇に近づきあと数歩で長谷川と握手出来る距離まで来た時に急に長谷川は叫んだ!
『俺はこんな惨めな姿になってはいるが神に召喚された勇者だ!勇者の使命は魔王を倒す事、せめてそれだけは果たさせてもらう!!』
そう叫ぶと剣を抜き、ターニャに向かい走り出した!ターニャは逃げようとするが、お腹の子を気にして出遅れてしまう。長いスローモーションを見ているかの様だった、今にも剣がターニャに振り下ろされようとした瞬間にスローモーションは終わり俺は長谷川に向けガングニールを投げていた。
「やめろおおおお!!」
槍は長谷川を背中から貫き・・・再び俺の手元に戻る。長谷川は剣を振り下ろす事無くその場に倒れた。
「ヨシムネ様、あなたはバカです!こんな事、誰も望みもしないのに・・・」
リィナは涙を流しながらヨシムネのした行為を否定する、こいつの残り少ない時間を無駄にしたくない。だから、俺も言いたい事を言わせてもらった。
「ああ、お前は大バカ野朗だ!!こんな事なんかしないでな、俺と一緒にフローディア達に復讐してそれからもう1度俺からリィナを奪い返せば良かったんだよ!?なんで、そんな簡単な事すら忘れちまうんだ!」
長谷川は目を大きく開くと、最後の言葉を言い始める。
『ああ、お前達の言うとおり俺は大バカだ。勇者と煽てられて調子に乗ってそれが結局このザマだ。ならば最期まで滑稽な姿を演じきってみせようと思ったが・・・上手くはいかないものだな』
『光圀、リィナを俺の代わりに幸せにしてやってくれ。あと、フローディアに俺は最期まで勇者らしく魔王に挑み死んでいったと伝えてくれ・・・・」
そう言い残し、長谷川は死んだ。
「デウス、こいつの魂を指定する相手に転生させる事は出来るか?」
『本当はしてはならない禁忌ですが、可能です』
「なら、デウス。長谷川の魂は、俺とリィナの子として転生させてやってくれ。あいつには俺達の子として俺がリィナを幸せにしている姿を間近で見せてやりたいんだ」
『分かりました、その時まで私が彼の魂を預かっておきます』
「そんな訳で悪いがリィナ、俺の子を生んでくれ。そして、長谷川の奴には俺達の子として今度は一緒に幸せになってもらおうぜ」
「はい、ミツクニ様よろこんで」
フローディアとヴェルドに対する殺意をもう抑えられなくなってきた、どんな手を使ってでもあいつらは絶対に殺してやる!
「ご苦労!して、勇者は一体どこに居たのだ?」
『それが、サーラ様の生まれ故郷にあります無人の教会の中におりました』
「なんでそのような場所に?」
「多分、そこはわたしがヨシムネ様と初めて出会った場所です」
リィナはゆっくりと、ヨシムネと出会った経緯を教えてくれた。
長谷川はまずサーラの生まれ故郷の国の王宮内にある神聖の間に降り立ったそうだ、そしてそこで王と后の出迎えを受けて皇子でありながら騎士でもあるコンラートを紹介されパーティーの一員に迎え入れたらしい。そして次に、冒険者ギルドの紹介で女拳闘士のミオンと男戦士の***の2人も紹介のまま仲間に入れた。リィナはパーティー内の回復役として教会から依頼を受け、本来マリアと2人で守る筈だった教会でヨシムネと出会い旅を始めたそうだ。
「デウス、これはどういう訳だ?フローディアが長谷川を連れて逃げているんじゃなかったのか!?」
『わたしにも分かりません、もしかしてフローディアはミツクニ様に対抗出来るだけの武器を用意する事が出来ず焦っていたところに、わたしがミツクニ様の元を訪れる事を知って見捨てたのかもしれません』
(あいつも哀れだな、最初は勇者として持て囃されたのに捨て駒にもされずゴミ同然に捨てられてお終いだからな)
「デウス、すまないがあいつの居る教会まで運んでもらう事は出来るか?あいつに屑呼ばわりされた事は今でも気に入らない、だがその原因を作ったのはフローディアとヴェルドだ。あの2人にそれに見合うだけの罰を与えるのに協力してくれるのなら、俺はあいつを許そうと思う」
『誰を連れていきますか?』
「その口ぶりだと、人数に限度が有る様だな。まずは俺とターニャだが後何人くらい大丈夫だ?」
『ターニャ様もご一緒となりますと、お腹の子に響かない様に運ぶ必要があります。それですと申し訳無いのですがあと1人が限界ですね』
「誰か一緒に行きたい奴は居るか?」
「わたしも連れて行ってください!」
リィナが前に出て名乗りをあげる、それに反対する者は居なかった。
『それでは、これより移動を始めますが外の景色が目まぐるしく変わるので気分が悪くなるかもしれません。10秒ほど目を瞑って戴けますか?』
デウスの言葉に従い、俺達3人は目を瞑った。すると、皆が見ていないタイミングを狙っていたのかデウスはそのどさくさに紛れて唇を重ね舌を絡ませてきやがった。ターニャとリィナが目を開けると、デウスを睨みつける俺と舌を出しながら頬を少し赤く染めて照れているデウスを交互に見て(?)と首を傾げる事となる。
リィナが居たという教会は、もはや廃墟同然と化していた。建物は草が生い茂り崩れかけている場所さえ有る。リィナが出て行った後は本当に誰も来なかった様だ、こんな場所で長谷川は隠れていたのか?いや、誰かを待っていたのか?
俺は教会の扉をゆっくりと開ける、すると1番奥の祭壇の前に久しぶりに見る男の姿が有った。
「よお、長谷川。元気にしていたか?」
『・・・・・?』
もはや名ばかりの勇者となった男が力無く俺の方を向く、髪は伸び放題の上にぼさぼさ状態。ヒゲも伸ばしたままでホームレスに近い有様だ。後日、魔王の部下から聞いた話によると勇者と名乗っても誰からも相手にされず残飯を漁ったり店先から食べ物を盗んだりして飢えをしのいでいた事を知った。
「ヨシムネ様・・・・」
『!? リィナ、リィナなのか!?」
長谷川は、俺に寄り添っているリィナの姿を見て悟った様だった。
『そうか、リィナ。おまえは俺よりもその男の方を選んだんだな』
「ごめんなさい・・・けれど、あの時の私は確かにあなたを愛しておりました!」
『俺は今でもお前を愛している、だがそれももう手遅れの様だ。何でこうなってしまったのかな?何が間違っていたのだろう?女神にすら見捨てられた俺は人の価値も持たない存在なのかもしれないな』
「お前は俺という人間を見誤った、それが全てだ。だがな、俺もお前もフローディアとヴェルドにいい様に利用されてきた。あの2人にはそれ相応の報いを与えてやらないとならない、だから俺に手を貸すんだ。そうすれば、俺を屑呼ばわりした事は水に流してやってもいい。こっちにはリィナはもちろんだが魔王のターニャに主神のデウスまでいるんだ!あいつらに目に物見せてやらないか!?」
『ふ、それも面白いかもしれないな』
長谷川はゆっくりと立ち上がった、俺も少しずつ祭壇に近づきあと数歩で長谷川と握手出来る距離まで来た時に急に長谷川は叫んだ!
『俺はこんな惨めな姿になってはいるが神に召喚された勇者だ!勇者の使命は魔王を倒す事、せめてそれだけは果たさせてもらう!!』
そう叫ぶと剣を抜き、ターニャに向かい走り出した!ターニャは逃げようとするが、お腹の子を気にして出遅れてしまう。長いスローモーションを見ているかの様だった、今にも剣がターニャに振り下ろされようとした瞬間にスローモーションは終わり俺は長谷川に向けガングニールを投げていた。
「やめろおおおお!!」
槍は長谷川を背中から貫き・・・再び俺の手元に戻る。長谷川は剣を振り下ろす事無くその場に倒れた。
「ヨシムネ様、あなたはバカです!こんな事、誰も望みもしないのに・・・」
リィナは涙を流しながらヨシムネのした行為を否定する、こいつの残り少ない時間を無駄にしたくない。だから、俺も言いたい事を言わせてもらった。
「ああ、お前は大バカ野朗だ!!こんな事なんかしないでな、俺と一緒にフローディア達に復讐してそれからもう1度俺からリィナを奪い返せば良かったんだよ!?なんで、そんな簡単な事すら忘れちまうんだ!」
長谷川は目を大きく開くと、最後の言葉を言い始める。
『ああ、お前達の言うとおり俺は大バカだ。勇者と煽てられて調子に乗ってそれが結局このザマだ。ならば最期まで滑稽な姿を演じきってみせようと思ったが・・・上手くはいかないものだな』
『光圀、リィナを俺の代わりに幸せにしてやってくれ。あと、フローディアに俺は最期まで勇者らしく魔王に挑み死んでいったと伝えてくれ・・・・」
そう言い残し、長谷川は死んだ。
「デウス、こいつの魂を指定する相手に転生させる事は出来るか?」
『本当はしてはならない禁忌ですが、可能です』
「なら、デウス。長谷川の魂は、俺とリィナの子として転生させてやってくれ。あいつには俺達の子として俺がリィナを幸せにしている姿を間近で見せてやりたいんだ」
『分かりました、その時まで私が彼の魂を預かっておきます』
「そんな訳で悪いがリィナ、俺の子を生んでくれ。そして、長谷川の奴には俺達の子として今度は一緒に幸せになってもらおうぜ」
「はい、ミツクニ様よろこんで」
フローディアとヴェルドに対する殺意をもう抑えられなくなってきた、どんな手を使ってでもあいつらは絶対に殺してやる!
応援ありがとうございます!
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